2008年夏・高校野球&オリンピック(その1)

○見事なバトン・パス
 2008年夏の甲子園大会と北京のオリンピックが終わった。
 8月22日、日本の野球は明らかに韓国の野球に気合負けしただけでなく、力負けしていた。夜になっても白けた気分は治らず、書斎で仕事をしていると、家族から「男子400メートル・リレーの決勝が始まりますよ」と声を掛けられた。急いで茶の間に出て見ると、まさにスタートの瞬間だった。第3走者の高平からアンカーの朝原にバトンが渡るとき、朝原がちょっと後ろを振り向いた。「あっ、まずい」。思わず声を上げてしまったが、朝原がよく走って、銅メダル。すばらしい。気分がすっきりした。
 バトン・パスも実力のうちだからナ。

 今回のオリンピックの陸上リレー競技では、アメリカのチームが男女共にバトン・パスに失敗して、決勝に進出できなかった。リプレーを見ていると、アメリカの選手はバトンを受け取る際、左手を後方斜めに延ばしてバトンを受取ろうとするが、ダッシュと共に手が揺れて、走りこんできた仲間がうまく渡すことができない。
 私は全くの素人だが、中学生の頃、バトンを受け取る右手は腰に当てて固定し、後ろを振り向かずにダッシュするように指導された。現在のバトン渡しはどんな方法がよしとされているのか、理論的なことは分からないが、素人目にもアメリカのチームは下手糞だった。あれじゃ駄目だね。そんなことを家族に言っていたところなので、アンカーの朝原がちょっと後ろを向いた瞬間、はっとした。リプレーを見ると、やはり朝原の手が、高平のバトンを探している感じだった。だが、大きなミスにつながらなくてよかった。

○おやじギャグ
 同じく私の素人判断によれば、100メートルや200メートルの短距離走のスタートで、「用意(0n your mark)」の声がかかった場合、あまり尻を高く上げてはならない。スタートラインの内側ぎりぎりのところに両手をつき、むしろ上半身を水平に前へ押し出すようにして、体重を両手にかける。そのほうがスタートダッシュがスムースに行き、素早くトップスピードに乗ることができるからだ。
 私はそう教えられてきたのだが、ジャマイカのボルトの「用意」は尻が高い。身長が大きいためかもしれないが、ひと際高く見える。それでいて、世界記録を出したのだから、「うそジャマイカ」。理論を撥ね飛ばしてしまう実力に、私は驚いた。

○千三つ
 今日(8月25日)の新聞によれば、野球の星野監督が「強いものが勝つのではなくて、勝ったものが強いということを実感した」という意味のことを語ったらしい。要するに、日本の選手はそれぞれ能力が高く、総合力では一番だったはずだ、と言いたいらしいのだが、「ばかジャマイカ」。
 日本対韓国の準決勝では、初回に日本が1点を取ったが、4番の新井がピッチャー・ゴロ。併殺崩れの間に、西岡がサードから駆け込んで、まず1点。「サードにランナーを置いて、4番バッターが犠牲フライも打てないで、ピッチャー・ゴロ。ひ弱なチームだな」。そう思っていたところ、案の定、継投策が失敗して、逆転負け。
 私は全ての試合を見たわけではないが、その前に見た試合でも、1アウト2、3塁のチャンスで阿部が犠牲フライも打てなかった。岩瀬を2イニング投げさせたのも失敗。星野はアジア予選の時の岩瀬の残像に引きずられたのだろう。

 アメリカの400メートルリレーは、選手一人ひとりの記録を合わせてみれば、世界最速のチームであり、文句なしに世界記録で金メダルを取るはずだった。しかし多分、バトン・パスの練習を怠った。俺たちは早い、という選手の驕りが、そうさせたのだろう。星野監督は投手の起用とリレーに失敗した。「奢ったものが勝つのではなくて、チームプレーの錬度を高めたものが強い」のである。
 星野の名前は仙一だが、彼の采配が当たる確率は「千三つ」というところだな。

○お国自慢
 視聴率の点から見ると、女子ソフトボールの決勝戦は、まさに国民的な関心事だった。女子のソフトボールが国民的なスポーツになった瞬間と言えるだろう。
 上野の3連投は驚異と言うほかはない。7回の裏、アメリカがランナーを出す。もう1本ヒットが出たら、上野が崩れてしまうかもしれない。心配して見ていたところ、前進守備を取っていたサードの廣瀬がすばらしい反応で、二度、ヒット性の当たりを好捕した。

 上野の3連投に、一昨年の甲子園大会、早稲田実業の斎藤投手を重ねて見ていた人も多かったと思う。「斎藤は群馬県の子だし、今日の女子ソフトの主力選手もルネサス高崎とか、太陽誘電とか、群馬の企業で働いているんだ。群馬の土はゲルマニュウムの含有量が多いからネ、それで群馬の野菜を食べてる人間は連投がきくし、集中力も切らさないんだョ」。
 妻と娘が笑って、「お父さんは、自分もそうだと言いたいんでしょ」。

 それにしても、なぜ星野監督は早稲田大学の斎藤祐樹を選ばなかったのだろう。
 
○研ナオコふうに
 「男子50キロ競歩で7位に入賞した山崎さんて、前の日にうな丼を3杯も食べて、下痢をしてたんですって」。
 「まさか中国産のウナギじゃないだろう」。
 「ニュースでは何も言ってなかったけれど、日本産を持って行ったんじゃないかしら。……下痢しながら7位入賞なんて、スゴイわね。でも、可笑しいの、途中からペットボトルの水をトランクスにかけながら頑張ったんですって」。
 「ふ~ん、そうか。研ナオコふうに、大変だったんだな」。
 「それ、どういうこと?」
 「うん、プチプチ、プチプチ、プチシルモ」。
 途端に妻はぷっと吹き出し、娘は腹を抱えて身もだえしていた。
 

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2007年日本シリーズ(2)

○民主党の自壊?
 昨日(24日)の夕方、民主党の小沢代表が突然、党首を辞めると言い出し、今朝もマスメディアが騒いでいる。10年に一度の大衝撃なのだそうである。
 しかし結局、「試合を作っているのは自民党の福田首相のほうだ」という事実が明らかになっただけのことではないか。

 私たち家族は、民主党を、プロ野球で言えば二軍レベル、Jリーグで言えばJ2程度としか見ていなかった。
 ところが、安倍内閣の閣僚から、安倍首相の足を引っ張る大臣が次々と現れ、おかげで民主党は、今年の夏の参議院選では大勝することができた。
 実際は自民党のオウン・ゴール(自殺点)に助けられて、民主党が勝ちを拾っただけなのだが、民主党の議員はJ1リーグとJ2リーグの入れ替え戦にまず1勝したと思い込み、「さあ、この勢いに乗って福田首相を衆議院の解散にまで追い詰め、選挙でもう1勝すれば、J1に昇格できる」。そんなふうに意気が挙がっていたらしい。小沢一郎もそんなポーズを取っていた。
 勢いに乗ってしか勝てないのは、実力がない証拠ではないか。私はそう見ていたのだが、小沢一郎も本心は自信がなかったのだろう。

○象とうわばみ
 福田康夫の政治家としての力量はよく分からない。力量を振るってみせる場面は、これまでなかったように思う。ただ、官房長官としての経験が長く、ネゴシエーターとしての自信があるのではないか。最近の行動から察するに、この局面を乗り切るにはネゴシエーターに徹するしかない。そう覚悟を決めているように見受けられる。
 それに対して小沢一郎は、常に一家言ある「大物政治家」として振舞ってきた。

 そんなわけで、私は、福田首相と小沢代表とが会談すると聞いた時、『星の王子様』(サン・テクジュペリ作)で、象を飲んだうわばみの、あのユーモラスな挿絵を思い出した。福田うわばみが民主党を飲みにかかっているようだが、果して飲み込んでしまうことができるか。それとも小沢代表が、薄皮一枚で持ちこたえている自民党を破裂させてしまうか。これは短期決戦で決着をつけなければならないな。そう思っていたところ、なんと! 民主党がうわばみの腹の中でぐずぐずに崩れ出したらしいのである。

 勢いに飲まれるということはある。昨年の日本シリーズの中日のように。だが、勢いを飲まれるということもあるんだ……、今年の日本ハムのように。

○日本ハムと民主党
 何だか場違いなことを書いている気がしないでもないが、私の中では、今年の日本シリーズと昨日からの政治ドラマは、こんなふうに重なってしまうのである。

 「日ハムとしては、今日は是非とも勝っておきたい」。10月30日、ブログにこう書いて、茶の間に出てみると、1回の裏、あれあれと言っている間に、日ハムが7点取られてしまった。これで流れは完全に中日に移り、11月1日には完全試合という大記録のおまけまで献上して、日本ハムの戦いは終った。

 第三者的に言えば、中日の山井投手が完全試合を達成したわけではない。しかし、日本ハムの側に立てば、ランナーを一人も出さずに完敗した事実は残る。この屈辱の記憶は、時間が経つにつれて、日本ハムの選手の中に重く沈殿してゆくだろう。それを如何に払拭するか。梨田新監督はそこから出発しなければならない。

○日本ハムの駒不足
 中日は川上で第1戦を落としたが、小笠原、田中、朝倉、山井という若手や中堅の投手が「試合を作って」くれた。
 ところが、日本ハムには、ダルビッシュ以外に試合を作れる投手がいなかった。正田は既に阪神へ出されてしまったが、その正田を含めて、鎌倉、須永、八木など、素質ある投手を獲得してきた。にもかかわらず、デビューした1、2年はいいのだが、その後伸びてこない。
 日本シリーズで目立ったのは、日本ハムの貧打だったが、本当の敗因は、こういう若手を育てられないコーチ陣にあったのではないか。
 入団2年目の吉川は好投した。小樽北照から入った植村ともども、来年はもっと伸びて欲しい。

○民主党の人材不足
 とにかく日本ハムは駒不足だった。
 自民党は、安倍晋三が期待のエースだったが、はやばやと崩れてしまった。しかし、福田康夫が試合を作っている。このまま勝利投手になりそうな気配だ。
 福田の次は「キャラの立ちすぎた」麻生太郎ではなくて、町村信孝のような気がする。少なくともこれまでのところ、彼の官房長官ぶりは、ここ数代の官房長官の中で――福田首相の官房長官時代も含めて――出色の出来栄えと言える。記者会見の場では、総理大臣の意向や内閣の方針をよく消化して、自分の言葉で応答し、しかも説明に過不足がない。そういう安定感がある。懐の深い人柄なのだろう。
 
 こんなふうに、自民党は次の候補者を複数挙げることができるのだが、民主党は小沢の後がいない。菅、鳩山、岡田なども考えられるが、二度目のお勤めみたいに薄汚れた感じで、新鮮さに欠けている。今日の午後7時のニュースでは、菅が慰留に赴いたが、はかばかしい返事が得られなかったらしい。それはそうだろう。記者会見までして辞意を表明した男が、翌日ころっと翻意して、民主党代表を続けるなんて言い出したら、それこそ茶番劇で、市民の信用を失ってしまう。

 民主党の、この駒不足は、後継者候補を育てるシステムを持たなかったためであろう。マスメディア受けしたい、物欲しげな人間が寄り集まった、烏合の衆でしかない。そんな体質が露呈してしまった1日だったように思う。

○1イニングに凝縮したドラマ
 それにしても、日本シリーズの第5戦で、9回表にマウンドに上った岩瀬のプレッシャーは、凄いものがあっただろうな……。よほどの緊張があったらしく、しきりに唇を舐めていた。1点もやれない、というだけではない。一人のランナーも出せないという、ぎりぎりの状況の中で、しかし彼は見事に役割を果たし、私は感動した。
 もちろん彼は、一人でもランナーを出せば、山井の記録を色あせたものにしてしまうだけでなく、落合の采配に非難が集中することを、十分過ぎるほど十分に承知していたはずである。
 
 今年の日本シリーズは、あまりにもあっけなく終わり、盛り上がりに欠けていたが、あの9回表の1イニングに、日本シリーズとしての緊張とドラマが凝縮していたと思う。

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2007年日本シリーズ(1)

○微妙な主審の判定
 これは、審判員にお返しをされたかな。
 一昨日(28日)の日本シリーズ、日本ハムと中日の第2戦を見て、そんな印象を受けた。主審はセリーグの審判員らしい。日ハムの先発投手グリンは、自信をもって投げ込んだ球をストライクに取ってもらえず、明らかに苛立っている。結局フォアボールでランナーを溜め、先制打を許してしまった。
 
 27日の第1戦は、私は小樽の仕事があって、試合の前半を観ることができなかった。7時くらいから見始めたのだが、中日の川上がいいピッチングをしている。2回からはパーフェクト・ピッチングだという。ただ、1回に3点取られている。放送の途中、その経過を紹介していたが、川上は自分の得意球をボールと言われ、かっと頭に血が上っている。そんな様子が見えた。そのためコントロールを乱し、セギノールにスリーラン・ホームランを打たれてしまった。
 多分この試合の主審はパリーグの審判員だったのだろう。
 
 第2戦の主審がわざとグリンに厳しくしたとは思わない。セリーグとパリーグのストライク・ゾーンの違いがこういう場面を生んだ。そう考えてはいるのだが、あまりにも先取点の取り方/取られ方が似ているので、つい最初に書いたような印象を受けてしまったのである。
 
○日ハムの貧打
 それにしても日ハムは打てなさ過ぎる。今日から舞台は名古屋ドームに移り、指名打者制はなくなる。投手もバッターボックスに入らなければならない。このセリーグ方式に日ハムの貧打線がどう対応できるか。中日の優位は動かないだろう。
 
 名古屋の3連戦では、川上がもう一度投げるだろう。グリンもマウンドに立つかもしれない。第1戦の時の川上の立ち直り方、第2戦のグリンの崩れ方から見て、中日の優位は動きそうもない。
 日ハムとしては、今日は是非とも勝っておきたい。

○松坂の凄さ
 レッドソックスの松坂は、パリーグ時代はもちろん、アメリカでも指名打者制のアメリカン・リーグに属し、だからバッターボックスに立つことは滅多になかった。にもかかわらず、28日、指名打者制を採らないナショナル・リーグのロッキーズ戦で、見事に三遊間を抜くヒットを放った。松坂の打撃能力の高さは、横浜高校時代に証明されていたが、ワールド・シリーズの大一番で、相手の本拠地のマウンドに立ち、しかも第2打席では2打点のヒットを打つ。この対応能力の高さは、やはり桁外れと言うほかはない。

○スタンドの顔の地域性
 28日と29日の試合は、コロラドのデンバーで行なわれたわけだが、カメラが時々スタンドを映す。観客の大半がヨーロッパ系の顔をしている。ヒスパニック系の顔や、アフリカ・アメリカンの顔はほとんど見られない。この辺はまだ、いわゆる白人中心の地域なのだろうか。

 理屈から言えば、アメリカにそういう空間があったとしても、もちろん一向に不思議ではない。だが、数ヶ月間ロサンゼルスに住み、球場にも足を運んだことのある人間には、かえって奇異な感じがする。

○監督のマナー
 カメラが試合の途中、プレーの合間に、スタンドやベンチを映す。これはディレクターの指示によるのだろう。レッドソックスの監督は、映る度に、唾を吐いている。不潔感がはなはだしい。「このディレクター、いちいちベンチを映して、うるさいね」。我が家では、ディレクターまで評判が悪い。
 日本でも、ロッテのヴァレンタイン監督が映る度に唾を吐いており、一体に日本の選手はガムなど噛まないのだが、ロッテの場合、選手までがにちゃにちゃと口を動かしている。言うまでもなく我が家で大変に評判が悪い。
 日ハムのヒルマン監督はガムを噛まず、唾を吐かず、それだけでベンチ内に清潔感と緊張感が漂う。そこがロッテとの違いさ、などと言いながらクライマックス・シリーズを観ていたわけだが、ヒルマンも来年、大リーグの監督になったら唾を吐き始めるのだろうか。

 松井はロッキーズに移籍して以来、ガムを噛まなくなり、プレーが数段よくなった。(2007/10/30、午後6時30分)

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甲子園・2006年夏(12)

ニュー義経誕生

○駒沢苫小牧 準優勝!!!

 今朝、新聞を買いにコンビニへ行ったところ、どの新聞も一面トップで、でかでかと「駒沢苫小牧 準優勝」をアピールしている。あの~、昨日の決勝戦で勝ったのは、たしか早稲田実業という高校だったはずですよネ……。レジのおばさんに、思わずそう確かめたくなるような扱いだった。

 さすがは北海道版の新聞だ。

 朝、テレビを見ると、東京ではどの新聞も、一面トップで早稲田実業の優勝を伝え、斉藤投手が高々と両手を挙げた、歓喜の瞬間の写真が大きく載っている。

 私たち家族は早くそれが見たくて、私がコンビニまで自転車を走らせたわけだが、買ってきた新聞を見て、「あら、そうなの……。でも、もちろん総集編の雑誌には斉藤君の写真、出ますよネ」。そう言ったきり、それ以上読もうとしない。

○北海道版の偏頗な扱い

 念のために、朝日新聞と毎日新聞の扱いを紹介しよう。

 朝日の一面は、まず大きく「駒大苫小牧 準優勝」と打ち出し、両チームの選手が試合終了後、握手しようと歩み寄る場面の写真を掲げて、その下に小さく「43、早実が初V」。

 スポーツ関係の欄では、第17面に88回大会の総評を掲げ、次の見開き2ページの右側、第18面は「駒苫闘志貫徹」、左側、第19面は「早実鉄腕伝説」を載せて、いわば対等の扱い。ただ、第18面の写真はモノクロ、第19面の写真はカラーを使う形で、優勝チームへの敬意を表現していた。

だが、その他、第28面、29面、30面、32面、33面は、大半が苫駒関係の記事で埋められている。

 まるで世紀の大ニュース並みの扱いだった

 さらに821日付けの号外が挿んであったが、横に大きく「駒大苫小牧 準優勝/73年ぶり 3連覇ならず」。その下に、6回表、ホームランを打った三谷がガッツポーズをしながら1塁ベースを回るところを、正面から写した写真を載せていた。その写真の右側に、縦書きで、もちろん「駒大苫小牧 準優勝/73年ぶり 3連覇ならず」よりはずっと小さい活字で、「再試合、早実に敗れる」。

 毎日の場合、一面トップは、まず縦書きで「早実 悲願初V」とあるが、それを押さえつけるように「駒苫3連覇ならず」の大きな文字が、横書きで並ぶ。その下に「優勝を決め、両手を上げて喜ぶ斉藤」の写真が小さく、それより5,6倍大きい、「戦いを終え、記念撮影で笑顔を見せる早稲田実・斉藤、駒大苫小牧・田中ら両チームの選手たち」という集合写真が掲げてあった。

 

さらにスポーツ関連の見開き2ページでは、右側第16面は「駒苫 輝きは金色」という見出しの記事で、写真はカラーだった。ところが、左側第17面は「早実 頂点は夢色」と、訳の分らない見出し、おまけに写真はモノクロ。

小見出しも、第16面は「逆転男、不屈の2ラン」と中沢1塁手を讃え、「田中燃焼、涙なし/春辞退 乗り越え 気迫の熱投742球」とカッコがいい。それに対して、第17面は「エース好投の陰にいつも白川」とキャッチャーに照明を当て、また、「会心先制打 末っ子の底力」とレフトの船橋を取り上げいた。それはそれで結構なのだが、この試合に関するかぎり、斉藤の健投に言及しないのは、片手落ちと言われても仕方あるまい。

何だか悔しさがにじみ出ている感じで、よほど駒苫に肩入れしていたのだろう。

 そして第21面、22面、23面、24面、25面は、これまた駒苫関連の記事ばかり。ただ、さすがに気が咎めたらしく、25面に申し訳程度の「悲願の夏制覇早実/「王さんのために」偉大な先輩の励ましが後押し」という小さい記事を載せていた。

 多分これが、マスメディアに反映した道民感情なのであろう。

 

○駒苫3連覇に託された夢

 その理由、分らないでもない。

 今大会の一つの話題は、「駒苫の3連覇なるか」だった。このこと自体、高校野球ファンにとっては大きな関心事だったが、駒苫ファン、特に北海道の駒苫ファンにとっては、単なる3連覇以上の意味があったからである。

 昨年の夏、駒苫は2連覇を達成し、誰しもその「偉業」に感歎したが、思いがけず、大会直前の「不祥事」が明るみになって、高野連は駒苫の優勝を取り消すべきではないか、いや、駒苫のほうが自ら責任を取って、優勝旗を返上すべきだはないか、などの議論が巻き起こった。

 高野連には高野連の判断基準があるらしいのだが、それが十分に説明されないまま、駒苫にはお咎めなしの結果となった。そのため、勝てば官軍の論理や、「頑張った選手には責任がない、それなのに優勝を取り消すのは、選手が可哀そうだ」という心情論が容認された形となり、後味の悪い結末となってしまった。

 ともあれ、これはこれで落ち着いたかに見えたのだが、困ったことに、今年の春の選抜大会の直前、また駒苫が「不祥事」を起こした。さすがにこの度は「知らぬ顔の半兵衛」を決め込むわけにもゆかず、駒苫は選抜の出場を辞退することになった。

 残念だが、これはやむを得ない。そう思った北海道の駒苫ファンも多かったようだが、ただ、駒苫は前年秋の神宮大会でも、決勝戦では早実を破って優勝している。その実力を以てすれば、選抜大会で優勝し、夏春連覇の「偉業」を達成するのも夢ではないのではないか。そう考えて、諦めきれない人も多かっただろう。

 今春の選抜大会では、横浜高校が圧倒的な強さで優勝したが、それを「暫定一位」と呼ぶ人も多かった。駒苫の出ない大会の優勝なんて、優勝の名に値しない、という意味である。駒苫ファンというよりは、むしろ横浜高校嫌いの人間が、横浜の優勝にケチをつけるために駒苫を引き合いに出す。そういう面もあったと思うが、どこかでそれは駒苫の選手や、駒苫ファンの自負心をくすぐったはずである。

 つまり、それやこれやが重なって、駒苫ファンの道民は、苫駒の3連覇に、駒苫の汚名返上と、自分たちのフラストレーション解消の願いを籠めていたのである。

 最近の北海道は、知床の世界遺産登録や、旭川の旭山動物園の大ヒットなど、明るい話題がなかったわけではない。だが、全体的に経済的な基盤が落ち込み、カード破産すれすれの状態に喘いでいる。

 その意味では、北海道の駒苫ファンだけでなく、北海道の人の多くが、たとえ束の間の喜びであったとしても、駒苫の3連覇に、北海道の底力を実感したかった。そういう夢もあっての大声援だったと思う。

○立場の転倒

 その意味で今年の駒苫は、まさに「道民感情」化した夢と期待を担った若者集団だったわけだが、全国の高校野球ファンのなかにも、夏の大会3連覇という「奇跡」を期待する人が多かっただろう。

 それはアナウンサーや解説者の言葉の端々からもうかがうことができた。

 それは一種の判官贔屓にも似たフィーバーを感じさせたが、さて、決勝戦、あと1勝で奇跡の3連覇という試合を、延長15回戦っているうちに、俄かに風向きが変わってしまったのである。

 

 この試合、誰が見ても互角の条件とは言えなかった。

駒苫は2回戦から登場して、これが5試合目だが、早実は1回戦の第1日から戦い始めて、これが6戦目。しかも駒苫は準々決勝の組み合わせの日程に恵まれて、田中は2連投で済むが、早実の斉藤は3連投となる。その上、田中は試合途中の登板もあり得たが、斉藤は全試合・全イニング、一人で投げ抜いてきた。

明らかに早実には不利な、この条件の違いから、高校野球ファンの判官贔屓的な感情は早実のほうに傾いていったわけだが、延長戦の回が進むにつれて決定的になっていった。

駒苫は、まるで五条の橋の弁慶みたいに、「あと一本で千本だ」とばかりに挑みかかる。ピッチャーの田中がまた、荒法師にうってつけの顔をしていた。ところが早実の義経・斉藤は、いささかも動じた気配がなく、涼やかな顔でマイペースの投球を続け、相手を寄せつけない。整った面立ちが、ますます凛々しく見えてくる。

私の家族はごく素朴な地元贔屓で、ずっと駒苫を応援してきたのだが、この試合を見ているうち、次第に早実に肩入れをし始め、延長15回、引き分けで終った時は、「せっかく斉藤君が15回の表、気合を籠めて本間選手を3振に討ち取って、さあこれで早稲田の負けはなくなった。そんな絶好のお膳立てを作ったのに、早稲田のバッターったら、田中の球を芯でとらえて鋭くはじき返すこともできない。ポコンなんて打ち上げてしまって……」。そんなふうに、すっかり早実寄りになってしまっていた。

試合を見ているうち、このように早稲田実業の判官贔屓に変わった人は、全国はもちろん、北海道のファンのなかにも多かっただろう。

そんなわけで、昨日の再試合は、観ている人の7割以上が早稲田実業に応援していた。そう私は推測している。もちろん私は初めから早実贔屓だった。

そして、これまた私の推測によれば、以上のような事情があったればこそ、北海道版を組む新聞の編集者たちは、自分たちも手を貸してきた「道民感情」的フィーバーをなだめるため、あのローカルな紙面を作らざるをえなかったのである。(2006823日、午前05分)

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甲子園・2006年夏(11)

決勝戦・再試合

○一番感心したこと

 これだけ過酷なスケジュールの連投にもかかわらず、今日の斉藤には、四死球が一つもなかった。

 

 早稲田実業が駒大苫小牧の追い上げを振り切った優勝した。

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甲子園・2006年夏(10)

決勝戦・感動の余韻のなかで

○早実の斉藤に軍配 

 駒大苫小牧と早稲田実業との決勝戦は、延長15回を戦って、11のまま決着がつかない。明日、再試合することになったが、今日の主役は誰が見ても早稲田の斉藤だろう。

 駒苫の田中は2連投となったが、昨日の準決勝は途中から登板、今日も同様だった。それに対して早実の斉藤は、駒苫より1試合多い上に、準々決勝から3連投、しかも全イニング投げている。

常識的に見て、駒苫の優位は動かないところだったが、早実の斉藤は不利な条件を集中力に変える精神的なパワーを持っているらしい。私が彼の投球を見るのは、これが3試合目だったが、今日が一番コントロールがよく球威もあったように思う。

 延長15回表、2アウト、駒苫の4番打者の本間に対してストレート勝負、147キロの表示に球場全体がどよめいた。

○斉藤と前橋高校の松本

 2chを見ていると、〈斉藤はPL時代の桑田に似ている〉という意味の書き込み目につく。そうかな? おそらくユニフォームの印象もあるだろうが、私は、体型や面立ち、雰囲気などの点で、完全試合をやった前橋高校の松本を思い出した。

 春夏の大会を通じて、初めて完全試合。テレビや新聞でも大きな話題となり、メディアの追っかけが始まったが、松本の応対がクールだった。「ずいぶん冷静なんですね」。そういう質問に対して、松本は少しはにかんで、「いえ、冷静を装っているだけで……」。あの表情や、応対の仕方を含めて、私は松本に似たものを感じた。

 松本の前橋高校は、完全試合の次に福井商業を対戦し、140で大敗した。「なあんだ、完全試合なんてマグレじゃないか」。そういう声もあったが、春の関東大会では決勝まで残り、マグレでないことを証明し、クレバーな投球術を賞賛された。

松本は記者団の質問に答えて、「これで完全試合の領収書が書けたように思います」。この当意即妙の答えが、また話題になった。

○桐生の獏沢クン

この関東大会で優勝したのは、同じ群馬県の桐生高校だったが、このチームには木暮という好投手と、阿久沢という強打者がいた。

この年(昭和53年)の春の選抜大会では、前橋とアベック出場し、ベスト4まですすんだ。夏の第60回大会にも出場し、優勝候補に挙げられたが、2回戦で県立岐阜商業に30で敗れた。

一回戦で膳所高校に180と大勝し、阿久沢に気負いが生れたのだろう23度と、桐生の1,2番がチャンスを作り、阿久沢に廻すのだが、阿久沢が大振りして凡打ばかり、結局1点も取れなかった。この選手は一人で皆の夢を食ってしまったな。私たち家族はそんな理由で、彼に「獏沢(ばくざわ)」という異名を進呈した。

○好漢の条件

 阿久沢は群馬大学へ進んだが、木暮は早稲田大学へ進み、投手として活躍した。彼はルックスがよく、その上バッティングにも非凡なものがあり、闘争心に富んでいた。

 早慶戦では、ピッチャーにもかかわらず、無謀にも本塁に猛烈なヘッドスライディングをかけ、ブロックするキャッチャーの膝に頭を強くぶっつけた。キャッチャーと言い合いとなり、主審が間に入って事なきをえたが、その後の木暮の様子がどうもおかしい。気持が昂揚しているらしく、ハイは言動が見える。

 実はあの激突で、彼は脳震盪を起していたのだが、本人はそのままプレーを続け、チームメートの誰も気がつかない。試合は早稲田の勝ちで終ったのだが、木暮はしきりに「どうなった、俺たち勝ったのか?」と仲間に訊く。そこでチームメートは木暮がおかしいことに気がつき、あわてて医者に見せた。翌日の新聞に載った木暮の談話によれば、「あの激突のあとのことは全く記憶にありません」。

 ラグビーの試合にも稀にあることだが、頭を強く打った後、無意識のままプレーを続けていたのである。

 その試合で、早稲田の監督は、コントロールの定まらなくない木暮にじっとしていられなかったのだろう、ベンチを出て、マウンドへ向かった。だが、インフィールドのラインを越える手前で、マウンド上の木暮と何か一言、二言、言葉を交わし、そのままベンチへ引き返してしまった。

 勝利監督のインターヴュで、アナウンサーからそのことを訊かれ、「いやあ、あの時、彼がマウンドから、『監督、僕は男になります!!』って怒鳴るんですよ。それに気圧されたってわけじゃないんですけどね、それじゃもう少し任せて見ようかと……」。

 早稲田実業の斉藤も、鹿児島工業との対戦について訊かれ、「僕は男ですから……」。

 

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甲子園・2006年夏(9)

気持のいい試合

○試合を「作った」日大山形の青木

 明日は小樽で仕事があり、その準備のため、今日は日大山形と早稲田実業の試合しか見られなかった。

 今日のこの試合を「作った」のは、日大山形の投手・青木だったと言っても過言ではないだろう。

 これまでの試合では、青木はショートを守り、いわば二番手投手。身体は決して大きいほうではなく、面立ちは優男ふうで、まだ幼な顔が残っている。そのため、むしろ華奢に見えるのだが、それかあらぬか、立ち上がりは、味方のエラーにつけ込まれて、あっさりと1点を献上してしまった。

 「やっぱり甲子園の大舞台は荷が重いのかな」。ついそんなふうに思ってしまったのだが、どうしてどうして、2回は早稲田の攻撃を3者3振で退け、それからは自在に早稲田のバッターを翻弄している。

私は素人なので、その辺の呼吸はよく分からないのだが、解説者の説明によれば、彼の球は打者の手元で微妙に変化し、バットの芯に当てさせないのだそうである。

 こうして、彼は早稲田の斉藤と息づまる投手戦を演じ、6回表の攻撃では、みずから3塁打を放ってチャンスを作り、2対1と逆転した。

 特に彼は斉藤に強烈なライバル意識を抱いていたらしく、気合を入れて立ち向かい、投げては斉藤を二度続けて3振に討ち取り、打っては斉藤から2安打を放ち、いわば投打に斉藤を圧倒していた。「もしこのまま日大山形が押し切ったら、青木一人で早稲田実業を倒したことになる」。私は感心して見ていた。

 「これだけの投手を控えに廻して、3試合も勝ち抜いてきた。日大山形はふところが深いな」。

 しかし試合は、8回裏、早稲田の攻撃で、代打・神田のヒットを手がかりに4点を奪って、5対2と逆転し、そのまま逃げ切った。

 青木に勝ち急ぎの意識が働いたためかもしれないが、彼の踏ん張りは自分のチームのよさを引き出しただけではない。ある意味で、斉藤の後半の力投をも引き出した。そう言うことができる。昨日の2試合とは異なる、締まった、気持のいい試合だった。

○訂正を一つ、

 昨日私は、東洋大姫路の1塁手・岡の守備を「おせっかいプレー」と評した。

 しかし今朝、別な角度から映したテレビを見て、むしろこれはピッチャーの乾に責任がありそうだな、と思い直した。乾は内野ゴロを打たせ、一瞬「しめた」という安心感に囚われたためか、1塁へのベースカバーが遅れたのである。

 東洋大姫路の岡選手には心ない批評をしてしまった。申し訳ない。

 

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甲子園・2006年夏(8)

確かにベスト8の戦いは……

○悪くない勝ち方

 昨日は小樽へ出て、野球は見られなかった。ただ、早稲田実業と福井商業の試合は、小樽までラジオを聞いていたが、4回を終って00、斉藤は毎回ランナーを出して、少しあっぷあっぷしている感じだった。

 しかし夜、帰宅してスコアを見ると、71の大差で、早稲田が勝っていた。

 今日の準々決勝の2試合は、いずれも見ごたえがあった。

駒大苫小牧の田中が立ち上がりが不安定で、今後に不安材料を残してしまったが、攻撃のほうでは、1チャンスで4点差を詰め、次の回で1点を取った。この勝ち方は悪くない。こういう勝ち方が、チームに落ち着きと自信を与える。

○おっせかいプレー

ただ、東洋大姫路と駒大苫小牧の試合について、細かいことを言えば、東洋大姫路に二つ、見えない敗因があったと思う。

 一つはファースト・岡の守備で、今日は自分でもびっくりするくらい身体が軽く、打球に対する反応がよかったのだろう。それがある意味では裏目に出てしまったわけだが、まず駒沢の初回の攻撃、先頭打者の三谷の打球は12塁間の平凡なゴロ。それを岡が飛び出しよく、2塁手の前に入って、軽快に捕球する。だが、ピッチャーのベースカバーが遅れ、内野安打にしてしまった。

「あれはね、ゴロの処理は2塁手に任せて、自分はベースについているべきなんだよ」。そんなことを言って見ていたのだが、同じプレーが7回裏の守備に出て、これが駒沢に勝ち越しの1点を与える結果となった。

 

この時は、駒沢は2アウトながら、ランナーを3塁に置き、打者は同じく三谷。打球は打ち損ね気味に12塁間に転がり、東洋大の投手・乾にしてみれば、「打ち取った」はずだった。ところが、やはり岡が「ダッシュよく」捕球したのだが、乾のベースカバーが遅れて内野安打にしてしまった。

 2塁手の吉川が駒沢の強打を警戒して、定位置より後方にポジションを取っていたためかもしれないが、私には1塁手・岡の「おせっかいプレー」に見えた。

 8回裏の守備でも同じようなプレーがあったが、この時は岡がランナーと駆け較べでファースト・ベースに飛びつき、辛うじてアウトにすることができた。

○水を差す三振

 もう一つは、乾の消極的な攻撃姿勢。7回表、東洋大は1アウト、ランナー12塁というチャンスを掴んだ。ここで1点取れば、同点となり、流れが東洋大に来る。

そういう重要な場面だったが、バッターの乾は、バントでランナーの塁を進めるのか、バントの構えから強振してヒットを狙うのか、判断に迷っている様子で、カウントを悪くし、結局三振に終ってしまった。

「まあ、内野ゴロでダブルプレーにならなかっただけ、まだマシかな。監督にして見れば、そう割り切るしかないだろう」。あるいは監督に迷いがあったのかもしれないが、ともあれ気合の入らない、この乾の三振が、チーム全体の押せ押せムードに水を差したことは間違いない。続く打者は内野ゴロに打ち取られ、東洋大姫路は再逆転のきっかけを掴むことができなかった。

○神がかりの大逆転に再逆転

 帝京(東東京)と智弁和歌山との試合は、すさまじい打ち合いだった。念のため、スコアをあげておく。

帝京 000 200 028 12

智弁 030 300 205 13

 帝京が4点を追う、9回の表、シングル・ヒットをつないで逆転し、最後は3ラン・ホームランで、逆に4点差とした。鋭い当たりの連続というより、運のいいヒットが続く。そこに私は、帝京のしぶとさとツキを見て、「これで勝負あったな」。

 ところが、9回裏にマウンドへ上がった勝見がストライクを取れず、ランナーを2人ためてホームランを喫し、「さあ、これで分らなくなった」。

 帝京の前田監督は、勝見から杉谷に代え、さらに岡野に代えて逃げ切りを図ったが、いずれもストライクが取れず、1アウト満塁、最後は押し出しのフォアボール。岡野の呆然とした表情が印象的だった。

 せっかくの4点差を守りきれなかった、帝京3人の投手。本人もつらいだろうが、あの場面を見ていた両親や兄弟もいたたまれなかっただろう。

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甲子園・2006年夏(7)

タイムスリップしながら

○日大山形のディフェンス勝ち

12日の土曜日は、小樽へ出たため、甲子園大会を見ることができなかった。帰りの電車でラジオを聞き、早稲田実業が大阪桐蔭を投打に圧倒していることは知っていたが、帰宅した時は112で早稲田の勝ち、勝利監督のインターヴュだった。

これだけの大差で快勝すれば、監督がはしゃぎ気味なのも無理はない。

13日と14日は、お盆の仕度と、19日の講演の資料作りのため、時々試合の経過をのぞいてみる程度だった。

ただ、13日の仙台育英(宮城)と日大山形の試合は、ほぼ全経過を見ることができたが、日大山形のレフト・庄司の守備が見事だった。2アウト満塁、仙台育英の斉藤泉の打球は、ホームラン性の大飛球。それを庄司は、背走してフェンス際まで追い、向こう向きのまま好捕、大量点を奪われるピンチを救った。

次は2アウトでランナー2塁のピンチ。この時も仙台育英の打者は斉藤で、あざやかにレフト前にヒットを放った。だが、庄司が素早くホームへ好返球して、セカンドから突入した走者をタッチアウト。こうして2度も失点を防ぎ、63で、山形が仙台に競り勝った。

○駒大苫小牧のすさまじい執念

今日は一日、野球観戦に当てるつもりだったが、第三試合まで見て、さすがに疲れ、香川西高と鹿児島工業の試合は割愛した。

第一試合は、青森山田が4回を終った時点で72と引き離していたが、その後、駒大苫小牧が凄まじい執念で追い上げ、9回ウラに逆転サヨナラ勝ちした。

青森山田の野田はきびきびした好投手だったが、如何せん投球が正直すぎた。相手打者の打ち気をかわす投球術を覚えれば、もっと伸びるだろう。

○タイムスリップしてきた桐生第一

東洋大姫路(兵庫)と桐生第一の第二試合は、投打に桐生の力負け。桐生第一は20年前の公立高校を見ている感じだった。

その頃の公立高校と言えば、バッテリーは確かに身体能力が高い。その他に23人、打撃センスのいい選手がいるのだが、残る半数は身体が華奢だったり、小柄だったり。おまけに木製バットだったから、彼等の打球が外野まで飛ぶなんてことは滅多になかった。

 今日の桐生第一はそういうチームが、タイムスリップして紛れ込んできた印象だった。打球は遅いし、飛距離は出ない。ライトの伊藤に、日大山形の庄司に劣らない、大ファインプレーが出て、満塁のピンチを救ったのだが、それ