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総選挙の見え方

○翼賛体制への狂奔

 誰でも気がついていると思うが、小泉自民党執行部は郵政民営化という「改革」を口実に、党内反対派の排除に取りかかっている。その手段が衆議院の総選挙であって、郵政民営化に反対した議員の公認を拒んだだけでなく、その選挙区に対抗馬を送り込んで、反対派潰しを謀った。「刺客」という言葉は、誰が言い出したのか分からないが、図らずもこの言葉は、小泉自民党執行部のやり方が一種の粛清にほかならないことを暗示している。

 弁証法で言う「矛盾論」から見れば、党内(組織内)の反対意見者に「敵対者」のレッテルを貼りつけ、「奴は敵だ。敵は倒せ」とばかりに反対者の抹消を正当化するやり方が、粛清だからである。

 小泉自民党執行部はなりふり構わず、そういう粛清を通して、党内に翼賛体制を布こうとしているのだろう。

 ある人間が何を言っているかは、一つのことである。その人間が何をしているかは、また別なことである。この両面から、人を見なければならない。

 重要なのは、何を言っているのかを理解することと、何をしているかを知ることを、きちんと兼ね合わせることなのだが、そのことを含めて、私たち家族はそういう見方を心がけている。

 

 そういう私たちの眼に、小泉自民党執行部は以上のように映ったわけだが、そんなことを話しているうちに、私は、1970年前後、学生運動の政治セクトがはまり込んだ、内ゲバとか総括とかいう陰惨な手口を思い出した。

小泉純一郎もその世代に属する。彼や、現在の自民党執行部のメンバーが、その時期どんなスタンスを取っていたか、それは分らない。だが、「改革」をオールマイティみたいに振りかざしたり、公務員の問題を官僚支配の問題にすり替えて、目の敵に攻撃して見せたり、「私が自民党をぶっ壊す」などと内部変革者を気取ってみたり、セクト内の問題を国民全体の問題みたいに誇大視してみたり、その言動パターンに世代的共通性が認められる。

 

○小泉の「くノ一」

 「小泉と自民党執行部が選んだ「刺客」って、ほとんどが女でしょ。女をそんなふうに利用するってことが、私は何だかとても嫌な気がして……ところが、利用されてる女たちが、揃いも揃って「小泉さんにお声をかけていただいて、とても光栄です」なんて、はしたなく悦んでいる。見るに耐えない……」。

「ホント、事柄の全体が、不謹慎なことを見境もなく人目に曝している感じで、思わず顔を背けてしまう。でも、案外あの女たち、自分じゃ華麗な「くノ一」のつもりなんだろうナ」。

「私は、衆議院選挙そのものを馬鹿にしていると思う。私たちのところにも、刺客のお姐さんとやらが来たらしいけど、この土地のことを全く知らないわけでしょ。それが不愉快なだけじゃなく、女を送り込めば票が集まるだろう、票を集めて議席を増やせば、それが政治の勝ちなんだって、そういうやり方が、国政選挙と有権者をナメている、侮辱している。だから、この選挙で小泉を勝たせてしまうと、何か気がつかないところで日本の選挙と政治が変質して行くんじゃないかって、私はそれが怖い」。

「ただ、彼女たち、選挙に必ず受かる保障はないわけよネ。小泉だって大統領じゃないんだから、自分も立候補して受からなければならないんだし、ひょっとしたら横須賀市民にそっぽ向かれて、落ちてしまうかもしれない。当然その辺は承知の上なんでしょうけど」。

「たぶん小泉執行部も、あの女たちも、選挙結果については、あんまり期待してないと思うヨ。もちろん小泉たちは、彼女たちを立候補させる時は、自民党の総力を挙げて応援するとか、万が一当選できなくても、自民党が責任をもって然るべきポストの仕事を用意致しますとか、口約束だけじゃなくて、証文の一通くらいは書いていると思うけど、本音のところは、45人も受かればメッケもん位に計算してるんじゃないか。あと34人、比例で拾ってやってネ……それだけ議席をとれば大成功、というところだろうナ」。

「これはまたこれで怖いことネ。それでは、使い捨ての憂き目を見る女性も出るかも……」。

「かも知れないよ。小泉や執行部は、送り込んだ刺客と相打ち、共倒れでいいから、とにかく郵政民営化に反対した元党員を落選させる。それが狙いだろう。亀井静香のところは、さすがに、そんじょそこらの女ではとても太刀打ちできそうもない。そう分っているから、堀江とかいう話題性の高い男を送り込んだわけだけど、あれを見ると「亀井憎し」で凝り固まっているとしか思えない。新党国民を作ったメンバーは、自分の選挙地盤に自信があるからだろうけど、逆に言えば、小泉のああいう肌寒くなるような、執念深さに怯まなかった男たちってことになるわけだ」。

○コンコルドの教訓

 「「コンコルドの誤り」という諺と言うか、教訓があってネ」。

 「ええ?」。

 「長谷川真理子って人が書いてるんだけど、コンコルドっていう、超音速の旅客機があっただろう? フランスとイギリスが共同開発した。……ところが、あれは、開発の途中で、たとえこれが完成しても、採算がとれっこないってことが、分ってしまったんだって」。

 「ええ?」。

 「だけど、フランスとイギリスの政府は、これだけ膨大な投資をしたのだから、いまさら止めると全てが無駄になってしまう。そういう理屈で開発を続けて、出来上がったのはいいが、やっぱり使い物にならなかった」。

 「それに、すごい事故を起したでしょ。……いま思い出したけど」。

 「小泉ってコンコルドの、あの顔の部分に似てないか?」。

 「ああ、そうか。郵政民営化の引っ込みがつけられなくて……」。

 「長谷川さんに言わせると、ああいう精神の硬直化は、これまでこんなに頑張ってきたのにっていう、物惜しみ根性のセイだけではないんだって」。

 「というと?」

 「これを中止して、では、他に何ができるか。そういうオルタナティヴを構想する能力がない人間が、得てしてああいう硬直にはまり込むんだそうだ」。

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