« マス・メディアの見え方(4) | トップページ | 天皇「発言メモ」の読み方 »

マス・メディアの見え方(5)

出す国/貰う国の不思議な関係
〇貢ぎ続けの韓国
 前回、私は、『東亜日報』の「発射費用は600億ウォン…6年間の対北支援金は3兆ウォン」(2006年7月11日)という記事を紹介したが、その時引用した文章の次にも、常識では考えられないことが書いてあった。
《引用》
 
00年の南北首脳会談以来6年間、南北協力基金で北朝鮮に支援した総額は3兆2333億7900万ウォン。これを北朝鮮の市場為替レートで換算すれば、昨年の北朝鮮予算を基準にして26年分を上回る。

 さらに、金大中(キム・デジュン)前大統領が南北首脳会談開催のために与えた5億ドルの現金まで合算すれば、韓国側の支援が、北朝鮮のミサイルと核開発の土台を提供したと指摘する専門家も少なくない。

 もしこれが事実ならば――間違いない、と私は思うが、――何と!! 韓国は北朝鮮に、過去6年間、毎年、北朝鮮の国家予算の4倍強のお金を支援しつづけているのである。
 逆に言えば、北朝鮮は過去6年間、自国の国家予算の4倍以上の金を貰い続けているのである.
 もし日本が他所の国から、国家予算の4倍以上の金を貰って「国家」を運営しているとしたら、私たちは自分の国を独立国家と見なし得るだろうか。これは、そういう深刻な疑問に誘われるような事態なのである。

 総額3兆2333億7900万ウォンという金額は、ちょっとピンと来ないかもしれない。私も実感が薄いのだが、今年の7月11日現在で、100ウォンが12円(つまり1円は8.3ウォン)ほどに当る。これによって計算すると、3兆2333億7900万ウォンは3,880億円ほどになる。これを6で割れば、1年平均が出るわけだが、そうしてみると、約647億円ずつ、韓国は北朝鮮に毎年、支援してきたわけである。
 その他、金大中前大統領が、南北首脳会談の開催のために5億ドル与えた、という。今日(7月21日)現在、1ドルは116円ほどだから、580億円を与えた計算になる。

〇GDP較べ
 では、毎年これほどのお金を支援している韓国の経済能力はどの程度なのか。国家予算というのは国家体制によって組み方が異なり、素人の私には判断が難しいので、GDP(国内総生産)で比較してみたい。
 インターネットの『ウィキペディア/フリー百科事典』に、「市場為替レートベースのGDP(国内総生産)」が載っていた。それによると、2005年度のGDPの1位は言うまでもなくアメリカ(12兆4388億7300万ドル)だったが、以下、これから言及する国の数字を上げてみると、次のようになる。
  2位  日本        4兆7990億6100万ドル
  6位  中華人民共和国 1兆8431億1700万ドル
  10位 ロシア       7554億3700ドル
  13位 大韓民国     7207億2200万ドル
  20位 中華民国     3451億500万ドル
 ただし、これは国民全体の総数であって、以上の数字を、各国の人口で割り、国民一人当たりのGDP(国民総生産)で比較すると、どうなるか。
 15位 日本         37,566ドル(約535万円)
 35位 中華民国      14,860ドル(約174円)
 36位 大韓民国      14,728ドル(約170円)
 60位 ロシア        5,340ドル(約62円)
 111位 中華人民共和国 1,410ドル(約16万円)
  (以上の順位は、全179カ国の内の位置)

 北朝鮮のデータがないのは残念だが、ともあれこうして見ると、俗に言う「中国」、つまり中華人民共和国の一人当たりGDPは、「台湾」つまり中華民国の10分の1以下であり、日本の33分の1以下でしかない。
 別な面から見れば、「台湾」は、人口では北朝鮮とほぼ同じだが、国民一人当たりのGDPは韓国を上回り、「中国」に10倍する。もちろん独自の政府を持ち、自立的な経済を営んでいる。にもかかわらず、国連において北朝鮮は国家と認知され、台湾は国連に席を持たない。奇妙な話だ。

 そんなふうに、素朴な疑問がさらに湧いてくるのだが、ついでに東京都の平成16(2004)年の「都内総生産」を挙げておこう。東京都のホームページによれば、この年の都内総生産は約84兆2766億円だった。ただ、この年の円とドルの交換レートは正確には分からない。やむを得ず、いま仮に、今日現在の1ドル116円で計算してみれば、7200億ドルほどになる。
 この年の東京の人口は、約1,250万人で、韓国の3.7分の1程度だったが、それにもかかわらず、都内総生産は、韓国のGDP(国内総生産)とほぼ同額だった。その経済力の大きさがよく分かるだろう。

〇日本の対「中国」開発援助
 一つの国家が誕生して既に半世紀も経ちながら、インフラの整備が行き届かず、国民に窮乏生活を強いているとすれば、それは国家体制が劣悪であるか、政権担当者が無能な権力主義者であるか、またはそのいずれでもある。私は単純素朴にそう見ている。また、この視点を欠くならば、国家の本質を見失ってしまう。

 そういうごく当り前の視点からすれば、未だに日本のODA(政府開発援助)に頼っている北京政府は、自立した国家の条件を満たしているかどうか、大変に疑わしい。
 在中国日本大使館のホームページを覗いてみたら、2005年5月現在の記事として、こんなことが書いてあった。
《引用》
  
対中ODAは、1979年に開始され、これまでに有償資金協力(円借款)を約3兆1331億円、無償資金協力を1457億円、技術協力を1446億円、総額約3兆円以上のODAを実施してきました。

 つまり平均すれば、1年につき、有償資金協力1213億円、無償資金協力58億2800万円、技術協力57億8400万円、合計1329億1200万円。日本政府は毎年、これだけの金額を、25年間に渉って援助し続けてきたのである。
 このうち「有償資金協力」は、その言葉だけで判断すると、相手からの返済、あるいは見返りが期待できるように見える。だが、「
有償資金協力」とは、「緩やかな条件(低金利、長期返済期間)による資金貸与」であり、「基本的にアンタイド(無制限)」と説明されている。つまり「返せる時が来たら、返して下さいネ」という、まことにお人好しな「資金貸与」なのである。

 それがどれくらい巨きな金額か。韓国は6年間に渉って、1年につき約647億円を支援してきた。これは大変な金額だが、日本はその2倍以上のお金を、25年に渉って、北京政府に渡してきたのである。

〇北京政府の「やらずぼったくり」
 日本の外務省は、日本の民間から視察団を組織して、現地を案内し、感想文を書いてもらっている。それも外務省のHPに載っており、もちろん「大変に結構な事業だと思う」といった優等生の作文が多いのだが、ただ、共通する不満はただ1点、次のようなことだった。〈どこの施設を見ても、日本の援助によって出来たという説明が明記されていない。中国側が発行したパンフレット類にも説明がなかった〉。
 たぶん北京政府はお金の出所を、自分の国民にも知らせたくなかったのであろう。こういうのを、日本では、俗に「ねこばば」とか、「やらずぶったくり」とか言う。

 この話を家族にしたところ、「ふ~ん。それじゃ、歴代の国のなかで一番出来が悪いってことにならないかしら」。
 中国大陸には古来、いろんな王朝が出現したが、誕生から半世紀くらいが、おそらく最も盛況を誇っていた。この繁栄を背景に、周辺の国と朝貢(貿易)関係が結ばれたわけで、周辺の国は臣従の印として貢物を奉る。王朝はそれに数倍する賜物を返すという、この「恩恵」があればこそ、朝貢(貿易)関係の維持が可能だった。私たちはそう理解していたのだが、それに較べて、現在の北京政府は、独立国家の日本から、ただもう援助を受け取るだけで、「やらずぼったくり」のねこばば。
 そこで、我が家は先のような感想を持ったのである。

〇白石真澄の未消化発言
 ところで、さて、以上書いたことは、前回ことわっておいたように、7月17日(月)に新聞を買うまでの「つなぎ」だったわけだが、17日の昼、朝日新聞と毎日新聞に目を通しても、期待する記事がなかった。いや、朝日新聞には「北朝鮮非難決議(全文)」が載ってはいたのだが、どの文章もほとんど体言止めで、日本語の文章として熟していない。どうやらこれは各条項の内容をかいつまんで訳した、抄訳らしい。そう考えて、検討は諦めた。

 だが、それはそれとして、朝日新聞の「時時刻刻」という欄に、次のような記事があり、なるほどそうだったのか、と思い当たった。
《引用》
  
日本政府と中国との交渉は進まなかった。自民党内から「問題は中国とのパイプがないことだ」(閣僚経験者)との声も出たが、外務省幹部は「日中安保条約はないんだから、中国とはだれがやっても意味はない」と切り捨てた。
  加えて、中国と連携するロシアとのパイプも細っていた。日本政府は手詰まりで、米国を頼りとせざるを得なかった。
  日本国連代表部筋は「米政府の立場は日本を支えることだった」と言う。日本政府高官も「日米が一枚岩で突っ込んでくるんじゃないかと中国も思っただろう」。
  だが、実際には、米国はヒル国務次官補を2度にわたり訪中させるなど中国とも緊密に連絡を取り、流れを作った。

 私が「なるほど」と思い当たったのは、この記事から教えられたからではない。この日の朝、テレビ朝日の渡辺宜嗣の「スーパーモーニング」が「、非難決議」を取り上げていて、コメンテーターの白石真澄がこれとそっくり同じことを言っていたからである。
もちろん私たちはその時点で、朝日の記事を目にしていたわけではない。そんなわけで、「ホラ、また出た。お決まりの〈日本、蚊帳の外〉論だよ」と可笑しがったり、「国交があり、お互いに大使を派遣している以上、パイプがあるに決まってるじゃないか。ナニ、頓珍漢を言ってるんだ」と、不思議がっていたのだが、どういうわけか、この時は司会の渡辺も、コメンテーターの鳥越も妙な薄ら笑いを浮かべて、相槌さえ打たなかった。
その理由が、「ははあ、なるほど」と思い当たったのである。

 そこで、家族にも新聞を見せたところ、「おやおや、あの白石って美人コメンテーターさん、まるで蒟蒻を食べたみたいに、未消化のまま出してしまったのネ……。あら、ちょっとはしたない言い方だったかしら」。なるほど、いかにお約束とはいえ、新聞記事をモロそっくり暗誦されたら、そりゃ渡辺も鳥越も受けようがなかっただろう。

〇大国って何?
 それにしても、白石さん、「パイプがある」とか「ない」とか言うけれど、誰とどういう接点を持っていれば「パイプ」になるんですか。最終的な相手は胡錦濤ですか? それともプーチンですか? そう聞いてみれば分かるように、「パイプ」なんて単なる思わせぶりに過ぎない。
 要するに〈大国の中国やロシアからそっぽ向かれたら、ことがうまく運ばないよ〉と言いたいのだろうが、北京政府やロシアが「大国」の振りをすることが出来たのは、国連の安保理で拒否権を持っていたからにほかならない。だったら、「拒否権とは何か。それを特定の国が持つ根拠は何か」から捉え返してみればいい。正体は直ちに明らかだろう。

 そんな話をしていたところ、北京から帰った、民主党の小沢一郎がテレビのインターヴュで、精一杯笑みを浮かべて、〈あれはもう事前にアメリカと中国、アメリカとロシアの間で出来上がっていたシナリオですよ〉みたいなことを言っていた。
 こういうのを、俗に「下司の訳知り顔」と言うのだが、卒然として私は、むかし愛読した大和和紀の『はいからさんが通る』という楽しい漫画を思い出した。あれには冗談社という出版社があって、コビ・ウリタとか、ヘツラ・イワオとかいう編集者が出て来て、諷刺が利いた上等なギャグが多かったなあ。(2006年7月21日)

|

« マス・メディアの見え方(4) | トップページ | 天皇「発言メモ」の読み方 »

「社会時評」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/127704/11049806

この記事へのトラックバック一覧です: マス・メディアの見え方(5):

« マス・メディアの見え方(4) | トップページ | 天皇「発言メモ」の読み方 »