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判決とテロル(3)

田口紀子裁判長の作為

○田口「判決文」における論理の逆立
 田口紀子裁判長は、寺嶋弘道被告が北海道教育委員会の公務員である事実に全く言及しなかったわけではい。田口紀子裁判長の「判決文」はA4版で25ページの分量だったが、1回だけ、次のような言い方をしていた。
《引用》
 
なお、原告は、被告の行為が地方公務員法や北海道職員の公務員倫理に関する条例等に違反する旨主張し、これによって、被告が文学館の業務を妨害したり、文学館に対する越権行為を行った旨の主張を行っているが、被告の行為によって、文学館の業務が妨害されたことがあったとしても、そのことをもって、原告に対する不法行為を認める理由とはならない(16~17p)

 「なお、原告は……」というような書き方は、「なおなお(尚尚)書き」とか、「おって(追而)書き」とかと呼び、主要な事項を述べた後、ついでに、補足的な事柄を言い足す場合に使う。手紙で言えば、「追伸」に当たる。田口紀子裁判長としては、寺嶋弘道被告が公務員である事実の問題は、その程度の事柄として軽く捌いてしまいたかったのであろう。

 しかしこの文章はなんだかおかしい。亀井志乃が「今年の1月3日はひどく寒かった」と言ったところ、「今年の冬は暖冬だったとされていることから、1月3日が寒かったと認める理由にはならない」とはぐらかす。そんな書き方だからである。
 
 そのはぐらかしを明らかにするために、まず、
被告の行為によって、文学館の業務が妨害されたことがあったとしても、そのことをもって、原告に対する不法行為を認める理由とはならない。」という後半の部分を整理してみよう。亀井志乃は〈寺嶋弘道学芸主幹が文学館の業務を妨害し、それは自分に対する不法行為だった〉と解釈できるような主張をしたことはなかった。そうではなくて、〈自分は寺嶋弘道学芸主幹から何度も業務妨害の嫌がらせを受けたが、寺嶋弘道学芸主幹の業務妨害の中には、道立文学館に駐在する道の学芸員の分限を越えた行為もあり、あるいは地方公務員法に違反する行為もあった〉と主張したのである。
 それに、田口紀子裁判長は
「被告の行為によって、文学館の業務が妨害されたことがあったとしても」という仮定法を取っているが、なぜそのことから、そのことをもって、原告に対する不法行為を認める理由とはならない。」という結論を導き出すことができるのか。
 駐在道職員の寺嶋弘道学芸主幹が、民間の財団法人北海道文学館が経営する文学館の業務を妨害したとすれば、それは公務員・寺嶋弘道学芸主幹の「不法行為」でなければならない。その「不法行為」の中には、財団の嘱託職員である亀井志乃に対する業務妨害も含まれているかも知れないではないか。その可能性は、田口紀子裁判長の仮定法をもってしても、否定できないはずである。
 
 そのことを確認した上で、
なお、原告は、被告の行為が地方公務員法や北海道職員の公務員倫理に関する条例等に違反する旨主張し、これによって、被告が文学館の業務を妨害したり、文学館に対する越権行為を行った旨の主張を行っているが、」という前半の文章にもどってみよう。亀井志乃はこのようなことを主張したことはなかった。
 亀井志乃の主張に近づくためには、「これによって」の前と後ろを入れ替える必要がある。〈亀井志乃は、寺嶋弘道学芸主幹が文学館の業務を妨害したり、文学館に対する越権行為を行った旨を指摘し、これによって、寺嶋弘道学芸主幹の行為が地方公務員法や北海道職員の公務員倫理に関する条例等に違反する旨の主張をした〉。このように順序を変えるならば、亀井志乃が主張してきたことにかなり近い(必ずしも正確ではないが)、と言うことができるだろう。
 
 田口紀子裁判長の文章は、前提と結論がひっくり返っているのである。
 
○亀井志乃の原文
 ところで、いま私は、「亀井志乃が主張してきたことにかなり近い(必ずしも正確ではないが)」という言い方をした。なぜそういう「含み」をもたせた言い方をしたか。
 それは、「判決文」の中で、田口紀子裁判証は、ほぼ全面にわたって亀井志乃の「準備書面」をリライトしているのだが、そのリライトの仕方が「当たらずといえども遠からず」というよりは、「遠からずといえども当たらず」という、微妙にポイントをずらすやり方だった。そうすることによって、田口紀子裁判長は非常に巧妙に亀井志乃の主張を無化、あるいは無効化して、寺嶋弘道被告の言動に関する法的な判断を回避し、結局は
「原告に対する不法行為を認める理由にはならない。」という結論を引き出していたからである。

 分かりやすい例を挙げてみよう。
 亀井志乃は平成20年5月3日付の「準備書面」で、次のように述べている。

(8)平成18年9月26日(火曜日)
(a)被害の事実(甲32号証を参照のこと)
 原告は事務室における朝の打合せ会で、「出張予定(亀井)」(甲33号証)と題した予定表を配布し、「人生を奏でる二組のデュオ」展の準備に関係する今後の出張予定とおおよその足取りを説明しようとした。すると、被告がそれを遮って、「あ、そのことについては、このあと打合せ会をやるから」と言ったため、朝の打合せ会の直後、原告と被告と川崎業務課長の3人で、事務室の来客ソファーの所で話し合った。(この日の朝の打合せ会は出席者が少なく、学芸班の原告とO司書と被告、及び業務課の川崎課長のみであった)。
 原告が「出張予定(亀井)」の説明を終えると、原告は「それじゃあ、あとで、自分の展覧会についてどのくらいの支出を考えているか、ちょっとさ、まとめて出して」と言った。原告は、念のために、あらかじめ「展覧会支出予定」(甲34号証)という文書を作って来ていたので、「それでは、今、一応そのことについて作ったものを手元に持っているので、コピーしてお渡ししますね」と言い、事務室内のコピー機の方に立っていった。
 すると、被告が突然、「それは、打合せの後でしょう!」と声を荒げた原告はその意味が分からず、「どこと打合せした後なんですか?」と訊いた。被告は「相手側とどんな話になるか、決めてからでしょう!」と、更に語気を強めた。原告は、「じゃ、これはまだいいんですか?」と、コピーをやめようとした。ところが被告は、「よくないよ、いいんでしょう!」と怒鳴った。原告は、被告が一体何を言いたいのか、戸惑っていると、被告は「だから、相手先と打合せしてからって言ったら、行かなきゃならないでしょう! だから、今コピーしていいんだよ!」と、更に声を強めて、辻褄の合わないことを言った
 その後、原告がコピーを渡すと、被告はやや落ち着きを取り戻し、原告が主担当の企画展について、「この展覧会には、予算はあまりついていないんだよね」、「他の展覧会との間で、金額を調整しないとならない」、「本州へ行く出張旅費なんて、全然考えられていなかったしね」と、原告の予算を削り、原告の出張を制限する意味の発言を続けた。これらの点については、川崎業務課長が「まあ、この範囲内(150万円以内)で収まるなら、これでいいでしょう」と言い、打合せは終了した
(17~18p。下線は引用者)

 このブログをずっと読んで下さった方は、この箇所の記憶があると思う。「北海道文学館のたくらみ(46)」でこの箇所と一緒に、10月31日の公判で太田三夫弁護士が行った尋問を引用し、太田三夫弁護士が亀井志乃に対してどんなにあざとい言葉の駆け引きを仕掛けていたかを指摘しておいたからである。
 
○田口紀子裁判長による作為的なリライト
 その太田弁護士の駆け引きがどんな結果を招いたか。その点については、この回の最後にふれることにして、まず田口紀子裁判長が、その「判決文」の中で、上記の文章をどのようにリライトしていたかを見ておこう。
《引用》

(8)原告は、平成18年9月26日、朝の打合せ会で、「出張予定(亀井)」と題した予定表を配布し、デュオ展の準備に関係する今後の出張予定等を説明しようとした。すると、被告がそれを遮って、「そのことについては、このあと打合せ会をやるから」と言い、朝の打合せ会の直後、原告と被告と川崎の3人で話し合うことになった。同話合いにおいて、原告が出張予定の説明を終えると、原告は「それじゃあ、あとで、自分の展覧会についてどのくらいの支出を考えているか、ちょっとさ、まとめて出して。」と言った。原告は、あらかじめ「展覧会支出予定」という文書を作ってきていたことから、「それでは、今、一応そのことについて作ったものを手元に持っているので、コピーしてお渡ししますね。」と言い、事務室内のコピー機の方に行ったところ、被告は「それは、打合せの後でしょう。」と遮りさらに原告とのやりとりの後、被告は、原告が主担当の企画展について、「この展覧会には、予算はあまりついていないんだよね」、「他の展覧会との間で、金額を調整しないとならない」、「本州へ行く出張旅費なんて、全然考えられていなかったしね」と話した。川崎が「この範囲内(150万円以内)で収まるなら、これでいいでしょう」と言い、話合いは終了した。(甲32の1ないし3、原告本人、被告本人(10P。下線は引用者)

 田口紀子裁判長はこのように、亀井志乃の原文における下線の箇所を削ってしまったわけだが、較べて分かるように、その箇所は亀井志乃が寺嶋弘道被告の違法性を主張する上で根拠となるべき、肝心要の箇所であった。つまり、田口紀子裁判長は寺嶋弘道被告の違法性が問われる、肝心な箇所を抹消してしまったのである。

○寺嶋弘道被告の偽証隠し
 理由は2つ考えられる。
 その1つは、寺嶋弘道被告を、偽証性の問題から解放し、救い出してやることである。亀井志乃は「準備書面(Ⅱ)―2」で、寺嶋弘道被告の「陳述書」における虚偽の記述を20ヵ所以上も指摘し、「最終準備書面」では10月31日の公判における寺嶋弘道被告の証言から少なく見積もっても、10ヵ所は確実に偽証と言える発言を指摘した。ところが田口紀子裁判長はそれらを個別に検討することなく、言わば十把一絡げに
「被告は、本件訴訟活動の一環として、準備書面、陳述書等を提出したと認められ、被告に正当な訴訟活動として許容される範囲を逸脱した行為があったとは認められない。また、被告に虚偽の陳述があったとまで認めるに足りる証拠はない。よって、原告の主張は理由がない(25p)と切り捨ててしまった。
 要するに、10月31日の法廷における寺嶋弘道の偽証に関する亀井志乃の指摘を黙殺し、寺嶋弘道被告の「準備書面」「陳述書」のみを取り上げて、その中に見られる虚偽の記述に関しては、不問に附してしまったのである。
 田口紀子裁判長にとって、このような作為を行う上でも、先に引用した亀井志乃の「陳述書における下線の箇所ははなはだ都合が悪い。この箇所に言及すれば、亀井志乃が「準備書面(Ⅱ)―2」や「最終準備書面」で主張した事柄を取り上げざるをえなくなるからである。下線の箇所を抹消したのは、そういう問題を回避するためであったのだろう。

○法律問題回避の手口
 もう一つ考えられる理由は、次のような亀井志乃の主張をやり過ごしてしまうことであった。
《引用》

(b)違法性
イ、被告は、自分のほうから打合せ会を申し出ながら、原告に対して一方的に矛盾した指示を次々と出し、原告が対応に戸惑っていると、あたかも原告が呑み込みの悪い人間であるかのように、苛立った態度で怒鳴りつけた。これは原告の能力を貶め、名誉を毀損した、「民法」第710条に該当する、人格権侵害の違法行為である
(18p)

 ちなみに「民法」第709条(不法行為による損害賠償)」は、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」となっており、第710条(財産以外の損害の賠償)はそれを受けて、他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」となっている。
  
 それ故、田口裁判長が行うべきことは、あの平成18年9月26日の場面における、寺嶋弘道被告の下線部のごとき言動が、「民法」第710条の
「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合」として評価出来るか否か、それについて判断を下すことだったはずである。
  ところが田口紀子裁判長は、亀井志乃の原文をリライトするに当たって、原文の下線部を、あたかも何事もなかったかのように
「原告とのやりとりの後」と、さりげなく簡略化し、次のような判決を下した。
 《引用》

(ク)原告は、平成18年9月26日、被告との出張予定についてのやりとりにおいて、被告が、原告の能力を貶め、名誉を毀損する発言をし、また、原告が主担当の企画展に割り当てられた予算の執行に容喙し、本州へ出張することを制限して、業務妨害した旨主張する。しかしながら、被告の言動は、原告と被告のみでなく、川崎も同席していた中での、業務に関する話し合いであり、話合いの結果、川崎は被告の意見ではなく、原告の計画を受け入れて、話し合いが終了しているのであるから、名誉ないし名誉感情が毀損された、また、業務を妨害された旨の原告の主張は理由がない(20P)

 分かるように、田口裁判長は亀井志乃の原文を先ほどのようにリライトした上で、原告は、平成18年9月26日、被告との出張予定についてのやりとりにおいて、被告が、原告の能力を貶め、名誉を毀損する発言をした……旨主張する。」と、亀井志乃の主張を記述した。つまり、亀井志乃がなぜそのように主張したかの根拠を示さず、ただ亀井志乃の主張だけを紹介するというやり方を取ったわけである。田口紀子裁判長の「判決文」しか読まない人にしれみれば、〈なんで亀井志乃という女性は、自分が「展覧会支出予定」のコピーを取って手渡そうとしたところ、寺嶋弘道学芸主幹が「それは、打合せの後でしょう。」と遮った、という程度のことで、名誉を毀損されたなどと考えたのか〉と、そう疑問に思うだろう。
 田口紀子裁判長はこのように、亀井志乃の主張に対する疑問を喚起し、亀井志乃が言うことにはまともな根拠がないと思わせる操作を施す。そういう作為によって、
名誉ないし名誉感情が毀損された、また、業務を妨害された旨の原告の主張は理由がない。」という自分の判決を正当化しようとしたのである。

○改ざんと著作権侵害の疑い
 私が長年たずさわってきた文学評論や文学研究の世界で、もしこのような操作を施して自分の判断を正当化しようと目論む人間がいたとすれば、当然その原著者から「それは原文の改ざんだ」という抗議が出るだろう。場合によっては「著作権の侵害」の訴えに発展するかもしれない。
 
 では、もし仮に亀井志乃がこの「判決文」の書き方に抗議を申し込んだらどうなるだろう。「当該判決文は、原告の記述の要点を摘記したものであることから、原文の改ざんと認めることはできず、諸作権の侵害と認めるに足りる証拠はない」。
 そんな切り口上の返答で、抗議は却下されてしまいそうだな。何だか、あの鹿爪らしい口調まで想像されて、つい私はクスクス笑ってしまったが、これまでの経験から見て、弁護士や裁判官の間では、私たちが他人の言語表現を尊重する市民的ルールが通用しないらしい。そこから「法と言語」の問題や「裁判と言語行為」の問題が起こってくるわけで、いずれはそれらの問題に踏み込むことになるだろう。

○田口紀子裁判長によるポイント削除
 それはそれとして、もう一度、特に後半の部分に注目しながら、亀井志乃の原文と、田口紀子裁判長のリライトを読み比べてもらいたい。亀井志乃の原文から、
原告の予算を削り、原告の出張を制限する意味の発言を続けた」という1文が抜き取られていることに気がつくだろう。
 この1文は、亀井志乃が次のように主張する、重要なポイントだったのである。
《引用》

ロ、被告は、財団の嘱託である原告が主担当の企画展に割り当てられた予算の執行に容喙した。これは被告が、北海道教育委員会から駐在道職員に指示された業務事項を逸脱して原告の権限を侵すことであり、「北海道職員の公務員倫理に関する条例」第3条~第7条に反し、「地方公務員法」第29条に問われるべき越権行為であり、業務妨害の違法行為である。
ハ、被告は、財団の嘱託である原告が自分の企画展に割り当てられた予算の範囲内で本州へ出張することに干渉し、なぜ本州への出張が必要かを確かめることなく、出張を制限しようとした。これは被告が、北海道教育委員会から駐在道職員に指示された業務事項を逸脱して原告の業務に干渉したことにより、「北海道職員の公務員倫理に関する条例」第3条~第7条に反し、「地方公務員法」第29条に問われるべき業務妨害の違法行為である(18p)

 これだけでは、ちょっと分かりにくい点があるかもしれない。
 その点を補足するならば、亀井志乃は「(4)平成18年5月12日(金曜日)」の項で、次のような意味の指摘をしている。〈亀井志乃は特別企画展「啄木展」の副担当だったが、寺嶋弘道学芸主幹が何のことわりもなしに「啄木展」に手を出し、亀井志乃を疎外して、主担当のS社会教育主事と勝手にことを進めてしまった。これは亀井志乃の業務を奪う、業務妨害の行為である〉と。
 しかもこれは、単に〈同僚の一人が女性職員の仕事に手を出した〉というような単純な業務上のトラブルではない。亀井志乃はその専門的な能力を買われて財団法人北海道文学館の業務を請け負う契約を結んだ嘱託職員、つまり非正規職員だった。その契約上の仕事を、財団の職員ではなく北海道教育委員会の職員である寺嶋弘道学芸主幹が無断、勝手に横から手を出して、奪ってしまったのである。
 亀井志乃は財団と契約した仕事の実行を阻まれた。現象的に見れば、亀井志乃は契約した仕事の一部を果たさなかったことになる。財団はそのことを理由に、亀井志乃に対して、次年度の契約をキャンセルするかもしれない。その意味では生活権の侵害に至りかねない妨害でもあったのである。
 おまけに、寺嶋弘道学芸主幹はS社会教育主事とことを進めて、年度当初に「啄木展」に割り当てられていた予算を大幅に超過してしまった。彼はその穴埋めに、亀井志乃が主担当の企画展「二組のデュオ展」の予算を削り取ろうとした。
 亀井志乃はもちろんこのことについても、業務妨害の違法行為と主張したわけだが、以上のような文脈のもとで、上の引用文を読むならば、
原告の予算を削り、原告の出張を制限する意味の発言を続けた」という1文がいかに重要な意味を担っているか、その重さがよく分かるだろう。

○田口紀子裁判長が虚構した「学芸班」の伏線的な意味
 ところが、田口紀子裁判長はこの重要な1文を削ってしまい、先ほども引用したように、

しかしながら、被告の言動は、原告と被告のみでなく、川崎も同席していた中での、業務に関する話し合いであり、話合いの結果、川崎は被告の意見ではなく、原告の計画を受け入れて、話し合いは終了しているのであるから、名誉ないし名誉感情が毀損された、また、業務を妨害された旨の原告の主張は理由がない。」20P)という判決を下したのである。

 私はこれを読んで、まるでスカ屁みたいな文章だな、と思った。川崎業務課長がその場に同席していたからと言って、寺嶋弘道被告が亀井志乃に支離滅裂、辻褄の合わない言いがかりをつけた事実が消えるわけではあるまい。
 確かに川崎業務課長の取りなしで、その場は収まったが、しかしその間、寺嶋弘道学芸主幹が
「原告の予算を削り、原告の出張を制限する意味の発言を続けた」事実を帳消しにする理由にはならないはずである。

 この連載の初め(「判決とテロル(1)」)に指摘しておいたように、田口紀子裁判長は、原告が研究員として所属する文学館の業務課には、文学館の職員である課長、主査、主任、主事が配置され、業務課の中にさらに学芸班が設けられ、学芸班には、学芸員、研究員、司書が置かれるとともに、北海道教育委員会から派遣された学芸主幹(被告)、社会教育主事、学芸員の3名も配置された。(「判決文」3p)と、現実には存在しなかった組織を虚構していた。しかも田口紀子裁判長は、この虚構の「学芸班」を理由として、寺嶋弘道学芸主幹と亀井志乃研究員との関係は、同一組織内の上司と部下の関係だったと、事実を歪める判断を下していた。
 その動機は、以上の経緯から見ても、かなり明らかになったと言えるだろう。
 田口紀子裁判長はこの虚構の「学芸班」を楯にとって、〈要するに寺嶋弘道被告が亀井志乃副担当の「啄木展」に手を出したのは、上司と部下との間に起こった事柄であって、業務妨害だとか、越権行為だとかには当たらない〉と処理してしまおうとしたのである。 
 先の判決において、わざわざ
「川崎も同席していた」事実を挙げていたのも、同様な意図に基づく強調であって、〈その場には、「学芸班(虚構の)が属する業務課の川崎課長が同席していた。その下での話し合いであるから、寺嶋弘道学芸主幹が亀井志乃の出張予定に容喙し、制限を加えようとしたと聞こえる発言も、実際は上司が部下に業務上の意見を述べたにすぎなかったのだ〉。おそらく田口紀子裁判長は、そういう口実を用意しながら、業務を妨害された旨の原告の主張は理由がない。」という判決を下したのであろう。

○田口紀子裁判長における「虚偽」「偽証」許容の論理
 ちなみに、平成18年9月26日の寺嶋弘道学芸主幹の支離滅裂な言動について、太田三夫弁護士は〈これは何とか取り繕ってやらねば〉と考えたのだろう。10月31日の公判における本人尋問で、亀井志乃に
「こういうことを寺嶋さんは言ったんではないの。どこかに行くという連絡を、その相手方と先に連絡を取っちゃって、その後寺嶋さんたちにここへ行きますよと言ったって、それはもう行くしかないでしょうと。それを我々としては、もう駄目だということは言えないんですよと。だから、事前に我々に話をしてくださいと、そういうことを言ったんではないの、9月26日。」と質問をした。
 言わば「鎌を掛けた」わけだが、

亀井志乃:いいえ、そのようにはおっしゃいませんでした。
太田弁護士:
そのように理解できませんか。
亀井志乃:
理解できるも何も、そのような文脈でそのような言葉でおっしゃらなかったからです。
太田弁護士:
でも、あなたの書いていること、文脈どおり読めたら、私はすぐそういうふうに理解したけど。
亀井志乃:
ああ、どのようでしょうか。お教えいただけますか(原告調書27p)

と、逆に亀井志乃から質問をされ、形勢不利と見たのか、太田弁護士は「それから、10月28日のことをちょっと聞きますね。」と話題を変え、返答を避けてしまった。
 しかし、太田弁護士はまだ未練があったらしく、寺嶋弘道被告にも同じような質問をし、
そうです。相手に言ってしまったんなら、それを今更行けなくなりましたということにはならいという意味です。」という返事を聞いて、我が意を得たりとばかりに、逆に言えば、だからこそ事前に話をしてくれと、こういう話になるんですな。」と念を押していた(被告調書12p)。
 
 だが、太田弁護士苦心のクサいお芝居も、亀井志乃の「最終準備書面」で綿密に分析され、
この証言は前年度(平成17年度)3月の理事会決定をまったく無視した偽証であり、非常識きわまりない話です。」(「最終準備書面」58~59p)と、その虚偽を指摘されてしまった。それだけでなく、このような(太田と寺嶋が相づちを打ち合ったような)手順では、相手側から『もう貸出には先約があります』『今お貸しできる状況にはありません』等と断られたら、そこで企画は白紙になってしまいます。また、仮に相手側に会っていただけるにしても、先に相手の都合も聞かずにこちらの日程を切り出すというのは、ビジネス全般の常識から見てもきわめて無礼な行為と言えるでしょう。この意味で、被告の証言はリアリティがなく、偽りに満ちている上に、被告の社会常識をも疑わせるような内容の証言だと言えます。(同前60p。「北海道文学館のたくらみ(53)」)と、もう一つの虚偽までも暴かれてしまった。     
 他方、太田弁護士の「鎌かけ」は、
以上の点から見て、被告代理人が虚偽の発言をしたことは明らかです。しかも被告代理人は、明らかに自分が虚偽の発言をしていることを意識していました(同前93p、下線は原文のママ。「北海道文学館のたくらみ(56)」)と、その虚偽を証明されてしまった。
 
 要するに太田弁護士も、寺嶋弘道被告も嘘を吐いていたわけだが、しかしこれらの虚偽に関しても、田口紀子裁判長の判決はこうであった。
《引用》
 
(2) 争点(2)(裁判の過程において被告の不法行為があったか)について
 上記のとおり、被告には不法行為責任は認められないところ、被告は、本件の訴訟活動の一環として、準備書面、陳述書等を提出したと認められ、被告に正当な訴訟活動として許容される範囲を逸脱した行為があったとは認められない。また、被告に虚偽の証言があったとまで認めるに足りる証拠はない。よって、原告の主張には理由がない
(25p)
 
 果たして
「被告には不法行為責任は認められない」と断定できるかどうか、この点はこれからも追求することになるだろう。
 だからその点はひとまず措いておくが、確かに準備書面を書き、陳述書を提出すること自体は、正当な訴訟活動の一環として許容されなければならない。しかし、それだからと言って、寺嶋弘道被告が「準備書面(2)」や「陳述書」に虚偽を書き連ねたことまでが許容されるとは考えられない。亀井志乃は「準備書面(Ⅱ)―1」や「準備書面(Ⅱ)―2」で、寺嶋弘道被告の虚偽の陳述を20点以上も指摘した。しかも、その指摘を裏づける証拠物を100点も添えて。
 それに対する被告の対応は、
被告は、原告提出にかかる平成20年5月14日付準備書面(Ⅱ)-1.2.3に対しては、本件訴訟における争点との関係を考え、反論の準備書面を提出する予定はありません。」(平成20年7月4日付「事務連絡書」)ということだった。つまり、反論を放棄してしまったわけで、換言すれば「正当な訴訟活動」を放棄したことになる。

 にもかかわらず、田口紀子裁判長は「被告に虚偽の証言があったとまで認めるに足りる証拠はない。」と断定する。そうであるならば、田口紀子裁判長は、被告の反論放棄が「正当な訴訟活動」である理由を説明し、かつ、亀井志乃が寺嶋弘道被告の陳述における虚偽と指摘した事柄について、被告に虚偽の証言があったとまで認めるに足りる証拠はない」と判断する根拠を示さなければなるまい。
 だが、田口紀子裁判長はその最も大切な問題については、何もふれていない。知らぬ顔の半兵衛をきめこんでしまったのである。これではまるで、寺嶋弘道被告の言いたい放題の嘘までも、
正当な訴訟活動」と大目に見て、許容しているようなものであろう。

○田口紀子裁判長の責任
 亀井志乃が寺嶋弘道被告の「準備書面(2)」や「陳述書」における虚偽の記述、――それと併せて平原一良副館長の「陳述書」における虚偽の記述――を指摘したのは、もちろん彼らの偽証を証明するためであったが、それだけではない。その虚偽の記述が、亀井志乃の業務態度や性格を貶め、名誉を傷つける、人格権の侵害と密接に結びついていたからである。
 この人格権の侵害は、田口紀子裁判長が責任をもって主催する裁判の過程で起こった事件である。田口紀子裁判長としては、自分が虚構した業務課「学芸班」という組織論で処理したつもりかもしれない。だが、この事件はその組織論には解消できない、全く別個な人格権侵害の事件であった。何故かと言えば、まさにこれは田口紀子裁判長の責任範囲の中で起こった事件であり、この時点における亀井志乃と寺嶋弘道被告とは如何なる意味でも組織関係を持っていなかったからである。その意味で、田口紀子裁判長の責任は極めて大きい。
 ところが田口紀子裁判長は、
「(2) 争点(2)(裁判の過程において被告の不法行為があったか)について」という項目を立てたにもかかわらず、寺嶋弘道被告の虚偽の陳述の問題にのみ争点を絞って、被告に虚偽の証言があったとまで認めるに足りる証拠はない」と、寺嶋弘道被告の虚偽を放任する判決を下した。しかも、裁判の過程で起こった人格権侵害(セカンド・ハラスメント)の問題は黙殺してしまった。本来的に問われるべき「被告の不法行為」については、これをパスしてしまったのである。
 これは羊頭狗肉の判決というしかなく、判決の名に値しない。
 田口紀子裁判長は自分が主催する裁判の中で起こった人格権侵害の事件から目をそらし、自己の責任を回避した、と批判されても仕方がないであろう。

 それに加えて、田口紀子裁判長は、10月31日の本人尋問における寺嶋弘道被告の偽証に関しては、言及することすらしなかった。これも不問に付してしまったのである。
 
 田口紀子裁判長は本人尋問を始めるに際して、亀井志乃原告に対しても、寺嶋弘道被告に対しても、「真実のみを述べるように。偽証を行った場合は、科料が課されることがあります」という意味のことを告げ、「宣誓書」に署名をさせた。裁判所の『速記録』にも、その表紙に
「裁判長(官)が、宣誓の趣旨を説明し、本人が虚偽の陳述をした場合の制裁を告げ、別紙宣誓書を読み上げさせてその誓いをさせた。」とある。このことはどうなったのか。田口紀子裁判長は自分が告げたことを食言し、みずからの責任を果たさなかったことになるのではないか。

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コメント

「情報?(こんなの情報って言えるのか?そもそも)」のたれながしテロ(執筆で行う暴力)ですね…。このサイトじたいオカシイのではないですか…?。。

しかも美術館博物館施設の運営にかかわってらっしゃる方がこんなことして…ご自身はどう思われているのでしょうか…。

亀井さんって「小樽文学館」の館長さんなんですよね…(北海道の子会社??よくわかりませんが)子会社の社長が本社の誹謗中傷?って凄いですよね…。小樽ってそんなに偉いんだ(感心します)…な訳ないと思うけど。。

私が貴社(小樽文学館)の従業員だとしたらこんな上司は嫌です。(外部だろうが内部だろうがその「会社の名前」を使用して生きているる以上…同僚?と思わざるをえません)。

美術館博物館の「館長」として働いている人が、よその施設とはいえ、その施設の人の話を赤裸々に(よく読むと、このサイトに記載されている名前の人たちに「許可」もとっていないなようですし)書きまくっている…。


恥ずかしいと思うし、貴社(小樽文学館)にも非正規従業員はいらっしゃらないのでしょうか…?

その人たちに聞けばいいと思います。このままこの「サイト」に色んなことを書くことを「どう思ってるのか?」…って

たぶん「答えられない」と思いますよ。
聞かれて…自分も逆らうと「解雇」されると思ってしまうから…。それが非正規ということの現実だし「部下(内部とか外部とかは別)」のです。

非正規従業員が「解雇」という不安になる文字からなかなか逃れることができないのはやはりひとつの現実です。

人の批判や心配をしているヒマがあったら、貴社(小樽文学館)の従業員の方や、貴社(小樽文学館)の情報をもっと発信してほうが、よいのではないでしょうか…。


このブログ?ホームページにはこんなにたくさんの情報(別に客として聞きたいとは思わないいらない内容の文章)が載っていますが、、

かんじんのご自身の職場【小樽文学館】のホームページには「な~んにも情報がない」ですよね。。展覧会のお知らせくらいしかないです…。


なので、なんの説得力もありません。


亀井さんがかかわっているのだとしたらご自身の職場のことを少し心配されてはいかがでしょう…?今は観光シーズンですし、、お客の取り合いならわかるけど…


このサイトでは一方的に他者(ここでいう小樽文学館?北海道立文学館?北海道?正規の北海道?や小樽文学館の従業員)を「傷つけている」ように思いますよ。

館長さんって何も指示したり命令したりしないんですか…?


「指示・命令」を強制されるのは幼稚園や保育園にはいっている3歳は難しいかもしれませんが5歳の子どもでも理解できる話です。


このサイトでは「指示・依頼・命令」は従業員が嫌だと思ってら「守らなくていい」という子どもじみた話ですよね…。


私は非正規従業員ですので、このサイトに書いてあることが「非正規従業員」は馬鹿だと思われるんじゃぁないか…と思ってしまい、ついコメントしていますが、、、

それと、このサイトに書いてあるご自身の「娘」さん?の話している?(取材記事?本人代筆?内部情報が赤裸々すぎてとても外部?の人間が執筆しているとは思えない)内容はどれを見ていても正当性があるように記載されてはいますが、、日本の国で「従業員」として働いている人間には日常茶飯事なことばかり…だとお思いにはならないのでしょうか?


学芸員だかなんだかわかりませんが、研究するのがお仕事ですか…?たしか水族館みたいなところにいる人も学芸員?ですよね。。


(そもその非正規の研究員ってそんなに偉くないと思うけど、けっこう偉そうなコメントばかりが書いてあって娘さんの当時の「身分」からは想像も出来ないようなどうしようもない「ものいい」だったりしていると思います)


誰かのことが「嫌い」だから
「言うことを聞かない」のが正当だ!と


本当にそれが「正義?で真実だ!」というのなら、今私が非正規従業員で働いていてまわりにいる職場・社会・国家???全てが「敵」になる…ということが分かったくらいでしょうか…。


以上長々書きましたが、、、このサイトに書かれている色々な話には賛同できませんし、参考になりません。非正規従業員が馬鹿だと思われるだけなのでたいがいにしていただきたいです。では。

投稿: あちこちで非正規従業員 | 2009年8月12日 (水) 11時01分

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