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言語ウオッチング(7)

大臣と知事は「長幼」の関係?

○2チャンネルの最低の連中みたい
 今朝(7月4日)、7時少し前に起きたところ、家族が「今度の復興担当大臣が宮城県知事に、失礼な言い方をしたらしい」と言う。
 なんでも携帯に配信されるニュースでそのことを知り、さて、どうなのかな、とテレビを入れると、ちょうどみのもんたが司会する番組で取り上げていた。ただし、知事と大臣の応答を撮った映像の放映が終わったところで、テレビのコメンテーターの反応しか見られなかった、という。
 「コメンテーターの反応から判断して、携帯配信のニュースは間違いないと思うけれど、松本という復興担当大臣は宮城県知事に、『しっかりやれ、そうでなければ、こちらは何もしてやらないぞ』とか、『自分の迎え方が悪い』とか、脅かすようなことを言ったみたい。それを読んで、私は2チャンネルの中の、特に最低レベルの書き手を思い出した。東北の被災地の人に対して、とかく上から目線の、思い上がった書き方をしている。松本大臣の言うことって、それと同じじゃない」。家族は酢を飲んだみたいに、不快そうな顔をしていた。

○松本大臣の横柄な命令口調
 朝食後、私はインターネットで検索してみた。簡単にyou tubeの動画が見つかり、それはこんな具合だった。
《引用》
松本龍復興担当大臣
(県の役人に案内されて応接室に入る。ソファーに腰をかけて、右隣の人に)
先にいるのが筋だよな
(村井宮城県知事が入ってくる。村井知事、握手を求めるが、松本復興担当大臣は応ぜず、向かいの椅子に座るように、村井知事に指示をする。村井知事から書類を受けとった後)
県でコンセンサス得ろよ そうしないと我々 何もしないぞ ちゃんとやれ
いま後から自分が入ってきたけど、お客さんが来るときは、自分が入ってからお客さんを呼べ いいか
長幼の序がわかっている自衛隊なら そんなことやるぞ 分かる
? しっかり やれ
(記者団に対して)
最後の言葉はオフレコです いいですか 皆さん いいですか 書いたらその社はもうおわりだから

 なるほど、これはひどい。対等の人間に対する話し方ではない。この松本龍という政治家、軽い巻き舌で、文末の言葉を小さく発音する。相手を見下した、命令口調。この態度は、結構年期が入っているようだ。「我々 何もしないぞ ちゃんとやれ」、「自分が入ってからお客さんを呼べ いいか」。これはもう脅しだな。「書いたらその社はもうおわりだから」。これは恫喝だろう。「しかしこの大将、東京都の石原慎太郎知事にもこんな口がきけるかな」。そう言ったら、一緒にyou tubeを見ていた家族が笑い出した。

○大臣を迎える「筋」とは
 要するに松本龍さんは、村井知事は大臣たる自分を迎える礼を取らなかった、それは「筋」違いだ、と言いたかったのであろう。
 しかし村井知事の側からみれば、「大臣がお見えになったら、応接室にご案内して」と、そう秘書に指示しておいた。そして、「大臣がお見えになりました」という連絡を受けて、応接室まで出向いた。そういうことだったのであろう。これは別に「筋」違いなことではない。
 もう一つ考えられる迎え方は、知事自身が県庁の玄関まで大臣を迎えに出て、自分で大臣を応接室まで案内することだろう。このほうがもっと鄭重な迎え方だと思うが、先のように迎えたからといって、「筋」が違うということにはならないだろう。
 もし知事が先に部屋にいて、大臣を迎えるとすれば、「大臣がお見えになったら、知事の執務室にご案内しなさい」と指示をしておけばよい。そうすれば、知事は執務室に大臣を迎え、「ああ、よくお運び下さいました。お忙しいところ、ご足労を煩わせまして、恐縮に存じます」という挨拶で済むわけである。

 松本龍さんは福岡県選出の国会議員らしい。選挙区の後援会の人たちが訪ねてくるというので、あらかじめ応接室で待ちかまえ、後援会の人たちがドアを開けるや、「おお! これは、これは、おなつかしい」とか何とか、満面笑顔で出迎える。そういう自分流儀を期待していたところ、村井知事はそうしなかった。そこで側近か誰かに、「先にいるのが筋だよな」となったのかもしれない。
 しかし、だからといって、それは「筋」違いでもなければ、「ちゃんとやれ」、「いいか」、「分かる
? しっかり やれ」などと横柄な口を利いてもいいという理由にもならない。

○大臣と知事は「長幼」の関係?
 それに、そもそも大臣と知事の間には「長幼の序」があるのだろうか。
 まさか松本大臣は、知事が「長」で、大臣が「幼」だと考えているわけではあるまい。もし、知事が「長」で、大臣が「幼」ならば、「幼」の大臣が「長」の知事に向かって、「県でコンセンサス得ろよ そうしないと我々 何もしないぞ ちゃんとやれ」などと威張った口を利けるはずがない。
 そうではなくて、松本大臣は自分を「長」の位置に置き、いわば一国一城の長たる、県知事に対して、「幼」扱いに、つまりガキ扱いにした態度を取ったのである。思い上がりもはなはだしい。

 おまけに、「長幼の序がわかっている自衛隊なら そんなことやるぞ 分かる?」ときた。
 なぜここで自衛隊を引き合いに出したのか。まるで「長幼の序」が自衛隊の秩序原理みたいな言い方だが、自衛隊の秩序原理は階級にある。もちろん自衛隊員の多くは「長幼の序」をわきまえているだろう。しかし、かりに22歳の3等陸尉の小隊に、50歳の1等陸士がいたとしても、隊員としての行動は階級関係に従うことになる。自衛隊員としての組織的行動をとる場合は、階級関係が「長幼の序」を超えているはずだからである。
 自衛隊員の間にも、出身学校の先輩・後輩関係がある。軍服を脱いだつきあいとなれば、階級関係よりも先輩・後輩関係が優先される場合が多いと思う。しかし、いったん軍服を着てしまえば、それは行動規範の外に置かれざるをえない。
 学校の先輩・後輩関係を「長幼の序」と呼ぶのは、もちろん語義の拡大であるが、たとえ松本大臣が学校の先輩・後輩関係を念頭に置いて「長幼の序」を言ったのだとしても、ここで自衛隊を持ち出すのは筋違いでもあれば、お門違いでもある。まして、大臣と知事との関係にあてはめようとするのは、お門違いもはなはだしい。
 
 それやこれやを考えるに、要するにこの松本という大臣は、県知事より俺のほうが「長」なんだぞと言いたかったのだろう。すごい権力者意識だ、と言うほかはない。

○オフレコのルールも知らない
 もう一つ。この大臣はオフレコに関するルールを知らない。
 もし話の流れで、オフレコにしてもらいたいことも話さざるをえない場合があったとしよう。その時は、まずマスメディア関係の人たちに、「これはオフレコにしてもらいたいんだが」とことわり、メディア関係の人が同意したならば、そのことを口にする。それがオフレコのルールだろう。
 ところが、先の場面の松本大臣は、自分からしゃべったことについて、これは記事にされてはマズイと気がついたのか、「最後の言葉はオフレコです」と言う。では、お願いするのかと思えば、「書いたらその社はもうおわりだから」と脅しをかける。これではメディア関係者と信頼関係を築くことができない。
 政治家としてもっとも拙劣な態度だったと評されても仕方がないところだろう。

 

 

 
 

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