高校野球に「病みついて」40年
〇エースの条件
まあ、安心したみたいに、選手が落ち着いている。う~ん、これがエースというものなんだな。
妻と私は期せずして同じ歎声を上げた。一昨日(3月31日)、横浜と早稲田実業の準々決勝で、外野に回っていた早実の斎藤がもう一度マウンドにもどった時のことである。
斎藤は3回までに6点も取られた。4回からマウンドを関本に譲って外野に回ったわけだが、私の見るところ、斎藤自身の責任は2点しかない。斎藤のワイルドピッチのうち、少なくとも2度はキャッチャーの捕球ミスと言うべきだろう。その他、内野手のエラーがあり、ショート後方にふらふらっと上がった打球が、風のおかげでポテン・ピットになる不運が重なり、結局6点を失うことになった。
早稲田実業にとってこの試合は、3日間連続で、実質4試合目に当る。疲れは斎藤だけでなく、他の選手にも溜まっていたのだろう。試合は一方的な展開になり始め、監督は関本をマウンドに送った。だが、関本では押せ押せムードの横浜打線を抑えることができない。5回、早実の監督は塚田に代えたが、投手も野手も浮き足立ち、打者12人で7点を取られる羽目となった。
そこで監督は6回から、再び斎藤をマウンドに送ったわけだが、野手はすっかり落着きを取り戻し、以後、波に乗る横浜打線を0点に封じ込んだ。
斎藤は29日、15回の延長戦を投げ抜き、30日は3回からリリーフして9回まで投げ、この日は先発だった。私は、早実の監督のこういう投手起用に疑問を持ち、また、多くの高校野球ファンも同様だったと思うが、「ああ、これしか策がなかったんだな」と私は納得した。せざるを得なかった。
関本や塚田は甲子園では通用しない。それもあるが、早実の野手は斎藤のピッチング・リズムで守り、いわば守り勝ってきた。初回、そのリズムを作れないうちに2点失い、以後、横浜に押し込まれる展開となってしまったが、何とか試合を立て直すには、斎藤にマウンドへ戻ってもらうしかなかったのである。
6回裏、早実は斎藤で0点に切り抜け、7回の表、3点を取って、横浜に一矢を報いた。「こういうふうに攻守の要となる。それが高校野球のエースの条件なんだな」。私は改めてそう実感した。
岐阜城北高校の尾藤、PL学園の前田。今大会の好投手に、このダイナミックなフォームの2人が挙げられることは、まず間違いない。斎藤は彼らとは対照的に、どんなピンチにも平静さを失わず、むしろ物静かな雰囲気さえ漂わせて、仲間から信頼されていた。彼も今大会屈指の好投手であることは間違いない。
彼は30日、関西高校との再試合でホームランを打った。それまでバッティングの面では特に目立つ選手ではなかったようだが、これをきっかけに何かを掴んだらしい。次も素晴らしいヒットを打ち、この日(31日)もジャストミートのヒットを2本打っている。今後対戦するテームは、この面でも彼を警戒しなければならなくなるだろう。
〇果して横浜は?
それに較べて、横浜高校が本当に強いのか、私にはまだ分からない。
勝利監督のインターヴュで渡辺監督は、――それにしても、渡辺さん、おジイサン顔になったなあ――アナウンサーから「大差にもかかわらず、最後まで厳しい表情でしたネ」と訊かれ、「(自分のほうは一日休みを取ることができたが)早稲田実業さんは引き分け再試合を含む3連戦ですからネ、そういうきつい条件の下で戦わなければならなかった相手の立場を考えますと……」という意味のことを言って、言葉を切った。「斎藤君がベストの時に対戦したかった」とも言っていた。
勝って奢らないいい言葉だ、と思うが、案外そこに不安も潜んでいたかもしれない。13安打で、13点。「試合内容には満足している」とは言っても、もし斎藤が万全ならば、どんなに上手く攻めても、せいぜい7安打4得点というところだろう。
あの岐阜城北の尾藤を相手に、果してそこまで打てるかどうか。
岐阜城北の試合は、私は31日の神港学園との戦いしか見ていないが、左腕の尾藤はヒット8本打たれ、しかし要所は三振を取ってピシャリと押さえ、神港打線を寄せつけない感じだった。あまり上背はないが、いかにも筋力が強そうで、パワーがあり、巧さも備えている。この岐阜城北といい、愛知啓成といい、今春の東海地区からはいいチームが出ているなァ……。
それに較べて、横浜の川角はいま一つ物足りない。面立ちは、西武の渡辺久信の若い時に似ているが、渡辺が持っていたような覇気が感じられない。もっと闘志を表に出してもいいのではないか。その点、PLの前田はやる気十分、自信にあふれ、見ていて小気味がいい。
〇ありがたい休み
私は最近、昼寝を取ることが多くなった。2、3年前までは、暖かい季節、午前中は庭仕事をし、シャワーを浴び、昼飯を取って一眠りしてくる。そんな程度だったのだが、今年は既に69歳となり、小樽へ出ない日は、ほとんど必ず昼寝を取るようになった。
そんなわけで、1日に3試合を見るのは、体力的にかなりきびしい。テレビ観戦しているだけで、球場まで足を運ぶわけでもないのに、我ながら情けないことだが、このごろは手抜きをしている。3月30日は、清峰高校と東海大相模の延長14回の試合で疲れ、愛知啓成とPL学園の息詰まる接戦に疲労困憊し、今治北高校と秋田商業の試合は失敬して昼寝をし、そして関西高校と早稲田実業との再試合を見た。
何もそこまで律儀につき合う必要はないのに、と思うのだが、これを病みつきというのだろう。病みつきは40年ほど前から始まり、「定年後は何をしてみたいですか」と訊かれると、「一度、甲子園の大会を第一試合から決勝戦まで、全部をネット裏で見てみたい」と本気で答えていた。「なら、それを自分たちでプレゼントします」と言ってくれる教え子もいたが、彼らは約束を忘れてしまったらしい。私自身は金を溜めるのが下手糞だったため、定年後も貧乏暇なし、週に2日小樽へ仕事に出ている。
結局あの望みは実現せずに終わりそうだな、とやや残念には思うものの、もし教え子が約束を思い出してくれたら、これまた大変だ。第一試合から欠かさずに見る、なんて無謀なことを始めたら、二日でノビてしまう。
現在のやり方で「病みついて」いるのが、一番無難らしい。
昨日(4月1日)は小樽へ出たので、清峰と日本文理高校、PL学園と秋田商業との準々決勝を見ることができなかった。昼にも人と会う約束があったので、ラジオを聞くこともできなかった。ただ、2時から始まる座談会の前、ちょっとラジオを入れたら、なんと! PL学園の前田がホームスチールをやった。見たかったなぁ。
今日(4月2日)は、大阪地方は雨で、試合は中止。残念なようだが、これで私も休息を取ることができる。久しぶりに(?!)今日は、ゆっくりと3時間以上も昼寝をした。
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