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マス・メディアの見え方(2)

国連というピッチ
〇北京政府の手詰まり
 相変わらず私は、北朝鮮のミサイル発射問題については、新聞が何を言っているか、知りたい気にもなれないのだが、一昨日(7月11日)、健康診断のため、近所の病院へ行ったところ、待合室にスポーツ紙が一紙置いてあった。しかし、サッカーW杯の決勝戦におけるジダンの頭突き問題が紙面の大半を占め、国際問題の記事はほとんどなかった。案外これが、日本の人の正直な関心なのかもしれない。

 私の関心もそれと大差ないわけだが、今日(13日)の午後7時までの時点で言えば、中華人民共和国の北京政府は手詰まりになっているらしい。
 日本とアメリカが国連の安保理に制裁決議を提案し、10日(NY時間)に採決されるはずだった。が、拒否権を持つ北京政府とロシアが難色を示し、北京政府が説得を名目に武大偉外務次官を北朝鮮に派遣したため、安保理は採決を延期した。
 しかし、それから3日経った今日になっても、武大偉の説得が功を奏した気配は全くない。北京に入っていたアメリカのヒル国務次官補がインターヴュに答えたところによれば、「北朝鮮が6カ国協議に復帰する兆しはない」。
つまり国際社会が誇大に評価し、北京政府もそう見せかけていた、北京政府の北朝鮮に対する「影響力」は、その実態を疑われても仕方がない結果になってしまったのである。

 多分その非力さを取り繕うため、北京政府はロシアと共同して、制裁条項を含まない決議案を提案することにした。北京政府は以前から、〈厳しい姿勢で臨んでも、北朝鮮の態度を硬化させるだけだ〉と制裁決議に難色を示し、「議長声明」案を提唱していた。今回も同じ理由で「制裁なし決議」案を持ち出して、日本やアメリカの提唱する「制裁決議」を骨抜きにしようとしたのだろう。が、実はこういう形で北朝鮮に恩を売らねばならないほど、北朝鮮に追いつめられているのである。

 議長を務めるフランスの国連大使は「議長声明」案に色気を見せ、〈まず「議長声明」を。それで効果がなければ、「制裁決議」を〉という二段階方式を案出していたらしい。
しかし、誰がどういう根拠に基づいて「効果なし」と判断するか。その条件が盛り込まれないならば、事態は有耶無耶のうちに先送りされる結果に終わりかねない。フランスの狙いがそこにあったとすれば、北京政府の「制裁なし決議」案は、フランスにとっては渡りに船だろう。
 何だか三流高校の職員会議みたいになってきたな。
 フランスがせせり出てくると、大抵がそうなってしまう。
 
〇北京政府の失うもの。
 サッカーのW杯で、日本は1敗1分、さあ残るブラジル戦を、どう戦うか。それがホットな話題となった時、テレビのニュース・キャスターやコメンテーターも、日本の選手も口を揃えて、「もうここまで来れば、失うものはなにもない。思い切ってぶつかるだけだ」。
 〈当って砕けろ!! 負けてもともとだ〉と言いたいところを、こんなふうに取り繕ったのだろうが、「それじゃあ、初戦のオーストラリア戦はまだ何か〈失うもの〉を持っていたワケ?」。そういう皮肉が、思わず出そうになった。
 自分たちを代表する選手に、こんな空元気な戦いをしてもらいたくなかったからである。

 だが、それはそれとして、北朝鮮との関係で言えば、仮に北朝鮮が態度を硬化させたとしても、日本が失うものはほとんどない。アメリカも同様だと思う。逆に北京政府の失うものは、極めて大きいだろう。
 既に北京政府の「影響力」は〈どうやら虚像らしい〉弱みを曝露してしまったが、北京政府は北朝鮮に多くの権利、権益を持っている。それをちらつかせて強圧をかけようとすれば、北朝鮮はロシアとの同盟関係を選択しかねない。
 ロシアはウラジボストクの近海にミサイルを落とされ、一応ムッとして見せたが、北京政府の「制裁=態度硬化」論に同調してきた。北朝鮮に対する影響力を、北京政府に独占させるわけにはゆかないからである。
 そういうせめぎ合いの下、北京政府は北朝鮮に恩を売って、自分の優位性を確保したいのだろう。
 
 それだけでなく、万が一北朝鮮の共産党独裁政権が崩壊することになれば、北京政府は受けるダメージは計り知れないほど大きい。自分の「影響」下にあった(はずの)北朝鮮の共産党独裁政権を失う。これは、北京政府という共産党独裁政権が、東アジアで孤立してしまうことを意味する。
  もしそうなれば、中華人民共和国のなかに封じ込めていた「辺境」少数民族に対する支配力や、カンシー・チワン(広西壮)族自治区や、チベット(西蔵)自治区、シンチャン・ウィグル(新疆維吾爾)自治区、ニンシア・ホイ(寧夏回)族自治区、内モンゴル(内蒙古)自治区などの「自治区」に対する影響力の低下を惹き起こしかねない。
東ドイツの崩壊に連動してソ連邦の崩壊が起った。それと同じ事態が起らないとも限らないのである。

〇国連というピッチ
 中華人民共和国が崩壊して、幾つかの独立国に別れたとしよう。もしそうなれば、たとえ北京を中心に共産党独裁政権の国が存在したとしても、その国が国連で常任理事国であり得る正統性が揺らいでしまう。
 アメリカが言う「太平洋戦争」において連合国を構成していた中華民国は、現在も台湾を拠点に存続している。国連において中華民国が持っていた位置が、ある時点で中華人民共和国に移ったわけだが、この間の政治的駆け引きは、ここでは省略する。ただ一つ言えることは、もし先のような事態が中国大陸で起ったならば、国連の常任理事国という地位の根拠が問われることになるだろう、ということである。それと共に、中国大陸および台湾における20世紀の歴史の全面的な書き換えが始まるだろう。
 それは、現在の中華民国共和国政府が「反日」を口にする根拠も問い直されることにほかならない。
その意味で中華人民共和国の北京政府は現在、外交上の正念場に立たされている。

  これからまだ暫く、日本と北京政府は、国連というピッチに立つことになるわけだが、それは「失うものはない」日本と、「失うわけにはいかない」北京政府との角逐となるはずである。

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