「判決とテロル」資料1:亀井志乃「準備書面」(20年3月5日付)
〔私は現在、「この世の眺め――亀井秀雄のアングル―」というブログに、「判決とテロル」を連載中だが、その資料として、亀井志乃の「準備書面」(3月5日付)、及び「準備書面(Ⅱ)―1」「準備書面(Ⅱ)―2」「準備書面(Ⅱ)―3」の、4本の文章を紹介することにした。これからも繰り返しその文章に言及し、時には参照をしていただくことになるかもしれないからである。これを参照していただければ、私の引用が決して恣意的でないことも分かっていただけるだろう。
亀井志乃は平成19年12月21日に「訴状」を札幌地方裁判所に提出した。それに対して、平成20年2月13日の第Ⅰ回口頭弁論で、被告の代理人・太田三夫弁護士から、「原告の訴状は、事実と評価とを別けていないので、反論を書きにくい」という意味の注文がつき、裁判長は亀井志乃に、「被害の事実」と「違法性の指摘」とに別けて書き直すことを指示した。亀井志乃はそれを受けて、「訴状」を書き直し、平成20年3月5日、「準備書面」を提出した。
昨夜この紹介を始めた時、私は「訴状」も紹介するつもりだった。だが、内容的には3月5日付「準備書面」とほとんど変わらない。読んで下さる人には、かえって煩雑かもしれない。そう考えて「訴状」のほうは省くことにした。
3月5日付「準備書面」のほうを選んだもう一つの理由は、被告代理人・太田弁護士の「準備書面(2)」(4月9日付)の構成が、3月5日付「準備書面」の各項目に対する反論の形を取っていたからである。亀井志乃の「準備書面(Ⅱ)―1」(5月14日付)は、それに対する再反論だった。
そんなわけで、もし亀井志乃の「準備書面」(3月5日付)と「準備書面(Ⅱ)―1」とを合わせて読んでいただけるならば、被告代理人弁護士・太田三夫署名の「準備書面(2)」の実態もよく分かり、亀井志乃の認識の深まりも見えてくると思う。
裁判は不思議な効果をもたらす。議論が並行しているだけのようでありながら、双方の実相が如実に現れてくるからである。亀井志乃の「準備書面(Ⅱ)―2」と「同(Ⅱ)-3」は、寺嶋弘道被告の「陳述書」と、平原一良副館長の「陳述書」に対する反論であるが、今度読み直してみて、道立文学館に巣くっている連中の正体だけでなく、人格権侵害の根底に潜んでいるものがありありと見えてきた。それと同質のものが法廷や判決のなかにも作用しているのである。
亀井志乃の3月5日付「準備書面」の最初の事例は、それだけを単独で取り出してみれば、「こういう嫌みを言うやつは、どこにもいるからな」という程度のことに思われるかもしれない。だが、その嫌みが執拗な嫌がらせにまでエスカレートし、明らかに業務妨害の様相を呈するに至って、「ああ、あれが始まりだったのだ」と過去に遡って、初発の事例が特定される。それとともに、その構造と本質が見えてくる。その意味で、亀井志乃の認識は「前進的―遡及的―前進的」な発見のダイナミックな構造を備えていた、と言えるだろう。
今回紹介する4本の文章はいずれも長文であるが、以上のような関心で読んでいただければありがたい。2009年4月20日〕
事件番号 平成19年(ワ)第3595号
損害賠償等請求事件
原告 亀 井 志 乃
被告 寺 嶋 弘 道
準 備 書 面
平成20年3月5日
札幌地方裁判所民事第1部3係 御中
原告 亀井志乃 印
本書面では、平成20年2月13日の第1回口頭弁論において、裁判長からご指示をいただきましたとおり、第1、原告が被告から受けた被害について、被害を受けた年月日の順序に従い、(a)被害の事実 (b)違法性 に別けて述べます。
その後、第2、原告が被告に謝罪文を請求する理由を述べます。
第1、原告が被告から受けた被害
(1)平成18年4月7日(金曜日)
(a)被害の事実
原告は被告の前の勤務先が道立近代美術館だったことを知り、「近々道立近代美術館へ行って、木田金次郎の作品を見せてもらい、学芸員の話を聞かせてもらいたいと思っているところです」と予定を語った。すると被告は突然、「いきなり訪ねていったって、美術館の学芸員は忙しいんだ。ただ話をだらだらしたって、相手になってくれる人間はいないよ。そんな時間はないんだ」と言いつのった。
原告は平成18年度の企画展「人生を奏でる二組のデュオ」(期間・平成19年2月17日~3月18日)の主担当であり、木田金次郎は企画展で取り上げる主要な作家・画家の一人だった。それゆえ原告は、3月18日から道立近代美術館のK学芸員としばしばコンタクトを取り、4月5日には、ほぼ面会する日時も決まっていた。
また原告は、木田金次郎の展示に関する大まかな構想を、すでに「2006年度展示原案(コンセプト稿)人生を奏でる二組のデュオ」(2005年6月16日 前学芸課長に提出 甲25号証)という文書にまとめてあり、その文書を被告に、「実は、この内容に関することでK学芸員にお話を伺うことになっています。このように、構想もすでに立っています」と見せようとした。ところが被告は手にも取らずに、「いいじゃん、いいじゃん、やれば。やんなさい」と嘲笑的な口調で言い、無関心な態度を示した。
なお、念のために付記すれば、以上のことは、4月4日(火)に被告が駐在道職員として道立文学館に着任した、その4日目の事柄である。
(b)違法性
イ、北海道教育委員会の職員である被告は、財団の嘱託として働く一市民の原告が業務遂行のため道立近代美術館を訪れる行動を、ただ道立近代美術館の学芸員を煩わせ、迷惑をかけるだけの行動であるかのように貶める言い方で、原告の行動予定を評し、原告の意欲を阻害した。これは「地方公務員法」第30条に反し、かつ北海道教育委員会が駐在道職員に指示した業務事項に反する点で「地方公務員法」第32条及び「北海道職員の公務員倫理に関する条例」第3条、第4条、第7条に反する違法行為である。
ロ、北海道教育委員会の職員である被告は、財団の嘱託として働く一市民の原告の構想に対して、説明を聞こうともせず、関心を持つに値しないもののごとく、侮蔑的な態度であしらった。これは前項と合わせて、「民法」第710条に該当する不法行為である。
(2)平成18年5月2日(火曜日)
(a)被害の事実(甲13号証を参照のこと)
原告は平成17年度、平原一良学芸副館長(当時、のち副館長)の依頼で、北海道の文学碑に関するデータベースを作った。平成18年4月7日、(1)の事柄があった直前、原告は被告に文学碑データ検索機を見せたが、その時被告は「ケータイ(携帯端末機)で一般の人たちに写真を撮ってもらい、いい写真をえらんで、検索機にのせますからどんどん募集して下さいと言って、画像を集めればよい」、「そうすれば、館の人間がわざわざ写真を撮りに行かなくとも、画像は向こうから集まってくる」というアイデアを口にした。
それから約1ヶ月後の5月2日(火曜日)、原告は被告から「文学碑の写真のことについて話をしとかなきゃいけない」と声をかけられ、館長室で、学芸副館長を交え、三人で話し合った。被告が持ち出した話は「文学碑検索機のデータベースの、画像がないものについて写真を集めたい。原告が企画書を書き、中心となって、その仕事を進めて欲しい」という内容で、写真の集め方は明らかにケータイ・フォトコンテストを前提にしていた。
しかし、そのデータベースは市販のパソコンソフトを利用したものではなく、業者に発注してプログラミングしてもらったものであり、使用画像の大きさ・画素数や、データ1件の画像数を1枚とする等のフォーマットが、あらかじめ決まっていた。
フォトコンテストを行なうとすれば、まだ画像のない文学碑のフォトだけでなく、むしろ人気の高い文学碑のフォトがたくさん集まる可能性が高い。また、携帯端末機に付随する写真機の性能によっては、画像の画素数もまちまちとなる。それらの応募画像を検索機に載せることになれば、再び業者にフォーマットを作り変えてもらわなければならず、少なからぬ経費が必要となる。また、コンテスト自体、おそらく文学館にとって大きなイベントとなり、予算をつけなければならない。(以上、この段落の内容については甲14号証を参照のこと)
原告には、果たして嘱託職員の自分がそういう企画の中心的なポジションにつくことが出来る立場なのかどうか、という疑問があり、念のため予算問題やスケジュール問題を確認しておこうと、「私はそういうことが出来る立場では…」と言いかけた。
ところが、その途端、被告が原告の言葉を遮り、「そういう立場って、いったいどういうことだ。最後までちゃんと言ってみなさい!」 と問い詰めはじめた。原告は、自分の立場は嘱託職員であることを説明した。だが被告は、「職員ではないとはどういうことか。立派な職員ではないか。財団の一員ではないか」と主張をした。
原告は学芸副館長に、原告の立場を被告に説明してくれるように頼んだ。学芸副館長は「前年度までは確かにそうだったが、この春からは、亀井さんは館のスタッフとなった。そして我々は仕事の上で明確に《道》だ《財団》だという線引きはせず、みんなで一緒にやろう、一緒に負担をしようということになった」と言った。しかし原告は、前年度の3月に、安藤副館長から、従来通りの嘱託員に関する規約を示され、「亀井さんは、実績さえあげてくれればいい人だから」と言われ、それ以後誰からも、原告の身分が変わったと伝えられたことはなかった。学芸副館長がいう「スタッフ」という役職名は財団法人北海道文学館の規程のどこにも見られない。その意味で、学芸副館長の説明は嘱託職員の実態を適切に説明したものとは言えなかった。
原告は嘱託職員の立場を、「一定の専門的な能力を評価され、時間契約によって文学館の業務を手伝い、あるいは文学館の業務の一部を請け負って、求められた成果を挙げる」立場と理解していた。そのため、改めてその立場を確認しながら、「原告の立場で(前年度から文学碑データベースの作成を請け負ってきたものとして)意見を言えばいいのか」と聞いた。だが、学芸副館長と被告は、「意見」ではなく、「アイデア」を出してほしいと言い、「アイデア」だけでなく「プラン」も立ててほしいと言った。しかし結局、副館長と被告の主張は、概念規定も曖昧なまま「テーブルプラン」「アイデアのコンテンツ」など言葉の言い換えに終始し、何をどこまで原告にしてもらいたいのか曖昧なまま、話し合いは終わった。
(b)違法性
イ、北海道教育委員会の駐在道職員である被告が思いついたケータイ・フォトコンテストは、平成18年度の過密スケジュールに追われている財団法人北海道文学館の業務課と学芸班の両方に大きな負担を強いる企画である。駐在道職員の被告は、年度途中に、財団法人北海道文学館の嘱託である原告に、原告が業務を担当することを前提として、企画作りを強圧的な態度で要求した。これは、財団に対しては、北海道教育委員会が駐在道職員に指示した業務事項を逸脱して、「地方公務員法」第32条に反して行われた干渉行為であり、他の業務を抱えた原告に対しては業務強制の人権侵害の違法行為である。
ロ、財団法人北海道文学館の「平成18年度 学芸業務の事務分掌」(平成18年4月1日現在)によれば、特別企画展「石川啄木―貧苦と挫折を越えて」(期間・平成18年7月22日~8月27日 以下、「啄木展」と略)の主担当は鈴木浩社会教育主事であり、副担当は原告であった。被告はその「事務分掌」を無視して「啄木展」に介入し、原告を疎外し、他方、自分が思いついたケータイ・フォトコンテストの企画作り(原告の実施を前提とする)を原告に押しつけようとした。これは前項で指摘した規律違反であるだけでなく、原告に対しては業務の不当なすり替えであると共に、「啄木展」副担当という責任を原告に果たさせまいとした点で、「刑法」第234条に該当する、極めて悪質な業務妨害の違法行為である。
ハ、原告の財団法人北海道文学館における立場は、「一定の専門的な能力を評価され、時間契約によって文学館の業務を手伝い、あるいは文学館の業務の一部を請け負って、求められた成果を挙げる」嘱託の立場である。被告はそのことを理解しようとせず、嘱託職員では負いきれない、あるいは嘱託職員が負ってはならない責任が伴う業務を押しつけようとした。これは北海道教育委員会の職員である被告が財団と原告との間に結ばれた労働契約を無視した点で、「地方公務員法」第29条に問われるべき違法な越権行為である。
二、被告は、原告が嘱託職員としての立場と、平成17年度に依頼されて「文学碑データベース」を作成した経験に基づいて意見を述べようとしたところ、その発言をいきなりさえぎって、原告に「財団の一員」としての自覚が欠けているかのごとく詰問した。これは嘱託職員には正職員とは異なる立場と権利があることを無視し、意見表明の自由を封じ、原告には職員としての欠格性があるかのごとく誹謗中傷した点で、憲法が保障する基本的人権を侵害した違法行為であり、また「民法」第710条に該当する不法行為である。
(3)平成18年5月10日(水曜日)
(a)被害の事実(甲4号証を参照のこと)
平成18年5月9日(火曜日)の朝の打合せ会で、原告は、5月13日に小樽の啄木忌で行なわれる講演会に出席するため午後から早退したい意向を述べ、安藤孝次郎副館長(当時)、平原一良学芸副館長(当時)を含めた出席職員全員の了解を受けた。この日(9日)被告は休暇を取って欠席だった。
ところが翌10日の朝、被告は、事務室において、年休を持たない嘱託職員の原告に対して、「あなたは〈年休〉を何時間取ると思っているのか」という内容の質問を始めた。しかし原告は年度当初、安藤副館長から嘱託職員には年休がない旨を告げられていた。それゆえ原告は、被告に、自分は「年休」を取るわけではないと説明したが、被告はあくまでも原告の休みは「年休」であると主張した。そこで原告は安藤副館長に相談して、原告には「年休」がないことを説明してもらった(甲26号証)。
ところが同日の午後4時半頃、事務室において、被告は再び原告に近づき、「それでは(年休がないなら)何で休むかについては僕が聞いておかなくてはならないね」と質問した。原告が、休みの場合は通常「私事」と書くだけだ、と説明したところ、「それじゃ、何で休むかは聞かない。でも、業務に差し支えないかどうかは確認しなければならない」と言った。しかし、通常は休暇届けを台帳に記載する以外に、わざわざ理由その他の申告を求められることはない。原告がその点を指摘すると、被告は5月2日の「原告は嘱託ではない、立派な財団職員だ」という主張を蒸し返し、原告の退勤時間を30分もオーバーする5時半頃まで足止めをした。
(b)違法性
イ、原告は年休を持たない嘱託職員であるが、財団法人北海道文学館と契約した勤務時間以外の時間における行動については、財団からは制約を受けず、自由に使ってよい権利を持っている。北海道教育委員会の職員である被告が原告の権利を理解せず、原告の勤務時間外のプライバシーに干渉するのは、憲法が保障する基本的人権を侵害する違法行為である。
ロ、原告の13日の午後に早退したい希望は、朝の打合せ会で了解された。これは、文学館の業務に差し支えないと判断されたからである。それゆえ被告は、原告の早退が被告自身の業務に差し支える場合を除き、原告の早退を云々する必要も権利も持たないはずである。だが被告は、原告の退勤時間が迫った時刻にその問題を蒸し返し、1時間以上も問い詰めて、退勤時間外の行動を拘束した。これは被告が自分の関心を業務論一般にすり替えながら、原告のプライバシーに対する干渉を止めなかった点で、基本的人権侵害の違法行為であると共に、「地方公務員法」第29条に該当する不法行為である。
ハ、北海道教育委員会の職員である被告が、財団の嘱託として働く一市民の原告に対して、執拗に「原告は嘱託ではない、立派な財団職員だ」という考えを強制した。嘱託職員の立場と権利を無視し、フルタイムの正職員とおなじ労働と責任を強制したことは、憲法が保障する基本的人権を無視し、財団と被告が結んだ契約外の労働の強制した点で、「民法」第709条に該当する不法行為である。
二、原告は嘱託職員であり、労災に入っていない。それゆえ、平成17年度までは、安藤副館長および当時の業務課長から「亀井さんは5時になったら退勤して下さい」という扱いを受けてきた。
被告は、原告に対してそのような配慮をすることなく、退勤時間以後も原告を拘束した。これは北海道教育委員会の職員である被告が、原告と財団の間に結ばれた契約を無視した点で、「地方公務員法」第29条に該当する違法な越権行為である。また、原告の自由を拘束したことは、憲法が保障する基本的人権の侵害であり、「民法」710条に該当する不法行為である。
(4)平成18年5月12日(金曜日)
(a)被害の事実(甲27号証・甲28号証を参照のこと)
この日、閲覧室で勤務していた原告は、内線電話で、被告から「今年担当の展覧会について打合せをしたい」と呼ばれ、事務室に向かった。打合せには、A学芸員(駐在道職員のうちの1人)が同席した。なお、原告は企画展「人生を奏でる二組のデュオ」の主担当であり、A学芸員は副担当だった。
それゆえ、原告は企画展に関する打合せと思っていたが、実際はそうではなく、被告より一方的な形で展覧会事業の予算配分の変更を通告された。その理由は、概略すれば、次の2点だった。
① 現在、「写・文交響―写真家・綿引幸造の世界から」展(期間・平成18年4月29日~6月4日 以下、「綿引展」と略)、「デルス・ウザーラ―絵物語展」(期間・平成18年6月10日~7月9日)、「啄木展」(期間・平成18年7月22日~8月27日)についてはすでに予算が執行されているが、「啄木展」のところで予算を大幅に超過している。
② 指定管理者制度の下では、予算は4年間の間に使い回ししてよいことになっていたが、やはり単年度計算でなくてはならないということに一昨日(5月10日)に決まった。そのため、特別企画展「啄木展」と「池澤夏樹のトポス」展(期間・平成18年10月14日~11月26日 以下、「池澤展」と略)とであとどれだけ予算が使えるかを出すために、急遽、他の展示の担当者たちに、支出予定の内訳を算定してもらわなければならない。
被告はそういう事情説明をした上で、「支出予定の内訳は、来週までに作成し、文学館のサーバー内の所定の場所にアップしておくように」と原告らに命令した(甲29号証)。
だが、平成18年4月1日の日付を持つ「平成18年度 学芸業務の事務分掌」に明記されている如く、特別企画展「啄木展」の主担当はS社会教育主事(駐在道職員のうちの1人)であり、原告が副担当だった。ところが被告は、原告に何のことわりもなく、主担当のS社会教育主事と準備に取りかかり、日本近代文学館からの展示資料の借用などの主要な業務を、原告を全く無視する形で進めた。その結果、「啄木展」の当初予算の3,712,000円を大幅に超過してしまった(甲28号証)。
原告は「啄木展」の業務からほとんど疎外されており、予算超過についても、この時まで一切知らされていなかった。だが被告は、予算超過の事情を説明することはなかった。被告はまた「池澤展」の主担当であり、その展示事業費として3,612,000円の予算がついていたが、なぜ「啄木展」の予算超過を「池澤展」の予算で調整しないのか、その点の説明もなかった。
そして被告は、「〈企画展〉の財布は一つしかない。だから、原告が主担当の『人生を奏でる二組のデュオ』展の予算1,516,000円は、他の2つの展示『書房の余滴―中山周三旧蔵資料から』(期間・平成18年12月9日~24日 以下、「中山展」と略)と『聖と性、そして生―栗田和久写真コレクションから』(期間・平成19年1月13日~1月27日 以下、「栗田展」と略)とでシェアしなければならない」と主張した。
(b)違法性
イ、被告は嘱託という契約職員である原告の重要な業務の一つを奪った。これは北海道教育委員会の公務員(被告)が、民間の財団法人北海道文学館に嘱託で働いている市民(原告)に対して行った、「刑法」第234条に該当する業務妨害であると共に、原告と財団との間に結ばれた契約を侵害する「地方公務員法」第29条、第32条に該当する違法な越権行為である。
ロ、北海道教育委員会の職員である被告は、4月11日、自分が副担当の「綿引幸造」展で、ポスター作成に失敗して、ポスター300枚の作り直しをし(甲30号証)、啄木展では5月12日の段階ですでに当初予算を大幅に超える支出を行うなど、「地方公務員法」第33条に違反し、「地方公務員法」第28条または第29条に問われるべき失敗を重ねた。
もし年間の展覧会事業に割り当てられた予算の再配分が必要ならば、財団職員の副館長あるいは業務課長からその必要性と理由の説明がなされるべきである。ところが被告は、北海道教育委員会が駐在道職員に指示した業務事項を逸脱し、自らが再配分の権利を持っているかのごとき言い方で、原告の企画展に割り当てられ予算の支出に干渉した。これは「北海道職員の公務員倫理に関する条例」第3条~第7条に違反する行為である。
また、被告は敢えて倫理規程の違反を犯してでも原告の予算の一部を流用して自己の失敗を隠蔽し、自分の責任が問われることを回避しようとした。これは原告に対してなされた、「刑法」第233条、234条に該当する、極めて悪質な業務妨害の違法行為である。
その結果原告は当初予算を切り詰め、展示構想を縮小するという不当な実害を蒙った。
(5)平成18年7月11日(火曜日)・平成18年9月1日(金曜日)・平成18年9月8日(金曜日)
(a)被害の事実
原告が特別企画展の「啄木展」にかかわることができたのは、主担当のS社会教育主事の依頼で、7月11日(火曜日)に、特別企画展全体の中では付随的な位置づけでしかない資料を僅かに1点のみ借用するため、釧路まで日帰りで往復したことだけだった。
また、原告は、その資料の返却のため、9月1日(金曜日)に再び釧路に赴いた。そこで原告は、その資料の貸与者だった釧路啄木研究学会事務局長・K氏に招かれ、氏が港文館(元釧路新聞社屋)で行っていた石川啄木に関するレクチャーに参加させてもらった。これはエキストラの勉強チャンスであり、財団法人北海道文学館の考え方では、出張先の研究状況等に関する情報を「復命書」に書いておくことが望ましいとされていた。そこで原告は、その考え方に従って「復命書」を作成し、業務課に提出した。
だが被告は、出張命令書(甲12号証の2)に書かれた「用務」に関する報告以外は書くべきではないと、文学館業務の実態を無視した形式論理を原告に押しつけて、平成18年9月8日(金曜日)、原告に書き直しを命じた(甲11号証・甲12号証の1)。
同様な書き直し命令は、同じく平成18年9月8日、(6)で言及するニセコ出張の「復命書」に関しても行われた。
(b)違法性
イ、「復命書」は業務課に提出すべき書類であり、原告は財団の書式と財団の慣例に従って書き、業務課に受理された。北海道教育委員会の駐在職員であり、学芸班に属する被告が、財団の業務課において受理された文書をキャンセルさせ、原告に書き直しを命ずるのは、「北海道職員の公務員倫理に関する条例」第3条~第5条に反する、不当な越権行為である。また、財団の業務課と原告に対する業務妨害の違法行為である。
ロ、被告が原告を、「復命書」の書き方を知らない無知な人間扱いをしたことは、原告の人格と能力を貶め、名誉を毀損したことにより、「民法」第710条に該当する不法行為である。
(6)平成18年8月29日(火曜日)
(a)被害の事実(甲31号証を参照のこと)
この日、原告は自分が主担当として責任を持つ企画展「人生を奏でる二組のデュオ」に関して、朝の打合せ会で、翌8月30日にニセコの有島記念館に出張し、展覧会の勉強のため展示品を見ておきたいと言い、出席職員の了解を得た。
ところが打合せ会が終わるやいなや、被告は自席から、「そのことは平原さんは知ってるの」と原告に質問した。その日、平原副館長(安藤副館長の退職後、学芸副館長から昇任)は急な怪我で、たまたま欠勤していた。原告が「平原さんは知りません」と答えると、被告は「平原さんが知らなければ、誰があなたに対して、そういう動きをしていいと承認するの」と問い詰め始めた。
しかし、財団法人北海道文学館においては、通常、展覧会の主担当が高額の出張旅費を要さない日帰り程度の出張をする場合は、朝の打合せ会で事前にその旨を告げ、出席者が特に文学館業務に差し支えないと考え、了解するならば、それで手続きが済んだことになっていた。この日以前、他の職員もそうしてきた。それゆえ、出張の予定を告げた職員が、他の職員から「そのことについては事前に誰が知っているのか」と問われること自体、きわめて異例のことだった。原告が知っている限りでは、かつてないことであった。
被告はさらに、原告に、「平原さんが知らなければ、誰があなたに対して、そういう動きをしていいと承認するの」と詰問した。すると、近くの席にいた川崎信雄業務課長が、「それは主幹(被告の駐在道職員としての肩書)です」と答えた。すると被告は一瞬、虚を突かれたように黙り込んでしまった。だが、次には、原告に対して、かさにかかって「そういう動きのことは、前もって私に言うべきだ」、「私が学芸班内における動きを知らないというのはおかしい」と言いつのった。そして原告が、では、どういう手続きをとったらいいのかと尋ねてもそれには答えず、「手続きがどうのこうのという問題じゃない」、「組織で働く人間として、そもそもなっていない」、「スタンドプレーと言われないようにしなさい」と執拗に叱責した。
だが、原告がさらに「では、今回の出張に、私はこれから一体どういう手続きをとったら行けるのか」と質問を続けると、被告は結局、「行ってはいけないとは言っていない。行っていいんだ」と怒鳴った。
(b)違法性
イ、これは被告が原告を誹謗中傷するための無法な言いがかりである。なぜなら、それは、被告が近距離出張の手続きに関して、朝の打合せ会の慣例以外にどういう手続きがあるのか全く知らず、原告の質問に答えられなかったことで明らかだからである。
それにもかかわらず、被告は、一定の手続きが決まっているかのごとく言い立てて、原告を詰問し、川崎業務課長の言葉を口実に、俄かに勢いづいて、自分が副館長に次ぐ管理職であるかのように、自分の立場を強調しながら、原告を責め立て、誹謗中傷の言葉を浴びせかけた。これは北海道教育委員会の公務員が、自らを財団の管理職であるかのごとく装って、財団の嘱託である市民の名誉と人格を毀損した、人格権侵害の違法行為であり、「地方公務員法」第28条または第29条に問われるべき違法行為であると共に、「地方公務員法」第38条、及び「北海道職員の公務員倫理に関する条例」第3条~第5条に反する違法行為である。
ロ、被告は、「人生を奏でる二組のデュオ」展の主担当である原告の行動を、誰の承認も得ない身勝手な行動であるかのような言い方で牽制した。これは「刑法」第234条に問われるべき、原告に対する業務妨害の違法行為である。
ハ、被告は、もし原告の行為に疑問点があるならば、朝の打合せ会の中でそれを指摘し、他の職員の意見も聞くべきであったが、それをせずに、打合せ会が終わった直後、他の職員にも聞えよがしに、原告に落ち度があったかのような言い方をした。これは周囲の人間に原告の人格と能力に関する信用を失墜させたことにより、「刑法」第233条に問われるべき、名誉毀損の違法行為である。
(7)平成18年9月13日(水曜日)
(a)被害の事実(甲6号証を参照のこと)
原告は9月12日(火曜日)、自分が主担当の企画展「人生を奏でる二組のデュオ」の準備のための出張予定について、職員に周知しておいてもらうため、事務室での朝の打合せ会で「これからの動き(資料提供協力先)9月後半~12月前半」(甲5号証)という文書を配布し、外勤・出張の可能性がある所とその時期について説明をした。その席では、誰からも質問や異論は出なかった。
ところが翌13日の昼12時頃、被告は二階の事務室に通ずる階段の上で原告をつかまえて、「昨日の出張の件については、業務課との方はもう話がついているの?」と聞いてきた。原告が「いえ、昨日、初めてお話ししたことですから」と答えると、被告は「そういう問題ではない。打合せ会は、すでに決まったことを報告するところだから、こうしたことを話すところではない」と詰問を始め、原告が「朝の打合せ会はそういう性格のものと決まったのですか」と質問すると、被告は「そうなんだ」と答えた。そして「どのような出張予定になっているのか、あらかじめペーパーをこっちに提出しなさい。原告がどう動くかについては、自分と業務課長が協議して決めることだ」と言った。
道立文学館は、平成17年度まではほぼ毎月1回、学芸課の課内打合せ会議を開いたが、平成18年度に入って以来、そのような会議が持たれたこともなく、会議が持たれる予定も聞いたことがない。原告はやむを得ず朝の打合せ会で行動予定を告げることにしてきた。原告は被告の主張に納得できなかったので、同日午後1時頃、平原副館長に出会った時、展覧会の主担当者の動きは学芸主幹と業務課長が決めることなのかと尋ねてみた。すると副館長は、「そのようなことはない。どこへ行くかは原告が(出張予定の)先方と相談して決めることで、被告はそれを聴き、『こういうことで学芸の人間が動くからよろしく』と業務課に伝えるだけだ」と答え、「この件については、被告によく話をしておくから」と言った。
さらにこの日の午後3時頃、原告は念のために、朝の打合せ会の性格について、いつも司会をつとめるS社会教育主事に確かめてみた。主事の返事は、「どんなことを言っていいとかいけないとか、何も決まりや申し合わせはありません」ということだった。
(b)違法性
イ、被告は、もし原告の行為に疑問点があるならば、朝の打合せ会の中でそれを指摘すべきであったが、それをせずに、不特定多数の外来者が上り下りする階段の踊り場で、原告の行動を咎める詰問を行った。これは原告が業務のルールを知らない無知な人間であるかのように印象づけて、能力と人格の信用を失わせ、名誉を毀損したことにより、「民法」第710条及び「刑法」第233条に問われるべき、人格権侵害の違法行為である。
ロ、文学館の展覧会事業は主担当が中心となり、副担当と相談しながら主体的に準備を進める。だが被告はこのルールを無視し、被告自身と業務課長に原告の行動の決定権があるかのように偽って、原告の行動に制約を加えようとした。これは虚偽の理由づけによって、原告の業務を妨害した、「刑法」第233条に問われるべき、悪質な違法行為である。
ハ、被告は朝の打合せ会の性格を偽って、原告が朝の打合せ会の性格について無知なためにルール違反を犯したかのように咎め立てた。これは原告の名誉を毀損し、人格を貶めたことにより、「民法」第710条に問われるべき、人格権侵害の違法行為である。
(8)平成18年9月26日(火曜日)
(a)被害の事実(甲32号証の1を参照のこと)
原告は事務室における朝の打合せ会で、「出張予定(亀井)」(甲32号証の2)と題した予定表を配布し、「人生を奏でる二組のデュオ」展の準備に関係する今後の出張予定とおおよその足取りを説明しようとした。すると、被告がそれを遮って、「あ、そのことについては、このあと打合せ会をやるから」と言ったため、朝の打合せ会の直後、原告と被告と川崎業務課長の3人で、事務室の来客ソファーの所で話し合った。(この日の朝の打合せ会は出席者が少なく、学芸班の原告とO司書と被告、及び業務課の川崎課長のみであった)。
原告が「出張予定(亀井)」の説明を終えると、被告は「それじゃあ、あとで、自分の展覧会についてどのくらいの支出を考えているか、ちょっとさ、まとめて出して」と言った。原告は、念のために、あらかじめ「展覧会支出予定」(甲32号証の3)という文書を作って来ていたので、「それでは、今、一応そのことについて作ったものを手元に持っているので、コピーしてお渡ししますね」と言い、事務室内のコピー機の方に立っていった。
すると、被告が突然、「それは、打合せの後でしょう!」と声を荒げた。原告はその意味が分からず、「どこと打合せした後なんですか?」と訊いた。被告は「相手側とどんな話になるか、決めてからでしょう!」と、更に語気を強めた。原告は、「じゃ、これはまだいいんですか?」と、コピーをやめようとした。ところが被告は、「よくないよ、いいんでしょう!」と怒鳴った。原告は、被告が一体何を言いたいのか、戸惑っていると、被告は「だから、相手先と打合せしてからって言ったら、行かなきゃならないでしょう! だから、今コピーしていいんだよ!」と、更に声を強めて、辻褄の合わないことを言った。
その後、原告がコピーを渡すと、被告はやや落ち着きを取り戻し、原告が主担当の企画展について、「この展覧会には、予算はあまりついていないんだよね」、「他の展覧会との間で、金額を調整しないとならない」、「本州へ行く出張旅費なんて、全然考えられていなかったしね」と、原告の予算を削り、原告の出張を制限する意味の発言を続けた。これらの点については、川崎業務課長が「まあ、この範囲内(150万円以内)で収まるなら、これでいいでしょう」と言い、打合せは終了した。
(b)違法性
イ、被告は、自分のほうから打合せ会を申し出ながら、原告に対して一方的に矛盾した指示を次々と出し、原告が対応に戸惑っていると、あたかも原告が呑み込みの悪い人間であるかのように、苛立った態度で怒鳴りつけた。これは原告の能力を貶め、名誉を毀損した、「民法」第710条に該当する、人格権侵害の違法行為である。
ロ、被告は、財団の嘱託である原告が主担当の企画展に割り当てられた予算の執行に容喙した。これは被告が、北海道教育委員会から駐在道職員に指示された業務事項を逸脱して原告の権限を侵すことであり、「北海道職員の公務員倫理に関する条例」第3条~第7条に反し、「地方公務員法」第29条に問われるべき越権行為であり、業務妨害の違法行為である。
ハ、被告は、財団の嘱託である原告が自分の企画展に割り当てられた予算の範囲内で本州へ出張することに干渉し、なぜ本州への出張が必要かを確かめることなく、出張を制限しようとした。これは被告が、北海道教育委員会から駐在道職員に指示された業務事項を逸脱して原告の業務に干渉したことにより、「北海道職員の公務員倫理に関する条例」第3条~第7条に反し、「地方公務員法」第29条に問われるべき業務妨害の違法行為である。
(9)平成18年10月3日(火曜日)
(a)被害の事実(甲8号証を参照のこと)
原告はこの日の午前10時頃より、事務室における朝の打合せ会において、「〈人生を奏でる二組のデュオ展〉・出張予定(10月)」(甲7号証)と題した文書を配布し、「9月12日にお話しをした出張予定がだいたい固まったので、大まかに説明しておきたい」という意味の発言をした。誰も何も言わなかったので説明し、締めくくりに、「ほぼ、このようなところです。よろしいでしょうか?」と声をかけたが、誰からも質問や意見は出なかった。
ところが、その打合せ会が終わった直後、同じ事務室内において、被告は、原告と目が合うと、いきなり「なぜ、先に話し合いをしないの」、「何度同じことを言わせるの」、「こんなところで予定を言って、“よろしいでしょうか”って言ったって、誰も、いいなんて言えないんだよ!」と怒鳴り始めた。
原告は、「誰も何もおっしゃらないので、そのまま説明だけさせてもらったのですが」と述べたが、被告は「あんた、みんなに、いいって言って欲しいんでしょう。だったら、やることちゃんとやんなさい!」と言いつのった。原告が、「ならば、話し合いというのは、いつしたらいいんでしょうか?」と尋ねると、被告は「いつでもいいんだよ!」と原告を怒鳴りつけた。
(b)違法性
イ、北海道教育委員会の職員である被告は、朝の打合せ会の中で、原告を含む職員に対して、朝の打合せ会の性格について問題を提起し、ルールを確認し合ったことは一度もない。にもかかわらず、朝の打合せ終了直後、他の職員がいる前で、聞えよがしに、財団の嘱託として働いている原告を「何度同じ事言わせるの」と咎め立てした。これは、あたかも原告には学習能力がないかのごとく印象づけて、原告の名誉と社会的信用を毀損した、「民法」第710条及び「刑法」第233条に問われるべき不法行為である。
ロ、北海道教育委員会の職員である被告は朝の打合せ会で、財団の嘱託として働いている原告に対して「やることちゃんとやんなさい!」と罵言を浴びせた。これは、原告があたかも自分の任務を果たさずにただ要求ばかりしている、無能で自己中心的な人間であるかのごとく印象づけて、原告の名誉と社会的信用を毀損することを意図した行為である点で、「民法」第710条及び「刑法」第233条に問われるべき人格権侵害の不法行為である。
(10)平成18年10月7日(土曜日)
(a)被害の事実(甲9号証を参照のこと)
原告は企画展の準備のため、明治大学の図書館に資料閲覧の諾否を問い合わせた。同図書館は快く応じ、「お出でになる時、できれば現在の仕事先の紹介状をお持ち下さい」という返事だった(甲35号証)。ただしこの用件での出張の可否は、(9)の項で述べた時のことがあって以来棚上げになっていた。
しかし10月6日(金曜日)、原告が出勤すると、出張の書類はN業務主査が整えて、被告の許可をもらっておいてくれた。原告はN主査に礼を言い、明治大学へ持参する紹介状について、事務室で二人で相談した。すると、少し離れた自席に座っていた被告が、「それは、こちらから職員の派遣願を出すことになる」と言った。被告は原告に対して、一方的に「それでいいね?」と言い、「書類、出来上がったら私に見せて」と言った。
原告は北海道大学大学院文学研究科で博士の学位を取ったのち、文学部言語情報学講座の助手を勤めただけでなく、文学部図書室の非常勤職員だったこともあり、大学図書館が言うところの〈閲覧希望者が持参する紹介状〉の書式には通じていた。普通は、簡潔に用件と、持参した者が確かに紹介状を発行した組織に属するという意味の文言と、所属長の判があれば十分である。それゆえ原告は、被告がなぜ〈紹介状〉とは別の書類を作らなければならないと言い出したのか、内心疑問に思った。
しかし原告は、その時は敢えて反論せず、被告が言う「職員派遣願」を作成することにして、文学館のサーバーに残されていた事業課主査(当時)の、小樽文学館に対する職員派遣依頼書類(平成12年11月16日付)(甲10号証の3)を参考にした。起案に必要な「決定書」の書式はA学芸員が見せてくれた。また、下書きの段階でN業務主任と川崎業務課長に目を通してもらった(甲10号証の4)。業務課長は「文章は私の見たところ、申し分ないと思う。ただ、細かいところはNさんに聞くといいよ」と言った。原告は更にN主査の添削を受け(甲10号証の5)、6日の退勤間際に書類が出来たので、被告に直接渡して帰った。
翌日の10月7日(土曜日)は被告の休みの日であった。被告は、原告の書類を手直ししたものを、原告の机上に戻していなかった。被告の机の上にもなかった。
ところが、原告の退勤間際の4時50分頃、被告が突然事務室に現れた。そして原告を、「教えてあげるから、ちょっとおいで」と自席に呼びつけた。被告は原告の目の前で、書類(甲10号証の1)に鉛筆で書きなぐるように手を加えながら、その都度教え込むような口調で、「開催要項をつけなければならない」、「展覧会概要として会期、会場、主催者、観覧料等を知らせなければならない」と注文をつけ、その間、原告に対して「観覧料は分かる?」と質問し、原告が「はい、分かっています」と答えると、「じゃあ、それは要らないな」と目の前で〈観覧料〉という文字を消してみせるなど、原告を嬲(なぶ)るような言い方を繰り返した。そして、レイアウトや標題を訂正するのみならず、「申し上げる次第です」を「申し上げます」、「伺う日時」を「調査日時」とするなど、約17箇所にもわたる細かい修正を行い、それを原告に返して、書き直しを求めた。
結局全面的な手直しとなったので、原告が被告に「では、休み明けの提出でいいですか?」と聞いたところ、被告は「いいんじゃないの、休み明けに出来て承認されれば、向こうに送るのに間に合うし」と言った。原告は驚き、「なぜ送るんですか。持って行く書類が必要なんです」と言ったが、被告は「送るんだよ!これは公文書なんだから。先に、相手側に送っておくんだよ!」などと原告を怒鳴りつけた。
原告は「先方が求めたのは〈紹介状〉であり、自分が持参しなければ〈本人確認〉の意味をなさない」という意味の説明をしたが、被告は耳を貸そうとせず、原告が事前に郵送することを承諾するまで、原告を帰さなかった。原告が被告から解放されたのは午後5時半過ぎだった。
(b)違法性
イ、北海道教育委員会の職員である被告は、財団の嘱託である原告が主体的に進めている明治大学図書館との交渉に容喙して、相手側の求めている「紹介状」ではなく、「職員派遣願」の作成を原告に強いた。また、被告は「職員派遣願」の趣旨を資料調査閲覧願いではなく、資料借用願いと勘違いして、原告に「開催要項」まで作らせて「職員派遣願」に添付させた。これは原告の業務遂行に対する干渉であり、「刑法」第234条に問われるべき業務妨害である。
ロ、北海道教育委員会の職員である被告は、財団の嘱託である原告が財団法人北海道文学館の書式に則って書類を作成し、業務課が認めたにもかかわらず、財団の書き方とは異なる書き方を原告に強いた。これは北海道教育委員会が駐在道職員に指示した業務事項を逸脱した業務課に対する越権行為である。また、原告に対して財団のルールに従わない書き方を強制したことは、「地方公務員法」第29条に該当する、違法な強制行為である。
ハ、被告が原告に強いた書類の書き方は、駐在の道職員である被告の位置を「合議」の欄から「主管」の欄に変えさせるものであった。
これは被告が北海道教育委員会の公務員であると同時に民間の財団法人北海道文学館の職員を兼任しているかのごとく印象づける不正な行為である。被告は原告に不正な書き方を強制することによって、財団の公文書の中で自分が財団の職員として記載されている事実を作り、財団の管理職であることの既成事実化を図った。これは「地方公務員法」第38条に違反する行為であり、この不正行為への加担を原告に強要した点で、二重に違法行為である。
ニ、北海道教育委員会の職員である被告は、無知な人間に「教えてやる」かのごとき言葉で、財団の嘱託である一市民の原告を拘束して書類の書き直しを強制し、書類の事前発送を承諾させた。これは原告の能力を貶め、無知な人間扱いをして名誉を傷つける行為であり、「民法」第710条に該当する、人格権侵害の違法行為である。
ホ、被告は、時間契約の嘱託職員である原告の退勤時間が過ぎたにもかかわらず、原告を拘束した。これは北海道教育委員会の公務員が、原告と財団との間に結ばれた契約を無視した、「地方公務員法」第32条に反し、かつ同法第29条に問われるべき不法な行為であり、原告の自由を拘束する憲法違反の不法行為である。
(11-1)平成18年10月28日(土曜日)
(a)被害の事実(甲17号証を参照のこと)
原告が朝から1人で閲覧室の業務を行っていると、午前11時頃、被告が閲覧室に来て印刷作業をし、帰り際に、原告に対して、「文学碑の仕事はどうなっているの」と聞いた。文学碑データベースについては、各市町村・自治体から特に新たな情報は入っていなかったので、原告はデータの更新を行っていなかった。原告は「いいえ、特に何もやっていませんでした」と答えた。すると、被告は、「やってないって、どういうこと。文学碑のデータベースを充実させるのは、あんたの仕事でしょ。どうするの? もう、雪降っちゃうよ」と、原告を急き立てた。更に被告は、「5月2日の話し合いで、原告が文学碑のデータベースをより充実させ、問題点があれば見直しをはかり、さらに、原告が碑の写真を撮ってつけ加えてゆく作業をすることに決まった」、「これらは、原告が主体となって執り行うべき業務である。それを現在まで行わなかったのは、原告のサボタージュに当たる」という二点を挙げて、原告を責めた。
しかし、5月2日の話題((2)の項参照)はケータイ・フォトコンテスト、または文学碑写真の公募という点に終始し、被告が言うような決定や申し合わせはなされていなかった。そこで原告は、「そのようなことは決まっていません」と反論したが、被告はあくまで「決まっていた」と主張し、「どうするの。理事長も館長も、あんたがやるって思ってるよ」と言った。 それを聞いて原告は、おそらく誤った情報が理事長や館長に伝わっているのだろうと思い、「分りました。では、私が理事長と館長にご説明します」と言った。被告は慌てて「なぜ、あんたが理事長や館長に説明しなきゃなんないの」と言い、原告の行動を阻止した。
(b)違法性
イ、被告は、閲覧室という不特定多数の来観者に開かれた空間で、原告の業務態度を非難した。これは原告が定められた業務に手抜きをするいい加減な人間であるかのような印象を与えて、名誉を毀損し、社会的信用を失わせる行為であり、「民法」第710条及び「刑法」第233条に該当する人格権侵害の違法行為である。
ロ、被告は、原告が行うべきこととは決まっていなかった用件を持ち出して、原告がサボタージュを行っていると決めつけた。これは事実無根な言いがかりをつけて、原告の業務遂行態度を非難したことにより「民法」第710条に該当する、極めて悪質な名誉毀損の人格権侵害の違法行為である。
ハ、被告は、原告が理事長や館長に事情説明をして誤解を解き、自己の名誉を守ろうとする極めて正当な行動を阻止した。これは、自分の行動の正当性を主張しようとする原告の権利を侵害して、憲法が保障する基本的人権の実現を妨げる、人格権侵害の違法行為である。
(11-2)平成18年10月28日(土曜日)〈同日〉
(a)被害の事実(甲17号証を参照のこと)
(11-1)の項でのやりとりのあと、原告は、一対一の押し問答に終始すべきではないと思い、「もう昼にもなるので、事務室へ行ってお話をうかがいましょう」とカウンターを立った。被告も続いてすぐに事務室に上がった。
そして昼食後、原告は、改めて被告の言い分を聞こうとした。ところが被告は、「もう二度も話したから、その通りのことだ」と言い、なぜか主張の詳細を事務室では口にしようとしなかった。「要するに認識の相違だ」とも言ったが、原告の「文学碑に関してそのような仕事は決まっていなかった」という主張は、依然、認められないとのことだった。
原告は責任ある立場の職員に立ち会ってもらいながら、これまでの経緯を明らかにしようと考え、「では、その問題について、副館長(先の学芸副館長)も業務課長も揃ったところで、説明させていただきます」と言った。ところが被告は、「いいかい。たかが、だよ。たかがデータベースの問題でしょう。それを、なんであんたが、副館長や業務課長に説明しなきゃなんないの」と、今度は一転、データベース問題の重要さそのものを否定した。そして命令口調で、「説明したいんなら、まず、私に説明しなさい。」、「何かやるときには、まず、私に言いなさい」と言い、原告が「二人の間に認識の違いがあるというのだから、そのことについて、他の方に意見をうかがいたいのだ」と言うと、「説明して分ってもらいたいなら、わたしにまず説明しなさい。私がこの学芸班を管理しているんだ。そうした決まりを守らないなら、組織の中でやっていけないよ」と、自分の立場を押しつけた。
原告は、自分の雇用に関わる問題にまで発展しかねないと思ったので、机の中に入れていた録音機を取り出し、「話の詳細を心覚えに記録させていただきますので、どうぞお話し下さい」と言った。すると被告は、今度は話を続けることなく、急に「あんたひどいね。ひどい」、「あんた、普通じゃない」と、あたかも原告が普通ではない(アブノーマル)人間であるかのような言葉を発した。原告は、被告に、「私に話したいことがあるなら、記録を取られるからといって、なぜ、話さないのか。誰がいたとしても、一対一の時のように、はっきり言えばいいではないか」と言った。そして、「私は、この問題について、これからも追求してゆくつもりだ。そのことは、自分自身が(自分の言葉として)これ(録音機)に記録しましたから」と言い、午後の勤務のために事務室を出た。
(b)違法性
イ、原告は副館長や業務課長の立ち会いの下で事実確認を行い、サボタージュといういわれのない名誉毀損を正そうとしたが、被告はそれを妨げた。これは原告が自己の名誉を守ろうとする、極めて正当な権利に対する侵害であり、憲法が保障する基本的人権の実現を妨げる、人格権侵害の違法行為である。
ロ、北海道教育委員会の職員である被告は、財団の嘱託として働く一市民の原告に対して、あたかも自分が原告の管理者であるかのように主張した。
すなわち、被告は、自分が公務員でありながら、同時に民間の財団法人の管理職に就いていることを原告が受け入れ、原告が自らを部下の立場に置くように強要した。これは「地方公務員法」38条及び「北海道職員の公務員倫理に関する条例」第4条に反する、不正な身分関係強制の違法行為である。
ハ、北海道教育委員会の公務員である被告は、身分の不安定な原告の弱い立場につけこみ、被告自身が原告の使用者ではないにもかかわらず、将来の雇用に関する原告の不安を煽るような恫喝的な言葉を吐きかけた。これは被告が自己の身分を偽って原告に対して行った、「地方公務員法」第29条に該当する、悪質な脅迫行為である。
二、被告は、原告が被告の主張を正確に記録するために録音機を出したところ、原告の性格を誹謗する言葉を吐きかけた。これは原告の名誉を毀損したことにより「民法」第710条に該当する、人格権侵害の違法行為である。
(12)平成18年10月31日(火曜日)
(a)被害の事実
原告は被告の度重なる業務妨害や誹謗中傷の実態を訴えて、職場環境の改善を求めるため、「去る10月28日に発生した〈文学碑データベース作業サボタージュ問題〉についての説明、及び北海道立文学館内における駐在道職員の高圧的な態度について」(甲17号証)というアピール文を、財団理事長、北海道立文学館館長、副館長、業務課長、及び被告本人に渡して、事態の認識と、適切な解決を要請した。
だが、被告は急遽、痔疾の手術のために入院してしまい、原告の「被告以下、それぞれの関係者から、反論もしくは別の視点からの意見も提出されることもあるだろう。また、内容をお認めになる場合もあるだろう。そうしたご意見・ご回答は、すべて文書の形で、原告にお渡しいただきたい」、「文書でのご意見・ご回答は、11月10日(金)までにお渡しいただきたい」という要望を無視し、何の対応もしなかった。
(b)違法性
イ、被告は、原告が被告から蒙った業務妨害や誹謗中傷の訴えを黙殺し、無視し続けた。被告のこのような態度自体も、憲法が保障する基本的人権の回復をはかる原告の行為を無視する違法行為である。
(13)平成18年12月6日(水曜日)
(a)被害の事実
原告は12月2日(土曜日)、川崎業務課長から、12月6日(水曜日)に毛利正彦館長(当時)による職員面談があるからと、「自己申告書」という書類を渡され、必要事項を書いて、5日(火曜日)に提出した。
そして12月6日午前11時30分頃、館長室に呼ばれ、毛利正彦館長(当時)から、平成19年度の雇用を更新しないという財団法人北海道文学館の方針を告げられた。
財団は更に、原告の異議申し立てを無視して、12月12日、北海道立文学館公式ホームページ等において、正職員の学芸員と司書を採用する募集要項(「学芸員、司書の募集について」甲19号証)を公示した。募集要項には、「1971(昭和46)年4月1日以降に生れた者」という年令制限が設けてあり、その制限を越えた年令の原告は改めて応募する機会を与えられず、平成19年3月31日をもって職を失った。被告は原告に対して、「自分は財団の人事と関係ない」と言っていたが、「平成19年度 財団法人北海道文学館職員採用選考」に関する「決定書」(12月12日決定)では、被告は募集要項決定の合議に加わっていた(甲20号証)。
(b)違法性
イ、財団法人北海道文学館が行った正職員採用の募集要項は、高齢者雇用安定法が指示する「年齢制限を設けた理由の明示」に従わない、違法な募集要項だった。原告はこの違法な募集要項のため、財団と再雇用の契約を結ぶ機会も、この募集に応募する機会も失った。被告はこの違法な募集要項の決定に加わり、財団法人北海道文学館の違法行為に加担した。これは「地方公務員法」第29条に該当する違法行為である。
ロ、被告は北海道教育委員会が駐在道職員に指示した業務事項を逸脱して、財団法人北海道文学館の人事にかかわり、財団の違法な募集要項の決定に加わった。これは「地方公務員法」第38条に反する違法行為である。
(14)平成19年1月31日(水曜日)
(a)被害の事実
1月27日(土曜日)、「中山展」が終わり(次に予定されていた「栗田展」が中止されたため期間延長)、その撤収作業が28日(日曜日)と30日(火曜日)に行われた。 そして翌日の31日から、原告は自分が主担当の企画展「人生を奏でる二組のデュオ」の展示準備を始める予定だった。この予定については、職員の了解も取っていた。30日(火曜日)の朝の打合せ会において、2月の予定に関する変更の連絡は一切なかった(甲21号証)。
ところが31日、原告が午前中に自宅から小樽文学館へ直行し、借用資料を受けとって、午後から道立文学館へ戻ったところ、「人生を奏でる二組のデュオ」展の副担当のA学芸員が原告のもとに来て、「なんだか、急に写真展が開かれるようになったようですね。特別展示室の入口が塞がれて、準備できないんです」と知らせてきた。驚いて確かめに行くと、特別展示室の入口は移動壁が凹字型に組まれ、すでに「ロシア人のみた日本 シナリオ作家イーゴリのまなざし」(期間・平成19年2月3日~2月8日 以下「イーゴリ展」と略)(甲22号証)という展示の写真額が展示されていた。
一般に文学館の展示作業は、入口を起点として、来館者の目線を想定しながら展示物の配置を決めて行く。その入口を塞がれては、展示準備に入ることができない。
原告とA学芸員は、奥のほうで出来る仕事(例えばガラスケース内の展示装備)だけでも先に進めておくことはできないかと考え、特別展示室脇の電気室の入口から特別展示室に入ろうとした。だが、配電盤に上には、被告の名前を付した「照明はライティングレールのみ点灯に変更しました」という付箋が貼ってあった(甲23の1~3号証)。それは、特別展示室入り口のライティングレール上のみは展示写真を照らすために灯りが点くが、それ以外は特別展示室内の照明は使えない設定にされてしまったことを意味した。
以上の、特別展示室の入口を移動壁で塞いで写真展覧会の写真額をそこに掛ける行為、および配電盤の照明設定を変更し、その上から付箋を貼って、暗黙のうちに、照明設定の再変更もしくは復元を禁止する意志を知らせる行為を行ったのは被告であった。そのことは、2月6日(火曜日)の朝の打合せ会で、被告が自分から発言を求め、「イーゴリ展をやることになりました…もう、やっております」と事後承諾を求めたことからも明らかである。
特別展示室入口を塞いだイーゴリ展は2月9日に撤去されたが、原告は2月9日、岩内の木田金次郎記念館と道立近代美術館から作品を借用し、10日は札幌市営地下鉄の各駅にポスターを貼る仕事を予定していた。このため2月11日まで特別展示室での設営に取りかかることができなかった。原告はやむをえず、2月17日の展覧会オープン前日まで、文学館の休館日を除く原告の非出勤日を返上して、全143点に及ぶ展示品の展示作業を行った。14・15・16日の3日間は、作業は10時近くまで及んだ。14日夜と15日夜は天候状態も悪かったので、やむなくホテルに泊まりながら展示作業に当たった(甲24号証の1~2)。17日のオープンを控えた16日、原告が展示を完成して帰宅したのは午後11時過ぎだった。
(b)違法性
イ、被告は平成19年1月13日から始まる予定の「栗田展」の主担当だったが、18年12月に中止を決定してしまった。被告は自分の失態を取り繕うため、文学館の年間計画になかった「イーゴリ展」を、他の職員に何のことわりもなく割り込ませ、翌週の火曜日の朝の打合せ会で事後承諾を求めた。これは被告が、北海道教育委員会が指示した駐在道職員の業務事項を逸脱して、財団の年間計画を恣意的に変更してしまう、不当な越権行為であり、「地方公務員法」第28条または29条に該当する悪質な行為である。
ロ、被告は、原告が19年1月31日から特別展示室の展示準備に入る予定だったことを知っていたにもかかわらず、その直前に、イーゴリ展のために特別準備室の入口を塞ぎ、原告が準備作業に入れないようにした。
これは原告の準備を大幅に遅らせて、企画展の開催日(2月17日)に間に合わないかもしれないという危機的な状況に追い詰めた点で、「刑法」第234条に該当する、極めて悪質な業務妨害の違法行為である。
ハ、原告は被告によって準備を遅延させられたため、2月11日以後、毎夜、午後10過ぎまで文学館に残って準備作業を行い、14日と15日は札幌市内のホテルに泊まることを余儀なくされた。その結果、労災に入っていない嘱託職員の原告は、契約勤務時間外の災害については何の保証もない状態で、過重な契約時間外労働とそれに伴う出費を5日間にわたって強いられた。これは原告が被告の妨害によって「労働基準法」第32条に反する長時間労働を余儀なくされ、また、財団側がその事実に関しては、「労働安全衛生法」第71条の2項に反して何の配慮もしなかったことを意味する。そういう結果をもたらし、原告に不当な過重負担を強いたのは、被告が原告に対して行った「刑法」第234条に該当する悪質な業務妨害である。
第2、謝罪文を請求する理由
1、名誉毀損の事実
① 北海道立文学館は不特定の来観者や外来者が多数訪れる、市民に開かれた公共の空間である。この空間において、前章で述べたごとく、平成18年9月13日(水曜日)、被告は自分の無知を原告に転嫁する卑劣なやり方で、原告の業務態度をあげつらい、原告が業務の初歩的な手続きさえ知らない、無知な人間であるかのように咎め立てて、原告の人格と能力の社会的信用を失墜させ、名誉を毀損した。
また、平成18年10月28日(土曜日)、被告は原告に対して、同様にこの空間において、事実無根の事柄を口実とし、サボタージュの汚名を着せて、原告の人格と能力の社会的信用を失墜させ、名誉を毀損した。
いずれも「民法」第710条に該当する不法行為である。
② 北海道立文学館は、非常勤の嘱託である原告が立場の異なる財団正職員及び駐在道職員と協働して働く場であり、業者その他の業務に関係する人たちが絶えず出入りする公共性の高い空間である。それらの職員や業者等の原告に対する評価は、次年度における原告の雇用契約に重大な影響を及ぼす。この空間において、前章で述べたごとく、平成18年8月29日(火曜日)、被告は同席の人間に聞えよがしの音量をもって、事実無根の手続き論を口実に、原告が文学館業務の欠格者であり、スタンドプレー狙いの人間であるかのように印象づける中傷誹謗の罵声を浴びせかけ、原告の人格と能力の社会的信用を失墜させ、名誉を毀損した。
また、平成18年9月26日(火曜日)、同様にこの空間において、被告は原告に矛盾混乱した指示を出し、戸惑っている原告に対して、同席の人間に聞えよがしの音量をもって、あたかも呑み込みの悪い人間であるかのように印象づける罵声を浴びせかけ、原告の人格と能力の社会的信用を失墜させ、名誉を毀損した。
また、平成18年10月3日(火曜日)、同様にこの空間において、被告は原告の行動に言いがかりをつけ、同席の人間に聞えよがしの音量をもって、あたかも原告には学習能力が欠けているかのように印象づける中傷誹謗の罵声を浴びせかけ、原告の人格と能力の社会的信用を失墜させ、名誉を毀損した。
また、平成18年10月28日(土曜日)、同様にこの空間において、被告は同席の人間に聞こえる音量をもって、原告を普通ではない(アブノーマル)人間と決めつけ、人格的信用を失墜させる言葉を浴びせて、原告の人格と名誉を毀損した。
いずれも「民法」第710条に該当する不法行為である。
2、謝罪文の請求
上記のごとき被告の言動により、原告は多大の精神的苦痛を被り、かつ人格と能力に関する社会的信用を損傷させられて、財団法人北海道文学館の嘱託の職を失った。以上の事柄に関して、原告は被告に対して、署名捺印した謝罪文を書き、原告に手交することを請求する。
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