オピニオン・ランチャー社事業開始
オピニオン・ランチャー社事業開始
――亀井秀雄のチャージ(その3)――
○『増補 感性の変革』のこと
ずいぶん長い間ご無沙汰をしてしまった。
「オピニオン・ランチャー社」の立ち上げを報告してから、もう半年になる。「なんだ、年寄り扱いされるのがイヤで、カラ元気のホラを吹いただけなのか」。そんな印象を持たれた人も多いと思う。それはやむを得ない。
ただ、その間全く怠けていたわけでない。ランチャー社立ち上げの報告の時もちょっと言及しておいたと思うが、ひつじ書房が一昨年の『主体と文体の歴史』に続いて、もう一冊論文集を出してくれることになった。
内容は、『感性の変革』を核として、『感性の変革』で扱った時代の文学に関する論文15編を加えた、Ⅳ部構成の『増補 感性の変革』。
『感性の変革』は、2002年(平成14年)、ミシガン大学が英訳本を出してくれた。そのとき私は、英語圏の読者のために、400字原稿用紙180枚近い「解説」をつけたが、その日本語文も入れてある。おかげで『主体と文体の歴史』とおなじく、550ページ近い大冊となった。
その校正が12月初めまでかかり、それから1ヶ月ほど、骨休めのつもりでぼんやりしていたのだが、今の出版社は仕事が早い。昨年の暮れも詰まった、12月29日に再校のゲラが届いた。元日のお屠蘇もそこそこに――と言うと、やや誇張に過ぎるが――さっそく校正にかかり、漸く1月28日に終わって、ひつじ書房にお返しした。間もなく念校が始まると思うが、とにかく一息つくことができた。『増補 感性の変革』は春までには出ると思う。ぜひご一読いただきたい。
○楽天ブックス・電子書籍の出版
さて、他方、オピニオン・ランチャー社から出す予定の電子書籍については、昨年の暮れには「テクストの無意識」と題するシリーズの4冊の版下が既に出来ていた。
その4冊を昨日(2月1日)、楽天ブックスの電子書籍ストアにアップした。楽天の側でチェックし、問題がなければ、4日(2月)から発売される。
当初はアマゾンのキンドル版で出すつもりで、年賀状にもそう書いたのだが、幾つかの事情があり、楽天ブックスの電子書籍で出版することにした。年賀状を受け取った方々には誤った通知をしてしまい、まことに申し訳ない。ご海容をお願いする。
今度出版した4冊は、
「太宰治の津軽」
「大江健三郎の『沖縄ノート』」
「中野重治『雨の降る品川駅』における伏字と翻訳の問題」
「『赤い靴をはいた女の子』をめぐる言説」
『増補 感性の変革』が明治文学を中心に論じたのに対して、こちらは昭和文学を対象としており、ここ数年の間に執筆したばかりである。
この4冊を総称して、「テクストの無意識」シリーズ。
ヴォルフガング・イーザーが提唱した「テクストの「空所」」という概念は多くの研究成果をもたらしたが、それはあくまでも「読む行為」を解明する理論だった。
本シリーズはそれとは違って、作者の表現操作おけるトリックやレトリックに焦点を合わせて、その表現操作にひそんでいる無意識を明らかにする。と同時に、どのような時代的な無意識を反映しているかを明らかにした。
こちらも是非ご一読いただきたい。
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