判決とテロル(16)
「足利事件」の場合
○癌治療から退院して
抗ガン剤の2度目の治療は、1回目の治療の時のような下痢はなく、口中にネバネバした唾液が溜まることもなくて済んだ。その意味では、「インターミッション(その2)」で書いたような強烈な副作用はなかったと言えるが、その代わりに吐き気がいつまでも続き、味覚がなくなる。そのくせ嗅覚だけはやたら敏感になって、普段ならば美味しそうに感ずる匂いが、かえって食欲を減退させる。やむを得ず当初の数日間は点滴で栄養補給をすることになったが、みるみる筋肉が落ち、体力が衰えていく。
1回目の抗ガン剤使用の時に頭髪がすっかり抜けてしまい、それに加えてこの衰弱。「おやおや、何だかハムナプトラみたいだな」。
1月7日に2度目の抗ガン剤治療を始め、1月末に退院したわけだが、足許が心細いほど衰弱し、身体を起こしているだけで疲れてくる。少量の食事を取る時の外は寝てばかりいるありさまだった。
しかし自宅に帰って安心をした上に、韓国の知人が届けてくれた霊芝が利いてきたのだろう、少しずつ食欲がもどり、2月12日には、午前中、国会中継を楽しみ、夜は、大学の教え子が〈ハイスピード撮影〉を担当したNHKのスペシャル番組「“翼”を手にした魔法使い シモン・アマン」を集中して観ることができた。――14日には「4回転ジャンプ0,7秒の美しき支配者 B・ジュベール」も観た。――その程度にまでは体力が回復したわけで、月が変わる頃には、仕事の根気がもどってくるだろう。
知人のいい仕事を見ると、エネルギーが伝わってくる。
○「足利事件」再審の報道
そのような次第で、1月7日から2週間ほどは、ロクにテレビも見ずに、病院のベッドでウツラウツラとしていたわけだが、その間、「足利事件」の再審公判において、検察が容疑者(当時)のSさんを取り調べた際の録音が紹介された。「どんな取り調べだったのだろうか?」。
テレビの報道はごく断片的で、取り調べの実態はよく分からない。
「インターネットを検索して、もしどこかの新聞社が詳しく紹介しているようだったら、刷りだしておいてくれないか」。家族にそう頼んでおいたところ、『山梨日日新聞』が12回に分けて「足利事件取り調べ録音テープ」を紹介している。それを刷りだしておいてくれた。〈他の新聞社のホームページにも載っていたが、各新聞社に同じものが配布されたらしく、どれもほとんど違いがない。それならば、これも何かの縁と思って、検索して最初に見つかった『山梨日日新聞』のものを刷りだしておいた〉。そういう家族の説明だった。
○取り調べ室という言説空間
ただし、私の関心はどちらの主張が正しかったのかを検証することではない。どちらの主張が正しかったかについては、東京高裁が再審を命じた時点で既に決まっていたと言えるだろう。事実、先日の最終弁論では、Sさんの弁護士だけでなく、検察側も〈Sさんが無罪であることは明らかである〉旨の論告を行い、Sさんに謝罪している。
そんなわけで、むしろ私の関心は――これまでのブログのテーマから分かってもらえるだろうが――むしろ検事局の取り調べ室という、極めて特殊な力関係が働く言説空間のなかで、どのようなことが起こるか。具体な事例を通して普遍的な傾向を見出すことにある。
そのため、ここでは、いわゆる足利事件の当事者、関係者の名前は明記せず、頭文字で示すことにした。また、『山梨日日新聞』の記事では、(沈黙・約5秒)と注記されている場合、その「沈黙」を視覚化するために、「…………」という記号を補った。関係者及び山梨日日新聞社の御海容をお願いする。
では、以下は『山梨日日新聞』の「2010年01月22日(金)22時24分 」という日付をもつ、「足利事件取り調べ録音テープ 1」の全文である。
《引用》
22日開かれた宇都宮地裁の足利事件再審公判で、再生された録音テープの要旨は次の通り。Sさんが足利事件について、宇都宮地検の取り調べに初めて否認した翌日(1992年12月8日)分。
M検事 また、ちょっと話を聴こうと思って来たんだけどね。
Sさん はい。
M この前と同じように録音テープ回すけど、いいね?
S はい。
M 入浴ってのは週何回やるんだ?
S 2回です。火曜日と金曜日です。
M 火曜と金曜。
S 今日もしました。午前中。
M 何人でやるの?
S 3人です。
M どうだい? 東京拘置所とこっちと比べて。
S 自分としては同じですが。
M 同じ?
S はい。
M 暖房とか冷房とかは?
S ありません。
M そうか。
S 運動ですか、それからお風呂。
M 運動は毎日あるの?
S 月曜日と、水、木です。
M こっちではやっぱり週3回なの?
S はい。
M 入浴の回数も?
S 同じです。こっちと比べると、人と会話ですか、ないですね。
M どういうところで?
S 何と言いますか。自分から、こっちの職員の人の方が話しやすいといいますか。
M 戻ってよかったか?
S そうですね。やはり今まで見た人が仕事やってましたから。
M そう。
S 戻ってきたときは、なんか懐かしい感じしまして。
M ……(沈黙・約5秒)ところで前にね、君からちょっと変なこと聞いたんでね、今日来たんだけれども。
S はい。
M ……(沈黙・約5秒)今、起訴している、ね、Mちゃんの事件。
S はい。
M ……(沈黙・約5秒)あれは、君がやったことに間違いないんじゃないのかな?
S 違います。
M ええ?
S …違います。
M 違う?
S はい。
M ふーん。
S それでなんか、いいですか?
M うん。
S 鑑定ですか。
M うん。
S 自分にはよく分かんないですけど、何鑑定っていいましたっけ?
M DNA鑑定。
S そんなこと聞いたんですけど、でも自分じゃそれ全然覚えないんです。
M だけど、DNA鑑定で、君とね、君の体液と一致する体液があるんだよ?
S 全然それ、分かんないんですよ。本当に。
M ……(沈黙・約5秒)え?
S 絶対、違うんです。
M 違うんですって言ったってさ、君と同じ体液持っている人が何人いると思ってんの?
S ……(沈黙・約5秒)
M これはあれだよ、そんな、君の体液だって、あそこに現場のね、あそこにあったものと一致しているんだよ。
S …………(沈黙・約25秒。はなをすするような音)
M それから、Mちゃんの体に唾液(だえき)が付いているんだよね。いろんな意味で一致しているんだけどね。
S ……(沈黙・約10秒)
M じゃあ、今までね、認めてたのがね、何で最近になって急に否定する気持ちになったの?
S ……(沈黙・約5秒)
M 僕はずるくなれと言ったわけじゃないんだよ。ん?
S ……(沈黙・約10秒)
M ずるくなれと言ったわけじゃないんだよ。
S ……(沈黙・約10秒)
M Mちゃんの事件は、君が認めたから起訴したっていうわけじゃないんだよ。それだけのことじゃないんだよ。分かる? ほかに証拠があるからだよ。
S ……(沈黙・約15秒)
M 君がMちゃんの事件違うって言うとき、そういう話をするときは僕と目を合わせないでしょう? ん?
S ……(沈黙・約10秒)
M 前にね。
S はい。
M 僕がいろいろ聞いたときには、いろいろ考えて下向いたりねえ。そういうときは別として、僕と目を合わせてたじゃないの。
S ……(沈黙・約10秒)
M 違いますなんて、君否定するときは、僕と目を合わせてないね。なぜなの?
S …………(沈黙・約20秒)
M 考えていくほどでもないと思うんだけど、分かるね?
S ……(沈黙・約10秒)
M それだけじゃないんだよ。君、警察に捕まってからね。
S はい。
M 渡良瀬川の河川敷へ連れ出されたっていうのは。
S はい。
M その検証の時が初めてだね?
S あ、そうです。
M 捕まってからだよ。逮捕前は別として。
S はい。
M 捕まってから、渡良瀬川の河川敷に連れ出されたのは初めてでしょう? あのバスでみんな一緒に行ったわけ?
S はい。
M 君のすぐ前の席に僕が座ってたね?
S はい。
M あの時が初めてだね?
S そうです。
M そうだよねえ。
S はい。
M で、検証した時にね。Mちゃんの服を捨てたという場面、君が説明したでしょう?
S はい。
M 最初はちょっと付近の様子が変わっててね。よく分からないと言って違うところ説明したっていうけれど、後で死体がここにあったんだと教えてもらってからは。
S はい。
M あ、じゃあ、捨てたのはここだと言って説明したでしょう?
S はい。
M 君が説明した場所については、誰かから教えてもらったというわけじゃないよね?
S え。教わってません。
M その場でね、死体がここにあったと教えてもらって、それだけ教えてもらってたよね。
S はい。
M じゃあ、どこなんだと言って、あ、じゃあ捨てたのここですと。
S はい。
M 説明したんだね。僕はそばで聞いていたんだけど。で、君が説明した場所というのは、そのすぐ下から、Mちゃんの下着が発見されてるんだよ。あんな詳しい場所まで新聞には出てなかったはずなんだけど。
S 自分は、あの、河川敷から下りて、それで、ずーっと行って、で、坂がありますね。
M うん。
S 坂があって、確か、左側に木があったと思いますけども。
M うん。
S で、下がなんか、落ちそうな感じがあったと思うんですけど。
M うん。
S で、自分はそのへんだと一応あの、話してみたんです。
M 一応話してみたと言ったって、当てずっぽうに話したの?
S 全然分かんなかったんですよ。
M 分かんないのがさ、実際の事実とさ、狂いがないわけだ。当てずっぽうで話したわけ?
S もう、全然分かんなかったもんで。
M いやだから、分かんなかったんで、当てずっぽうで説明したの?
S 大体あのへんだと思いまして。
M 何で? 何でそう思ったの?
S あの、前は、あの、橋の上から見ると、木がいっぱいあったんですけども、その時はあんまり木がなかった。枯れていたっていうか、そういうふうになってたんです。それで分かんなかったんです。
M 橋の上からって、そこまで分かった?
S いやそうじゃなくて、前はあの、草ですか、グリーンとか。
M グリーン?
S グリーン色の、いっぱいありましたけど、その当時は、もう何て言うんですか、枯れてて分かんなかったんです。
M (語気を強めて)分かんなかった。枯れてて、分かんなかったけれども、死体のある場所教えてもらってからは、ピッタリした位置じゃないの? 捨てた場所っていうのは。
S ……(はなをすするような音)
M しかもね。
S はい。
M 死体をどう隠したか、どういうふうに説明した?
S ……(沈黙・約5秒)説明した時は、確か、抱いて。
M 抱いて、それはいいけれども、運んだ後どういうふうにしたか?
S 抱いて、それで、置いて。それで、何て言うんですか、草ですか。草をかぶせたと。
M 何でそんな説明したの?
S ……(沈黙・約5秒)
M 自分で実際にやってもいないのに、想像でそんな話ができたの?
S ……(沈黙・約5秒)
M はっきり言って、草をかぶせたなんていうことはね。前にね、Mちゃんの事件(ここで問題になっている「Mちゃん事件」と別な事件。引用者注)とか、Yちゃんの事件を説明した時にも、そんな説明はしていなかったね? 遺体の隠し方っていうのは、もう全然違うんだよ。何でMちゃんの事件でね、そんな説明したんだろうか? 作り話にしても。
S ……(はなをすするような音)
M どういうふうに隠されてたのか何かで聞いたことあるの?
S いいえ、ありません。
M 新聞か何かに出てたの?
S 出てません。
M じゃあ、何でそんな説明できたの?
S ……(沈黙・約5秒)
M 君の説明はね、実際に隠されてたのと同じ状態なんだよ。誰にも教えてもらわなくてね、何でそんな説明ができたんだろう?
S ………………(沈黙・約35秒。はなをすするような音)
M しかもね、コンクリートの堤防をね、君行ったことなかったって言うんでしょう、今まで。ということは、あの検証の時が初めてだね?
S 野球があった時は、あのグラウンド。
M 野球のグラウンドのことはいいよ。あのコンクリートの堤防はね、行ったことはなかったって言うんでしょう?
S その近くまで行ったことはないんですけど、野球やってましたから、そのコンクリートは見えたと思います。
M (語気を強めて)コンクリートの堤防なんていうのは、警察もわたしも想像できなかったと思うんだよね。堤防上でね、首絞めて運ぶ時に、斜面で1回下ろしたとか、説明したでしょう?
S はい。
M 靴が脱げたなんて説明もしたでしょう?
S はい。
M 何でそんな説明したの?
S ……(沈黙・約5秒)
M そんな説明する必要はあったの?
S ……(沈黙・約10秒)
M (穏やかな口調で)どうなんだい。ずるいんじゃないか、君。
S ……(沈黙・約5秒)
M なんで僕の目を見て言わないの、そういうこと。さっきから君は、僕の目を一度も見てないよ。
S …………(沈黙・約20秒。小さくむせび泣くような声)
M うん?
S …………(沈黙・約20秒。その後、涙声で)ごめんなさい。すいません。
M うそだったの?
S ……(沈黙・約5秒。すすり泣くような声)
M そうだね?
S (涙声で)ごめんなさい。勘弁してください。勘弁してくださいよお。
M いいから。
S (おえつの後)勘弁してくださいよお。
M うん。
S (泣き声。その後涙声で)すいません。
M 僕はね、本当のことを聞きたいっていう言葉を何回も言うよ。
S (涙声で)はい。
M 分かんないこともいっぱいあるから。
S (涙声で)はい、すいません。
M それは言う。言うけどね、うそをつけっていうことじゃないんだよ、僕は。
S はい。(はなをすする音)
だいぶ長い引用になったが、取り調べ室を「特殊な力関係が働く言説空間」と呼んだ理由は分かってもらえたと思う。
○「力の不均衡」
一般的に言って、法廷では尋問者(検事や弁護士)が質問する権利を持つ。つまり、何について質問するか(話題/topic)を選択する権利を持つわけだが、それに対して被尋問者(原告や被告、証人)は質問に答える義務を負い、自分の側から尋問者に質問したり、話題を設定したりすることはできない。「判決とテロル(13)」で紹介した、ジョン・M・コンレイとウィリアム・M・オバーは『公正な言葉を――法・言語・権力―』(1998)の第2版(2005)で、こんな意味のことを言っていた。〈時として被尋問者(被告)が「それは適切な質問とは思えません」とか、「あなたは自分の言葉を私の口に押し込んで、それを私に言わせたがっているみたいですね」とか、「そんな質問で何を聞き出そうとしているのか、私には分かりません」とかと、反問を試みる場合がある。だが、尋問者は、「私が聞いたことだけに答えて下さい」と言って、被尋問者の反問を退けることができる〉と。
そして、このようなやり取りが始まった場合、おおむね判事(裁判官)は尋問者の側に立って、被尋問者に「尋問者の質問に答える」ように指示する。
ウィリアムとオバーは、発話に関するこのような権利と義務の力関係を、法廷固有の「力の不均衡」と見なしており、それはアメリカの陪審員制度を前提としたとらえ方であるが、日本の法廷においても同様な言説規則が用いられていることは、多くの人が経験的に承知していることであろう。
タテマエ論的に見れば、そのような言説規則は、取り調べ室では制度化されていない。参考人として召致された市民は、自由に先のような反問をすることが、……いや、もっと積極的に自分の主張を述べることができる。呼ばれたのが海千山千の政治家であり、取り調べの検事の腰が引けている場合、まるで関係が逆転しているように見える場合もあるだろう。
だが、取り調べる検事に質問の権限があり、取り調べられる人間は自分にかけられた嫌疑を晴らさなければならない立場にある。嫌疑を晴らすための反問、反論、主張の内容は、結局のところ質問された事柄に拘束されており、その意味ではやはり「力の不均衡」に従わざるをえないのである。
まして「足利事件」の先の取り調べの場合、M検事は、一見うち解けた態度でSさんに話しかけてはいるが、明らかに「上から目線」でものを言っている。Sさんが「です」「ます」言葉で対応しているのに対して、「入浴ってのは週何回やるんだ?」「戻ってよかったか?」などと聞くのは、口の利き方として無礼であり、これはSさんを対等の市民と見ていなかった証拠と言えるだろう。
○ひどい話
M検事の取り調べは、この「力の不均衡」を存分に利用しながら、Sさんを心理的に追い詰める形を取っていた。
それが端的に表れているのは、Sさんが「鑑定」に言及した応答の箇所であって、念のためにその部分をもう一度引用するならば、
《引用》
S 自分にはよく分かんないですけど、何鑑定っていいましたっけ?
M DNA鑑定。
S そんなこと聞いたんですけど、でも自分じゃそれ全然覚えないんです。
M だけど、DNA鑑定で、君とね、君の体液と一致する体液があるんだよ?
S 全然それ、分かんないんですよ。本当に。
M ……え?
S 絶対、違うんです。
M 違うんですって言ったってさ、君と同じ体液持っている人が何人いると思ってんの?
となっている。
テレビで紹介されたのはこの箇所で、記憶している人も多いと思うが、一読して分かるように、Sさんはこの時「DNA鑑定」という言葉を知らなかった。だけでなく、多分どんな種類の「鑑定」であるかも知らなかった。「そんなこと聞いたんですけど、でも自分じゃそれ全然覚えないんです」という言葉から察するに、「それ」については、〈何か物的な証拠に関する鑑定〉という程度の漠然たる概念しか持っていなかった。
もし「血液型による鑑定」ということならば、これは以前から行われており、Sさんも「ああ、あのことか」と理解できただろう。だが、血液型はしょせん蓋然性の域を出ない。ところがDNA鑑定は、まさにこの人間だと、特定の人物をアイテンティファイする鑑定方法である(と考えられている)わけだが、Sさんにとっては、「全然それ、分かんないんですよ。本当に」だったのである。
そこでM検事は一瞬、「……え?」と虚を衝かれてしまったらしいが、Sさんが続けて「絶対、違うんです」と主張したのを聞き、Sさんのウィークポイントを察知したのだろう。「違うんですって言ったってさ、君と同じ体液持っている人が何人いると思ってんの?」。
テレビの報道によれば、東京高裁が「足利事件」の再審を命じたのは、この時点のDNA鑑定精度に問題があったためらしい。ところがM検事はそれを決め手に使おうとした。ひどい話だ。
○取り調べの実態
この「違うんです」という発話は、取り調べ全体の文脈に即して言えば、
《引用》
M ……(沈黙・約5秒)今、起訴している、ね、Mちゃんの事件。
S はい。
M ……(沈黙・約5秒)あれは、君がやったことに間違いないんじゃないのかな?。
S 違います。
M ええ?。
S …違います。
という応答に対応しており、Sさんが明瞭にMちゃん殺しの容疑を否認した重要な言葉を受けている。
M検事は慎重に受け止めるべき発話であるが、ただ、その直前の話題との関連だけで見れば、Sさんが「DNA鑑定は間違っている」、あるいは「DNA鑑定は自分が知っている事実と合わない」と主張した言葉と取れなくもない。この二重の意味作用を持つ言葉について、M検事は後者の意味だけに絞り、おそらくSさんがDNA鑑定の概念や実態に通じていないことに照準を合わせて問い詰めはじめた。
煩わしい印象を与えるかもしれないが、その箇所を、Sさんの沈黙を「……」という記号に置き換える形で、整理してみよう。
《引用》
M これはあれだよ、そんな、君の体液だって、あそこに現場のね、あそこにあったものと一致しているんだよ。…………それから、Mちゃんの体に唾液(だえき)が付いているんだよね。いろんな意味で一致しているんだけどね。……じゃあ、今までね、認めてたのがね、何で最近になって急に否定する気持ちになったの? ……僕はずるくなれと言ったわけじゃないんだよ。ん? ……ずるくなれと言ったわけじゃないんだよ。……Mちゃんの事件は、君が認めたから起訴したっていうわけじゃないんだよ。それだけのことじゃないんだよ。分かる? ほかに証拠があるからだよ。……君がMちゃんの事件違うって言うとき、そういう話をするときは僕と目を合わせないでしょう? ん? ……前にね。
S はい。
M 僕がいろいろ聞いたときには、いろいろ考えて下向いたりねえ。そういうときは別として、僕と目を合わせてたじゃないの。……違いますなんて、君否定するときは、僕と目を合わせてないね。なぜなの。…………考えていくほどでもないと思うんだけど、分かるね? ……それだけじゃないんだよ。君、警察に捕まってからね。
S はい。
M 渡良瀬川の河川敷へ連れ出されたっていうのは。
S はい。
M その検証の時が初めてだね?
このように整理してみれば分かるように、この間はM検事一人だけがしゃべっていた。それに対するSさんの沈黙は、作戦的な(tactic)沈黙というより、M検事の言うことがよく理解できない戸惑いの沈黙と見るべきだろう。
「違うんですって言ったってさ、君と同じ体液持っている人が何人いると思ってんの?」。……自分と同じ体液を持っている人間がいるかどうかだって? 何か重要な決め手を握っている口ぶりだが、何のことか思い当たらない。
「これはあれだよ、そんな、君の体液だって、あそこに現場のね、あそこにあったものと一致しているんだよ」。……「現場」は分かる。警察が現場検証という名目で連れて行った「あそこ」だろう。だが、「あそこにあったもの」とは何だろう。
「それから、Mちゃんの体に唾液(だえき)が付いているんだよ。いろんな意味で一致しているんだけどね」……Mちゃんについていた「唾液」と何が一致していたのか。M検事が言う「体液」か。では、この「唾液」と「あそこにあったもの」とは同じ物なのだろうか。何だか辻褄が合わない感じだ……。
多分Sさんの胸中をよぎったのは、このような疑問だったと思うが、相手が本当のところ何を言いたいのか、いや、聞きたいのか、それがつかめない。Sさんは困惑しながら、返答に詰まって、一種の失語状態に陥ってしまったと思われるが、このような時の「沈黙」は、例え10秒、25秒であっても、恐ろしいプレッシャーとしてSさんにのしかかり、「ああ、自分は、決め手を握っていると自信たっぷりな相手が言うことの半分も分からない」という自信喪失に追い詰められてしまう。
そこへ、まるで追い打ちをかけるように、M検事から「君がMちゃんの事件違うって言うとき、そういう話をするときは僕と目を合わせないでしょう? ん?」という言葉が投げかけられた。
これがどんなにひどい人格侮蔑の言葉であるか、いま自分が誰かに対して「あなた、私の目をちゃんと見て話をしてごらん」と要求する場面を想像してみれば、ただちに了解できるだろう。この言葉は、「私と目を合わせないように、目を逸らすのは、自分が言うことに自信がない、つまり嘘を吐いている証拠だ」という意味を含んでいるからである。
これは刑事や検事が容疑者を取り調べる際の常套手段かもしれないが、その根柢には「お前さんが本当のことを言っているか、嘘を吐いているか、こちらはお見通しなんだ」という脅しが潜んでいる。M検事はそういう取り調べ手法を用いて、暗に〈Sさんの本心を見抜いている〉ことを思い知らせようとした。
M検事のこのような一方的な決めつけは、Sさんに大きな心的ダメージを与えたことであろう。Sさんから見れば、M検事は自分を拘束する権力を持ち、しかもその取り調べ方は、無実の主張には耳を貸そうともせず、「嘘」と決め込んだ上で、あくまでも検察側が作った幼児殺害物語の細部を埋めることにしか関心を示そうとしないのである。
○物語りの作り方
M検事はそれ続けて、話題を現場検証の場面に移すわけだが、M検事はもう一度その話題を蒸し返す。くどい印象を与えるかもしれないが、次に「足利事件取り調べ録音テープ 8」の該当箇所を紹介しよう。先の引用と、この箇所を合わせて見るならば、刑事や検事がどんなふうに物語を作り、細部を埋めようとするか、その実態の一端が見えてくるはずである。
《引用》
S それで、その日は夜中まで自分はやっていない、やっていないと言いました。それで、もう…、何て言うんですか、あのー、夜中までやっていないって自分は言ってましたから、自分自身、これ以上、10日でも、20日でもやっていない、やっていないと言ってますと、なんか、もしかして殴られたり、けられたりするんじゃないかと思いました。それで自分がやったと話したんです。(涙声)
M 夜中になって?
S はい?
M 夜中に。
S そうです。それが(12月)1日すぎだと思いました…。
M それで?
S それでその日に、逮捕っていうんですか…、されました。
M 逮捕されたのは、夜中?
S そうです。(涙声)
M それでどうなったわけ?
S それで…、次の日から、そのー、自分、調べられたんですけど。……(沈黙・12秒)
M うん、それで? それで調べられたよね。それからどうなった?
S それから…、渡良瀬川ですね…。
M うん?
S 渡良瀬川ですか。あそこへ行って。河川敷ですか、あそこへ行ったり、それから…、その下の渡良瀬の河川敷から降りて行きまして、あの、Mちゃんが、ここへいたんだということを教わりました。
M うん、説明したね。
S ……(沈黙・4秒)
M それで?
S それで…、あのー、なんだか自分でもよく分からなくて、河川敷ずっと歩いてきまして、下へ、下へ降りてきまして、草場ですか、あそこ行って、警察の人とみんなで行ったんです。去年のあの時は草とかなかったと思うんですよね。それなのに、もう、そのMちゃんですか、その子がいた場所といいますか、分からなかったんです。……(沈黙・5秒)
M うん、それで?
S ……(沈黙・10秒)で、自分はその子がどこに、あのー、いたか分からなくて、それで警察からここにいたんだということを教わったわけです。(沈黙・6秒)
M それで?
S でも、お線香をあげまして……(沈黙・15秒)それで…、お線香をあげてから警察へ、あのー、帰って行ったわけなんですけど、その前に、なんですか、あの、確か、山清ですか。
M ヤマセ?
S はい、あのー、食料品の山清ですか、そこへ車で行きまして、ここで自分が品物を買ったり、コーヒーを買ったり、おにぎり買ったり、そこで買って、和泉町ですか、和泉町の家に行ったわけです。……(沈黙・5秒)
M 和泉町?
S 福居です。福居和泉町といいます。
M うん、それで?
S んで、そこから、あの…、車の中から指出して、それで、あそこですということで…。
M 教えたねー。はい。
S それで戻りまして。…………(沈黙・18秒)
M うん、それで?
S 戻って、で、警察行きまして、それで、また調べですか。……(沈黙・5秒)
M また調べがあったんだね。
S はい。
M 要するに、こう現場をね、河川敷を案内したり、また、そのー、君が立ち寄ったというところね、案内して連れて行ったりして、その後また警察の調べが始まったということね。それで?
S それで……(沈黙・7秒)それから、やはりなんて言うんですか、地図ですか、渡良瀬川の河川敷ですとか、それから、そのMちゃんがいました場所ですね、そこまでの地図ですか、書いたりしました。
M われわれ分かってるんだけどもね。
S 調書ですか、それ…にも書いていたと思うんですけども。……(沈黙・30秒)
○Sさんの行動に即して
以上のことを、Sさんの説明を前後を補いながら、Sさんの行動を整理するならば、以下のようになる。
① Sさんは野球をやっていたので、渡良瀬川の河川敷の景観にはある程度通じていた。
② 平成2(1990)年5月12日(土)、1時半すぎ幼稚園の仕事が終わって家に帰り、2時半ころ外出をし、田中橋を渡って山清食料品店で買い物をして、3時ちょっと過ぎ家に戻った。翌日の日曜日、10時頃に家を出て田中橋を渡ったところ、右側(東側)に人がいっぱい出ていて、日本テレビ(多分)の中継車も来ていた。「どうしたんだろう」と思ったが、事情は分からなかった。(「足利事件取り調べ録音テープ 8」。先の引用では省略した箇所)
③ それから1年半ほど経ち、平成3(1991)年の12月の日曜日(多分12月1日。引用者注)の朝、自宅に警察の人が来て、「今日何しに来たか分かっているな」と言い、Mちゃんの写真を見せた。Mちゃんの写真はパチンコ屋の看板に這ってあり、それを見たことがあるので、「パチンコ屋さんの前に張ってあった写真と同じだな」思った。(「足利事件取り調べ録音テープ 7」)
④ Sさんは警察で夜中まで取り調べられ、「やっていない」と否認を続けたが、「これ以上、10日でも、20日でもやっていない、やっていないと言ってますと、なんか、もしかして殴られたり、けられたりするんじゃないか」と恐怖に駆られ、自分がやったと話した(「恐怖」という言葉は「足利事件取り調べ録音テープ 10」。引用者注)。
⑤ 警察はSさんのこの「自白」を聞き、Sさんの身柄拘束を「逮捕」に切り替えた。
⑥ 次の日も取り調べは続き、Sさんは、現場検証の名目で渡良瀬川の河川敷まで連れて行かれたが、――そのバスでは、M検事がSさんのすぐ前の席に乗っていた、――冬枯れの景色に戸惑った。
⑦ 河川敷をずっと歩き、下へ、下へと降りて行き、草場のところで、警察から「Mちゃんが、ここにいたんだということを教わった」(太字は引用者)。その後Sさんは、Mちゃんの服を捨てたという場面を説明した。
⑧ そこで線香をあげ、警察にもどることになったが、その途中Sさんは山清食料品店で買い物をし、いったん自宅に寄ってから、警察にもどった。
⑨ 警察では再び取り調べが始まり、Sさんは渡良瀬川の河川敷や、Mちゃんがいたという場所の地図を書いた。
Sさんは日曜日の朝、何のことか分からないままに警察へ連行され、翌日(月曜日)にかかるくらいまでずっと取り調べを受けて、恐怖を覚え、ついに「自分がやった」と「自白」してしまった。
Sさんは多分、食事の時以外は執拗な質問責めにあったのだろう。こんなふうにやられれば、大抵の人間は心身ともに疲労困憊し、精神の安定を欠いてしまう。ひどいやり方だと思うが、私がもう一つ無関心でいられなかったのは、⑦の箇所である。
○「自分が言いたい言葉を相手の口に押し込む」
私は現場検証の実態には全く無知な人間だが、常識的に考えて、容疑者の供述の裏づけを取るために行う捜査方法の一つだろう。もしそうならば、警察は容疑者に予断を与えるような情報は伏せておき、まず容疑者に「現場」まで案内させ、犯行を行った場所なり、遺体や証拠物を隠した場所なりを指示させる。その上で、警察が調べておいた事実との整合性を検討したり、容疑者が指し示した場所に犯罪の証拠となる物が残っているか否かを調べるはずである。
ところが、この事件の場合、警察が「現場」と考える場所にSさんを案内し、「Mちゃんが、ここにいたんだ」と教えた。これはSさんの証言であるが、その時同行したM検事も、警察が「教えた」事実を否定していない。
まさにこれは、自分の言いたい言葉を相手の口に押し込んで、相手に言わせるという、卑劣な誘導尋問と言うべきだろう。
Sさんは何がなんだか分からないまま警察に連行されて、12時間以上も執拗に尋問され、心身共に疲労困憊した状態で、つい恐怖に駆られて、「自白」をしてしまった。「自白」をしてしまったからには、警察が言う「事実」を受け入れざるをえない。そういう心的状況の中にいるSさんを警察は「現場」まで連れて行き、「死体がここにあった」と教える。
このようにして警察は自分の側で作った物語を、Sさん自身の「記憶」にすり替えようとしたわけで、その辺の事情は、最初に紹介した「取り調べ」記録の、次の箇所でよく分かる。
《引用》
M で、検証した時にね。Mちゃんの服を捨てたという場面、君が説明したでしょう?
S はい。
M 最初はちょっと付近の様子が変わっててね。よく分からないと言って違うところ説明したっていうけれど、後で死体がここにあったんだと教えてもらってからは。
S はい。
M あ、じゃあ、捨てたのはここだと言って説明したでしょう?
S はい。
M 君が説明した場所については、誰かから教えてもらったというわけじゃないよね?
S え。教わってません。
M その場でね、死体がここにあったと教えてもらって、それだけ教えてもらってたよね。
S はい。
M じゃあ、どこなんだと言って、あ、じゃあ捨てたのここですと。
S はい。
M 説明したんだね。僕はそばで聞いていたんだけど。で、君が説明した場所というのは、そのすぐ下から、Mちゃんの下着が発見されてるんだよ。あんな詳しい場所まで新聞には出てなかったはずなんだけど。(太字は引用者)
要するにSさんは、Mちゃんの服を捨てた場所を指示するように求められて、初めは「附近の様子が変わって、よく分からない」と言い、いわば当てずっぽうにある場所を指し示した。しかしそこには何もなかった。警察から「死体がここにあったんだ」と教えられ、改めて「じゃあ、捨てたのはここだ」と指さした。M検事によれば、そのところからMちゃんの下着が発見された、という。
警察の誘導によってMちゃんの下着が「発見」されたのである。
○「地図」の問題
警察または検察のこのようなやり方は、「地図」の場合にも見られる。Sさんは渡良瀬川の土手でジョギングをしたり、河川敷の一画で野球をやったりして、それなりに渡良瀬川の河川敷の地形には通じていた。警察はそういうSさんを「現場」に連れて行って、Mちゃんの死体があった場所を教え、下着を捨てたという場所を指ささせ、さてその後に、Sさんに「地図」を書かせた。当然その「地図」は極めて正確であっただろう。だが、その「正確さ」は警察の誘導の結果であって、それ故警察はその「地図」をもってSさんが犯人である証拠とすることはできないはずであるが、Sさんによれば検察はその「地図」を調書に載せたのである。
○M検事の矛盾
ただ、以上のことだけでは、M検事の〈なぜSさんは新聞の記事にも載っていないような詳しいことを知っているのか〉という疑問に答えたことにはならない。
Sさん自身にしてみれば、「自分はそのへんだと一応あの、話してみたんです」としか言いようがないことだっただろう。
他方、M検事はその点こそ決定的な攻め所と判断したらしく、「堤防上でね、首絞めて運ぶ時に、斜面で1回下ろしたとか、説明したでしょう?」、「靴が脱げたなんて説明もしたでしょう?」、「そんな説明する必要はあったの?」と質問を重ね、Sさんが返答に詰まっていると見るや、またしても「なんで僕の目を見て言わないの? そういうこと、さっきから君は、僕の目を一度もみてないよ」と、人格非難を繰り返した。
それをもう一度Sさんの立場からするば、〈いったん「自白」をしてしまったからには、その内容を本当らしく見せかけるために、細部の嘘を重ねざるをえなかったのだ〉ということになるだろう。M検事の側からすれば、〈Sさんは犯人しか知らないような細かなことまで供述しているのだから、Sさんはクロなのだ〉という結論に持っていきたかったのだろう。
私の手元には『山梨日日新聞』の「足利事件取り調べ録音テープ」の1から12までしかない。それ故、上の問題に判断を下すことはむずかしいのだが、ただM検事の言うところにもおかしな点がないではない。
M検事の言うところによれば、警察がSさんに「死体がここにあったんだ」と教え、それを受けてSさんが、「じゃあ、捨てたのはここです」と言い、M検事によれば「そのすぐ下からMちゃんの下着が発見されているんだ」。
とするならば、死体があったという「ここ」と、下着が発見された「ここ」とは、それほど離れてはいなかった。事件が起きてから既に1年半が経ち、その間、警察は死体が遺棄されていた場所とその周辺を何回も、入念に調べたはずなのだが、Mちゃんの下着に気がつかなかった。Sさんに「じゃあ、捨てたのはここです」と言われて初めて気がついた。そんなことがあり得るだろうか。
それだけではない。その下着は1年半もの間、土に埋もれたか、あるいは地面に捨てられて雨ざらしになっていたわけで、おそらく原型を止めぬまでボロボロに腐蝕していたはずだが、警察はどうやってそれをMちゃんが身につけていたものと特定することができたのか。また、どうようにしてその下着からSさんの「体液」を検出することができたのか。どうも納得できない。
ただし、M検事の「発見されているんだ」という言い方は、別様に解釈することができる。それは〈警察は既に早くMちゃんの下着を発見して持ち去ったのだが、その発見場所とSさんは「ここ」と指した場所が一致したのだ〉という意味である。もしそうだとしても、このM検事の言葉には何の裏づけもない。なぜなら、警察が証拠物として持ち去っていたならば、その場所にMちゃんの下着があったことを裏づける何の証跡もなかったはずだからである。警察やM検事が自分たちの主張を裏づけるには、最低限度、Mちゃんの下着が発見された時の現状を写した写真をSさんに示す必要があっただろう。
おまけにM検事は「足利事件取り調べ録音テープ 12」で、先ほどSさんを問い詰めたのとは裏腹なことを語っていた。
《引用》
M Mちゃんの靴下は発見されているが、君は「はいていたかどうかは覚えていない」とずっと説明していた。怖くなったら認めてもいいように思うんだけど、「靴下は覚えていない」と説明しているんだよ。ぼくが調書を取った時に。
S 分かんない…。
M Mちゃんがはいていたパンツが1枚だったか、2枚だったかも君は事実と違う説明をしている。
S はい。
M パンツの中に草だったかな、入っていた。
S …。
M 分からなくなったにしても、自分の記憶通りに説明したんだと思っていたけど。
S …。
M はっきりしないか? ふっふっふっ。だけど少なくともね今、裁判所の出ている証拠ではそういうふうになっているわけだ。ま、またちょっとね、考えてもらいたいなと思ってはいるんだけどさ、その辺。
M検事は、先ほどは〈犯人でなければ知らないはずの細かいことまで、Sさんは供述した〉という意味のことをほのめかしていた。だがここでは、〈Sさんの供述は、犯人ならば当然しているはずの細かい事柄とは食い違っている〉事実を認めているのである。
どうも警察のやったことや、M検事の言うことには、あざとい作為が感じられる。
「足利事件」再審の判決は来月(3月)に出るらしいが、裁判官は警察や検事の責任をどう裁くだろうか。
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